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アール・ヌーヴォーをたどろう 8 <とうとう 建物全体にまで及ぶ>

2020-08-07 17:30:00 | 素晴らしい世界/美術
巻頭の写真は、パリ市7区ラップ大通りの『ラビロット館』です


これまでにご紹介してきた通り
19世紀の終わりに「世紀末のあだ花」の如くに
短時間欧州の中心都市で花開いたアールヌーヴォーは
装飾美術から建築物まで
そして生活スタイルまでに及んだ社会運動的に完結します

パリで
ブリュッセルで
ロンドンで
ウイーンで
ベルリンで
そして
バルセローナで

『世紀末様式』と呼ばれたり
『カタルニア・ルネッサンス』あるいは『モデルニスモ』と呼ばれたり
単純に英語に置き換えて『ニュー・アート』と呼ばれたり


そして各都市で
時代が競う位合うように多くの才能が誕生しました

中でも
パリの『ヘクトール・ギマール』とベルギーの『ヴィクトル・オルタ』と
スペイン・カタルニアの『アントニ・ガウディ』との三人が
細部の装飾と家具調度と建築全体とを一挙にプロデュースした
アールヌーヴォーの総仕上げを成し遂げた
と言っても過言ではないでしょう


その中で
パリの地下鉄の入り口の鉄細工で有名なギマールの作品を一つご紹介して
今回のシリーズを閉じたいと思います

ギマールの鋳鉄生のメトロの入り口

パリ16区ジャン・ド・ラ・フォンテーヌ通り14番地に建つ
『カステル・ベランジェ』です


カステル・ベランジェ 全景


ブリュッセルで
ヴィクトール・オルタが建てたアール・ヌーヴォー様式の最初の建築
『タッセル邸』を見て感銘を受けたギマールが
1895年にパリに帰って建てた
彼の最初の
そしてフランスで最初の
アール・ヌーヴォー建築ということになりました

6回建て36戸の集合住宅です

この「作品」で目立つ特徴は
ベルギーのヴィクトール・オルタが唱えた「非対称」の繰り返しです

それより後のギマールの住宅は
個人の邸宅も集合住宅も「対称」にまとめられています。


名高い、通りに面した中央玄関の鋳鉄製のグリル



正面ゲートのグリル


中に入って
玄関ホールから逆にグリルを見ると
こうなります



玄関ホール


そして階段


     


   



階段部を外から見ると



  
第3回パリ万国博でエッフェル塔が建ち
エレベーターが取り付けられたことによって
19世紀末はエレベーターがブームとなっていました

   



内部の共用空間(階段ホールや廊下)などの窓には
ステンドグラスも

  





中庭には水場(共用水道)もあります





壁面や軒庇には鋳鉄の装飾が巧みに施され、写真では見難いですが「タツノオトシゴ」のモチーフが各所に見られます








この『カステル・ベランジェ』
現在も共同住宅として使われており
残念ながら住人以外は敷地内には入れません


パリ16区の南半分は
19世紀後半にパリが南西の西隣オートイユ村を吸収することにより
市の区域が広がって
小規模な建物が多かった土地の再開発がなされたことにで
アール・ヌーヴォー建築が数多く建てられました

ギマールの手になる集合住宅も5軒ほどあり
ギマール本人の邸宅と
子供夫婦のために建てた家もあります



ギマール邸『メザラ館』

『メザラ邸』はヘクトールの妻が
アトリエとして使った


『ギマール邸』

この『ギマール邸』は
ヘクトール・ギマールがアメリカの銀行家の娘で画家の
オルフェリーヌと結婚する時に
自分たちの新居として建てられた



このように
数あるアール・ヌーヴォー建築の中で

最後にギマール以外の人の作品を一つご紹介して終わりにします


ウージェーヌ・マニュエル通り2番地『レ・シャルドン館』です

設計施工は建築家シャルル・クラン
陶器の装飾は陶芸家エミール・ミュレールで
1903年に完成しました。



『レ・シャルドン館』 全景





中央玄関(上部)



窓を中心としたタイル細工










窓周りや壁面、軒庇の装飾は陶製の色タイルで造られています

この点はガウディに通ずるところがありますね。


通用門


アール・ヌーヴォー様式は
19世紀後半に欧州各国の中心都市で「同時多発」的に起こってきました

もちろん
ギマールやオルタ
マージョレルやミューシャなど
お互いに刺激しあって切磋琢磨したケースもありますが
例えば「アントニ・ガウディ」とギマールの間に情報交換があったとは
思えません


世紀末という非常にエネルギッシュで
かつ自由奔放な感覚が生まれる特殊な時代という背景がもたらした
西欧芸術の流れの中の「あだ花」だったのです。

8回にわたって続けました「アール・ヌーヴォーをたどろう」は
これで一旦終わりにします。

<アール・ヌーヴォー 終>


次回は、全く違うテーマで「素敵な世界」へご案内しようと思います。

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