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モルゴーア・クァルテット演奏活動30周年Vol.1

2023年01月27日 | pocknのコンサート感想録2023
1月23日(月)モルゴーア・クァルテット/野田清隆(Pf)
Vn:荒井英治、戸澤哲夫/Vla:小野富士/Vc:藤森亮一
~モルゴーアの証言~
東京文化会館小ホール

【曲目】
《オール・ショスタコーヴィチ・プログラム》
1.交響曲第9番変ホ長調 Op.70~第1楽章(荒井英治編曲)
2.ピアノ五重奏曲ト短調 Op.57
3.弦楽四重奏曲第5番変ロ長調 Op.921
【アンコール】
♪ ピアノ協奏曲第2番ヘ長調 Op.102~第2、3楽章(荒井英治編曲)

オールショスタコというプログラムに惹かれ、今年演奏活動30周年を迎えるモルゴーア・クァルテットを2年ぶりに聴いた。会場は超満員。

最初は、ショスタコのシンフォニーのなかでも異色の光を放つ第9番を荒井さんの編曲による弦楽四重奏で聴くというレアな体験。これが面白かった。弱音器を付けたような妖しい響きで始まり、なんだかへっぽこ楽団が悪戦苦闘しつつも「うまくできちゃった」みたいなスリルと遊び心に溢れた奇想天外さ。山あり谷ありの悪路を果敢に進んでいるようで、メンバーの楽しそうな表情もいい。これは是非全曲版も聴いてみたい。

次は野田清隆氏を迎えてのピアノ五重奏曲。聴いているうちに気持ちよくなってしまい、不覚にも気付くと瞼が閉じていることが度々で、音は聴こえど頭がちゃんと働いていたとは云えず、感想を書けるレベルではない。そんな状態ではあったが、芯が太い野田さんのピアノの存在感と、これと対峙するモルゴーアとのバトルの熱気は終始伝わって来た。

後半の弦楽四重奏曲第5番は、ショスタコーヴィチの作品発表に尽力したベートーヴェン四重奏団の結成30周年を記念して、作曲者から献呈された作品とのこと。これをモルゴーアの30周年に因んで選曲したそうで、モルゴーアも特別な思いがあったはず。

変化に富んだこの作品から一貫して伝わってきたのは、何か特別なパフォーマンスで聴き手の気持ちを引くのではなく、作品の奥底まで見つめて、迷うことなくひたむきなメッセージをピュアに表現しようとする姿勢。第1楽章は、熱くアグレッシブで、焦げ臭ささえ漂ってきそうな緊迫と、その合間に垣間見える夢見心地の美しいフレーズやハーモニーの妙、第2楽章は抒情の海に浸り切ってしまうことなく、常に冷静に真実を見つめる目、第3楽章は熱いバトルのなかでもピュアな焦点は外すことなく、やがて静寂へと向かう浄化された精神性など、場面ごとのイメージを鋭く捉えた演奏が繰り広げられた。

アンコールでは野田さんが再び加わり、アレンジによるコンチェルトを聴けたのも収穫。これもモルゴーアの演奏会で全曲聴いてみたい。荒井さんの朴訥とした楽しいトークで「30年も続いてしまった・・・」言っていたが、明確なコンセプトを持ち続け、切磋琢磨しながら50回を超える定期演奏会を続け、モルゴーアならではの音を作り上げて来たことを証明する演奏会だった。

モルゴーア・クァルテット 第50回定期演奏会 2021.1.25 東京文化会館(小)

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