facciamo la musica! & Studium in Deutschland

足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

スウェーデン放送合唱団

2019年11月29日 | pocknのコンサート感想録2019
11月26日(火)ペーター・ダイクストラ指揮 スウェーデン放送合唱団
東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル


【曲目】
1.ペルト/それは…の息子であった
2.シュニトケ/3つの聖歌
3.ストラヴィンスキー/詩篇交響曲[ショスタコーヴィチによる4手ピアノ版]
 Pf:ヨハン・ウッレン、マグヌス・ショルド
♪ ♪ ♪
4.サンドストレム/モテット「歌え、主に向かい新しい歌を」
5.バッハ/モテット「来たれ、イエスよ、来たれ」BWV229
6.サンドストレム/アニュス・デイ
7.バッハ/モテット「歌え、主に向かい新しい歌を」BWV225

【アンコール】
1.スウェーデン民謡/アルヴェーン編/そして乙女は輪になって踊る
2. 日本古謡/武満徹/さくらさくら
3.スウェーデン民謡/ヴィカンデル編/すべての山と谷をめぐり

定期的に来日しているスウェーデン放送合唱団のオペラシティでの演奏会はほぼ毎回聴いている。今回は大曲の詩篇交響曲を前半に据え、あとはバッハと現代の宗教作品で構成された。

ペルトの曲は静かな祈りと淡々とした名前の連呼で綴られるイントロ的小品。これでこの合唱団がただ者ではないと感じさせておき、次のシュニトケでその驚異的な力量を全開。耳元でバリバリと倍音が聴こえる完璧なハーモニーで魅了した。詩篇交響曲はピアノ連弾の前衛的で鋭角的な音像と、ステンドグラスを散りばめたような敬虔で荘重な合唱がえも言われぬ世界を作り上げた。

ただここまではこれまでの経験上で想定内。前回の演奏会で「スゴイことに違いないが、この手の凄さにだんだん慣れてきた気が…」と書いた時と似た感覚止まり。サウンドやテクニックの素晴らしさが、「これだ!」と云える感動にまでは至らない。

しかし後半ではその凄さにハートが乗っかり、聴き手の耳と心に訴え、揺さぶってきた。サンドストレムのモテットは、この合唱団で何度も聴いているバッハの同名のモテットと同じテキストを用い、斬新なテイストで仕上げられている。冒頭の「歌え singet」が、バッハのような確固とした呼びかけではなく、気まぐれとも云えるリラックスモードに染まるなど様々なアイディアで挑んでくるなか、伝統的な和声によるコラールが、神を前にした人の儚さや神様への敬愛をデリケートに歌い、これが癒し効果となって前衛的な響きの中から浮かび上がった。

もう1曲のサンドストレム作品「アニュス・デイ」も印象深かった。16声部にも重なって生み出される不思議な響きは、早朝、山の懐に佇む池の面を霞が覆い、それが静かに差し込む朝の光を受けて柔らかな色彩を呈するよう。霞は少しずつ漂い、色彩を徐々に変化させ、最後にへ長調(?)の主和音に落ち着く場面の静謐な神々しさは言葉にできないほど美しかった。

「アニュス・デイ」の前後にバッハの2つのモテットが演奏された。以前の来日公演でバッハのモテットを聴いたときは、妙にピリオドを意識したような尖った演奏でせわしなく一気に駆け抜けてしまう印象だったが、今夜はどちらのモテットでも一つ一つの言葉が吟味され、感情を伴ってその意味が丁寧に伝えられた。それが表現に奥深さを生み、温もりを与え、人間の様々な感情を呼び起こし、柔軟に変化するディナミークやアゴーギクでピリオドともオーソドックスとも異なる、ダイクストラ/スウェーデン放送合唱団にしかできない演奏を実現した。最後の「アレルヤ」のフーガが生き生きと輝かしく歌われてすっかり心酔!

定番のアンコール2曲と、温かく包み込むスウェーデン民謡と進むと会場は更なる熱気に包まれ、ステージと客席に一体感が生まれた。「これだ!」と思える演奏会だった。

スウェーデン放送合唱団演奏会(2017.9.14 東京オペラシティタケミツメモリアル)
♪ブログ管理人の作曲♪
金子みすゞ作詞「積もった雪」
MS:小泉詠子/Pf:田中梢
金子みすゞ作詞「私と小鳥と鈴と」
S:薗田真木子/Pf:梅田朋子
「子守歌」~チェロとピアノのための~
Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
合唱曲「野ばら」
中村雅夫指揮 ベーレンコール
金子みすゞ作詞「さびしいとき」
金子みすゞ作詞「鯨法会」
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美

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