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経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

木を見て森を見ない 新・原発政策 (上)

2023-03-01 07:50:20 | エネルギー
◇ 60年を超える運転を可能に = 政府は28日の閣議で、原発の運転を60年を超えても可能にする改正法案の国会提出を決定した。現行は原子炉等規制法で「原則40年、最長60年」と決められているが、この条項を電気事業法に移管。さらに「安全審査や裁判所による停止命令で運転を停止した期間」を稼働日数から差し引く条項を加えることによって、実質的に60年以上の運転が可能になるようにする。

これに先立ち政府は2月10日の閣議で、電力の安定供給と脱炭素社会の両立を目指したGX実現に向けた重要方針を決定。そのなかで「原発を最大限活用する」と明記した。その具体的な内容は、①既存の原発について、60年を超える運転を認める。運転開始から30年経た時点から10年ごとに安全審査を行い、60年以降も運転できるようにする②次世代型の原発を、廃炉が決まった原発の敷地内で建て替えの形で建設する--というもの。これまで「原発の新増設は想定しない」と言い続けてきた方針を、完全にひっくり返す内容だった。

ウクライナ戦争によって燃料の輸入価格が高騰したことから、岸田首相は昨年「原発を最大限活用する」という方針を打ち出した。ことし1月の施政方針演説でも、そのことを強調している。これに力を得たのが、経産省の原発推進派。あれよあれよという間に、次世代型原発の推進にまで突っ走ってしまった。いかにも‟唐突”の感は否めない。

岸田首相はこの点を重視し、「まだ安全性に関する説明が不十分だ」という理由で、最終的な閣議決定を1週間延期。問題を電気事業法に移管することによって、責任を経産省に持たせることにした。次世代型原発の新設も削除したようだ。しかし野党ばかりか、与党内にもまだ批判的な空気が残っている。国民の支持も得られないかもしれない。岸田首相はこうした点を心配しているのだろう。だが、この問題の盲点はほかにもある。それは「木を見て森を見ていない」ことだ。

                    (続きは明日)

        ≪28日の日経平均 = 上げ +21.60円≫

        ≪1日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

‟太陽光”に 集中せよ (下)

2022-12-01 07:25:52 | エネルギー
◇ 原発政策は順序が逆だろう = 経済産業省は28日、原子力政策に関する新しい行動計画の原案を有識者会議に提示した。その柱は①次世代原発を、廃炉となる原発の建て替えという形で建設する②運転期間の算定については安全審査などによる停止を算入せず、事実上60年を超える運転を認める--の2点。いずれも原発政策の大転換を意味するが、経産省は年末までに最終決定する方針。ウクライナ戦争が惹き起こしたエネルギー危機に便乗して、さっさと決めてしまおうという魂胆が丸見えだ。

政府は企業と家庭に対して、きょう1日から節電に協力するよう要請した。冬の電力需給が厳しいからである。いま14基の原発が地元の同意を取り付けて再稼働できる状態だが、実際には4基しか動いていない。この14基がすべて稼働すれば、冬の電力供給に心配はなくなる。したがって政府が第1になすべきことは、この14基を稼働させることだろう。

第2になすべきことは、再生エネルギーによる発電を出来る限り増加させること。現在の計画では、発電に占める再生エネルギーの比率を30年に36-38%まで引き上げることを目標にしている。この目標をさらに引き上げる。そのためには政府が先頭に立って、発電パネルの品質向上・送配電線の整備・蓄電池の開発・揚水発電の充実などに全力を傾ける必要がある。

それでも不足する分は原発に頼る。その原発を長期的にどう発展させて行くか、その計画は第3番目の仕事だろう。それをこの際、一気に決めてしまおうとするのは暴挙であり、国民の理解を得られない。安全性の問題・放射性廃棄物の処理・対テロ防御など、最重要な問題がからまってくるのだから、十分な検討期間が必要なはずだ。それを年末までに決めてしまおうとする政府の姿勢は、全く理解に苦しむ。

        ≪30日の日経平均 = 下げ -58.85円≫

        ≪1日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

‟太陽光”に 集中せよ (上)

2022-11-30 07:47:22 | エネルギー
◇ まだ総発電量の8.3%しかない = ウクライナ戦争の影響で、原油や天然ガスの価格が高騰している。その一方で気候変動対策は待ったなし、CO₂の排出は減らさなければならない。それならば、やるべきことはただ一つ。再生可能エネルギーを急速に増やすことだ。特にエネルギーの自給率が低い日本にとっては、エネルギー安全保障の観点からも、重要かつ必然のとるべき道である。だが現実は、そうなっていない。

経済産業省が発表した21年度の電源構成によると、総発電量は1兆0327億㌔㍗時で前年度比3.2%の増加だった。このうち化石燃料による発電量が全体の72.9%を占めている。内訳は天然ガスが34.4%、石炭が31.0%、石油が7.4%。これによるCO₂の排出量は9億8000万トンで、前年比1.2%の増加。残念ながら8年ぶりに増加してしまった。

