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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

三輪 郁 モーツァルト連続演奏会 ~ウィーンのモーツァルト~

2006年12月21日 | pocknのコンサート感想録2006
12月21日(木)三輪 郁 モーツァルト連続演奏会 第5回<最終回>
東京文化会館小ホール

【曲目】
1.モーツァルト/ピアノと管弦楽のためのロンド ニ長調K.382
2.モーツァルト/ピアノ協奏曲第19番へ長調K.459
3.モーツァルト/ピアノ協奏曲第27番変ロ長調K.595
【アンコール】
モーツァルト/ピアノ協奏曲第26番二長調K.537「戴冠式」~第3楽章
【演 奏】
三輪 郁(Pf)と仲間たち(コンサートマスター:篠崎史紀)


ウィーン仕込みの三輪さんのピアノソロと、やはりウィーンとは切っても切り離せないマロさん率いる特設オケとのモーツァルトのピアノコンチェルト、と聞いただけでわくわくするコンサート。

三輪さんのタッチはとても柔らかくまたしなやかで、期待を持って聴き始めたが、聴き進むうちに特徴がはっきりつかめなくなってきた。オケももうひとつ調子が乗らない。三輪さんが時々指揮をするそぶりをするのだが、ちょっと中途半端な感じで、オケの方はマロさんに任せておいた方がいいのではとも思った。後半の僕がこよなく愛する27番はあまり期待できないかも、という気分になった。

モーツァルトのピアノ協奏曲第27番、この最晩年の作品は(最近の研究では実はもう少し以前の作品の可能性がでてきたらしいがそんなことは別に関係ない)、モーツァルトが、というよりも神様がモーツァルトを選んで書かせたとしか思えないような、天国的な音楽。全ての音が理想的に調和し合い、響き合い、哀しいほどの美しさを奏でる天上の音楽は、悲しいことにちょっとやそっとの演奏では心を動かされない。

その27番では三輪さんは指揮をオケに任せて始まった。最初の弦の語りかけに応える管が少々ぶっきらぼうに出たのが多少は気になったが、その後はエレガントさを取り戻し、ピアノソロを迎える。

それまでちょっと特徴がつかめなかった三輪さんのピアノが、とても優雅に控えめに、心からの愛情を込めて歌を紡ぎはじめた。そんな素敵なピアノに呼応するオーケストラは前半の多少の不調を完全に取り戻し、優雅に歌い、エレガントでつややかな音楽を奏でる。ピアノとオーケストラが一体となってまさしく哀しいほどの美しいモーツァルトを聴かせてくれた。

ところが第1楽章後半で大ハプニングが! 三輪さんが完全に真っ白になってしまったように抜け落ち、もはや修正不可能、一旦止めてやり直したほうが… と思ったほどだったが、演奏は何とか続き、いつの間にかうまく後のフレーズにつながった。こんなハプニング、三輪さんもオケもかなり動揺したと思うのだが、その後は何事もなかったかのように進み、しかもハプニング前の素敵な気分まですぐに取り戻し、2楽章、3楽章と進んで幸せな時間を届けてくれた。こういう修正能力はやはりさすがプロだと感じた。

「モーツァルトには魔物が宿っている」とよく言われるが、今夜の出来事もその魔物の仕業だったのだろうか。これほどの神がかり的な音楽をやる演奏家はやはり強靭な心臓の持ち主なのかも知れない。こんなハプニングがあったにもかかわらず、爽やかな気分で「いい演奏だった」と思えるコンサートだったのは、三輪さんとマロさん始めとするオケの底力なのかも知れない。

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