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N響 2019年11月C定期(ブロムシュテット 指揮)

2019年11月26日 | pocknのコンサート感想録2019
11月22日(金)ヘルベルト・ブロムシュテット 指揮 NHK交響楽団
S1:クリスティーナ・ランツハマー/S2:アンナ・ルチア・リヒター/T:ティルマン・リヒディ/
Bar:甲斐栄次郎/合唱:新国立劇場合唱団

《2019年11月Cプロ》 NHKホール

【曲目】
1.モーツァルト/交響曲第36番ハ長調 K.425
2.モーツァルト/ミサ曲ハ短調 K.427

B定期では聴けない大規模な合唱を伴う曲、それもモーツァルトのハ短調ミサ、しかも指揮がマエストロ、ブロムシュテットとなれば、これは聴きのがせない!とNHKホールへ。

前半は大好きな「リンツ」。ブロムシュテットならではのキリッとして明快な演奏。B定期で聴いたエロイカと同様、オーバーアクションを抑えた中で音たちが歌い、躍り、戯れる。第2楽章は細部の装飾の美しさと全体にみなぎる力強さを兼ね備え、美しい金属工芸作品を見るよう。終楽章では8分休符+8分音符3つの単純なモチーフが折り重なっていく場面が、オペラ「魔笛」の喜び溢れる輝かしい大団円が近づくときと同じワクワク感で迫ってきた。「幸せの楽園はすぐそこに」という期待がどんどんと高まり、幸福で輝かしいフィナーレとなった。トリハダが立った。植松さんのティンパニがいい!

後半はハ短調ミサ。「モーツァルト命」を自任する僕だが、演奏される機会が少ないこの曲をちゃんと聴いたことは数えるほど。未完ではあるが「大ミサ」と呼ばれ、1時間近くかかる大曲なので、「キリエ」から「アニュス・デイ」までの一連の楽曲は全部あると思っていたら、「クレド」の後半部分がまるまる抜け、「アニュス・デイ」もないことを演奏を聴いて知った。長大な「グロリア」のあと、「クレド」が[人となりたまえり]で終わってしまったのはアンバランスに感じたし、”dona nobis pacem”で幸せ気分に浸る気でいた「アニュス・デイ」もなかったのはやはり物足りなかった。

それでもこの作品は厳しさと安らぎ、神聖さと官能性といった双方の要素を具え、モーツァルトの光と影の両方の魅力に溢れた音楽であることを今夜の演奏は伝えてくれた。モーツァルトにとって憎きザルツブルクの大司教コロレドに、自分はどんな書法でも最高の音楽が書けることを見せつけようとした気概も伝わってくる。対位法を駆使した厳格な書法の神髄を引き出すのに、ブロムシュテットは緻密で有機的に音楽を組み立てて行き、N響と新国立劇場合唱団はアクティブかつ精度の高い演奏でそれを音で実現した。オケも合唱も芯のあるしなやかな音で、終始生き生きとした能動的な演奏。弦の輝き、合唱の濃密で磨かれた響きは、生命力に溢れて格調高く、大聖堂の天井から音が降り注いでくるよう。

一方でソロの、とりわけソプラノによる楽曲は、戯れや憧れ、色香にあふれ、ミサというより夢と憧れと切なさを歌う演奏会用アリアのよう。第1ソプラノにはカデンツァ風のフレーズまで与えられて歌手の力量が問われるが、ランツハマーの歌は瑞々しい美声を駆使して艶やかで滑らかに聴衆を魅了した。モーツァルトがコンスタンツェのために書き、コンスタンツェが初演で歌ったとも、彼女の手には余ったとも云われているが、この美しい曲はモーツァルトが夢中だった妻の姉、アロイジアへの思いが込められていたのかも…

最後はここだけ出番の甲斐さんのバリトンが加わっての充実した四重唱を、短いけれど華々しい合唱が引き継ぎ、高らかに「ホザンナ」と唱和して全曲を閉じたときは、「アニュス・デイ」を欠いていても心は満たされた。余韻が消えても続いた会場の沈黙と、それに続く大喝采がこの素敵な演奏に花を添えた。

ブロムシュテット指揮N響:2019年11月B定期(2019.11.7 サントリーホール)
♪ブログ管理人の作曲♪
金子みすゞ作詞「積もった雪」
MS:小泉詠子/Pf:田中梢
金子みすゞ作詞「私と小鳥と鈴と」
S:薗田真木子/Pf:梅田朋子
「子守歌」~チェロとピアノのための~
Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
合唱曲「野ばら」
中村雅夫指揮 ベーレンコール
金子みすゞ作詞「さびしいとき」
金子みすゞ作詞「鯨法会」
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美

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