非化石燃料による発電の比率は27.1%で、前年より3.5%増加した。内訳は太陽光が8.3%、原子力が6.9%、風力が0.9%、水力が7.5%となっている。太陽光は前年比0.4%のわずかな伸び、風力は全く増加していない。エネルギー全体の自給率は13.4%、東日本大震災前2010年の20.2%に比べると、大きく落ち込んだままである。エネルギー安保は、全く心許ない。

原油や天然ガスの高騰で、再生エネルギーの価格が相対的に安くなった。それでも、なかなか伸びない。20年の統計でみても、ドイツは再生エネルギーの比率が43.6%、イギリスは43.1%、中国でさえも27.7%で、日本を上回る。この際は太陽光発電の普及に、全力を傾注したらどうか。それには送配電網の整備と蓄電池の開発が必須の条件。政府が音頭を取って、官学民の開発・普及母体を創設して欲しい。

                            (続きは明日)

        ≪29日の日経平均 = 下げ -134.99円≫

        ≪30日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

またまた100ドルへ : 原油価格 (下)

2022-10-14 07:37:26 | エネルギー
◇ 日本の補助金政策は破綻する = 原油価格が上がれば、LNG(液化天然ガス)や石炭などの価格も上昇する。エネルギーの大半を輸入に頼る日本にとっては、それだけ負担が増大するわけだ。貿易統計によると、最近の日本は鉱物性燃料の輸入に年間20兆円を支払っている。これらの価格が1割上がると、支出は約2兆円増大してしまう。日本人の購買力がそれだけ海外に流出するから、景気も足を引っ張られる。

政府はガソリンや灯油の高騰を抑えるため、石油元売り会社に補助金を支給している。ことし1月から実施しているが、年末までに補助金の総額は3兆円を超える見込み。原油価格が上昇しているから、来年も続けざるをえないだろう。さらに岸田首相は所信表明演説で「電気料金の負担増を緩和する新制度を作る」と約束した。その詳細はまだ不明だが、これも電力会社に補助金を支給する模様。その額はやはり兆円単位のものになるだろう。

冬の電力不足に対処するため、政府は企業や家庭が節電するとポイントを付与する制度を導入した。これも一種の補助金政策である。また効率の悪い旧式な火力発電所を稼働させるため、電力会社に補助金を出すことも検討中。そして小麦にも補助金。このように政府の対策は、補助金一辺倒だ。だが財源をどうするのか。何年も続けることは不可能だろう。

原油高騰の影響を少しでも軽減するには、輸入依存度を下げること。それには原発の稼働を増やし、再生可能エネルギーを拡張するしかない。しかし政府は「年末までに方針を決める」という超のんびり・ムード。とにかく遅すぎる。しかも原発については新型原子炉の開発についても議論しているというから、話はますます混乱してしまう。「岸田さんは決める能力がない」--これが支持率が低下する最大の原因である。

        ≪13日の日経平均 = 下げ -159.41円≫

        ≪14日の日経平均は? 予想 = 上げ≫  

またまた100ドルへ : 原油価格 (上)

2022-10-13 07:35:44 | エネルギー
◇ 減産の味を知った産油国連合 = 原油の国際価格が大きく上昇した。ニューヨーク商品取引所のWTI(テキサス産軽質油)先物価格は、9月下旬の1バレル=76ドル台から、今週初めには92ドル台に高騰している。さらに100ドルに迫る勢い。OPEC(石油輸出国機構)とロシアなどが組む産油国連合が5日の会合で、11月は日量200万バレル減産することで合意したためだ。この減産量は、世界の総需要量の2%に相当する。

WTI先物価格はロシアがウクライナに侵攻した直後の3月、1バレル=130ドル台にまで高騰した。しかし、その後はコロナ禍やインフレの進行で世界的に景気が低迷。需要が減退するという予想が強まって、価格は下落した。このため産油国側の収入が伸び悩んだことから、今回の大幅減産に踏み切ったもの。過去には減産に反対する国もあったが、今回はすんなりと合意したようだ。

原油価格の高騰は、先進国に多大な影響を及ぼす。特にロシアからの天然ガス供給に不安が生じているヨーロッパ諸国は、冬を迎えてエネルギーの確保をどうするか。深刻な事態に陥った。日本も事情は同じ。物価高は続くし、景気にも下降の圧力が増す。また中間選挙を間近に控え、アメリカのバイデン大統領にも大きな打撃。ガソリン価格が上がれば、支持率はさらに下がってしまう。

そのバイデン大統領は6月、わざわざサウジアラビアを訪問して、原油の増産を頼み込んだ。だが、その願いは今回の大幅減産で完全に無視された形。産油国連合は「価格を上げるためには減産に限る」という手法に、味を占めてしまったようだ。今後は産油国連合の出方ひとつで、先進国の経済がコントロールされる危険性さえ生じたと言えるかもしれない。OPECプラスによる今回の減産決定は、これまでの減産とは違う重大な意味を持っている。

                       (続きは明日)

        ≪12日の日経平均 = 下げ -4.42円≫
 
        ≪13日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

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