ふと写真を目にし、京橋の小さなギャラリーに行ったのは、
一年前に感じたモン・サン・ミシェルが、
そこにあるような気がしたから。
夜と次の日の朝方、強い風に叩かれながら、
凍るような空気と風の音に囲まれ、
満潮を待った記憶が鮮烈だった。
もう一千年以上も前、ここに立った人は、何を思ったのだろう。
今も残る テラスの石に印された職人のサインの数字
どっと観光客が押し寄せる前の修道院。
ひんやりとした空気。 きっぱりとしたたたずまい。
素朴な祈り
今わかるけれど、
まだ寒さ厳しい時期、島に泊まったことの幸運。
日中大型観光バスで訪れ、
人に埋もれながら回ったら きっといろんなことを見過ごしていただろう。
行く前は俗っぽい「観光地」かも、とたかをくくっていたし。
マイケル・ケンナは、
夜も自由に修道院を歩くことを許可されて、撮ったという。
会場に置いてあった写真集。
北海道の風景やパリの芸術橋(ポンデザール)の写真、
極限まで対象をきりつめて浮かび上がってくる、内包する「芯」のようなもの。
深い世界がそこにあった。