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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

デュオ・リクレアツィオン・ダルカディア ~目白バ・ロック音楽祭2008~

2008年06月12日 | pocknのコンサート感想録2008
6月12日(木)目白バ・ロック音楽祭2008
~人生の喜びを知るヘンデルのヴァイオリン・ソナタ~
自由学園明日館・講堂

【曲目】
1. ヘンデル/ヴァイオリン・ソナタ ニ長調op.1-13 HWV 371
2.ヘンデル/フーガ 変ロ長調HWV 607 (cembalo solo)
3.ヘンデル/アレグロ ト長調HWV 407 (for solo violin)
4.ヘンデル/ヴァイオリン・ソナタ ト短調op.1-6 HWV 364a
5.マンチーニ/ヴァイオリン・ソナタ イ短調
6.ポルポラ/ヴァイオリン・ソナタ第11番ニ長調
7.ヘンデル/ヴァイオリン・ソナタ イ長調op.1- 3 HWV 361
8.A. スカルラッティ/チェンバロ、もしくはオルガンのためのトッカータ
9.ヘンデル?/ヴァイオリン・ソナタ イ長調op.1-14 HWV 372
【アンコール】
マンチーニ/ヴァイオリン・ソナタ~アレグロ

【演奏】
デュオ・リクレアツィオン・ダルカディア(Vn:松永綾子/Cem:渡邊 孝)

3年前からこの時期、目白でやっている「目白バ・ロック音楽祭」(目白という「場」にロック(挑戦的)な「人」が集まる音楽祭という意味とのこと)は、目白とその周辺の教会や歴史建造物などを会場に半月以上に渡って行なわれている。地元ということもありずっと気になっていたが、今回初めてその演奏会の1つを訪ねた。

自由学園の明日館という雰囲気のある会場で、普段あまり聴く機会のない、でもとても興味のあるヘンデルのヴァイオリンソナタを聴けるということでこのコンサートを選んだ。「デュオ・リクレアツィオン・ダルカディア」なんてイタリアっぽい名前だったので、イタリアのデュオかと思っていた… という程度の全くの予備知識なし状態で出かけたが、とても楽しめるコンサートだった。

最初に演奏したヘンデルのソナタは僕が以前、ヴァイオリンを習っている同僚のワダさんのお供で伴奏を弾いたことがある曲なのでよく知っているはず。けれど随分違って聞こえる。チェンバロの豊かで自由なアルペッジョに乗ってヴァイオリンがゆるやかな歌を奏でる第1楽章。なんとも優美。

このソナタ、プログラムを見ると「ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ」となっている。つまり、通奏低音ということは、チェンバロ用の譜面には本来は数字付きのバスの声部しか書かれていないのだろうか。チェンバロの渡邊孝さんはそんな譜面から本当に豊かな響きとニュアンスを引き出している。

松永綾子さんが弾くのはバロックヴァイオリン。随所に細かいヴィヴラートをかけているがバロック風のボーイングを基調にとても滑らかな演奏をする。ゆったりした楽章は花咲く庭園をぶらりと逍遥するがごとく、速い楽章では明るい木漏れ日の森を駆け抜けるような情景が浮かぶ。こんな風に自然の情景に溶け込むように聴こえるのはピリオド楽器や奏法の特長かも知れないが、自然で淀みないボーイングと清々しい表情づけをする松永さんの感性と腕前でその特長が一層引き出されているように感じた。

ヘンデルとイタリアの作曲家の曲をこうして同時に聞くと、マンチーニやポルポラの明るい曲もいいが、ヘンデルの曲がいかに豊かなファンタジーを呼び覚ませてくれるかということを認識させられる。

木の梁を組み、大谷石と漆喰を使った壁の歴史を感じる明日館の講堂は、ヨーロッパの城砦の「騎士の間」のような雰囲気がある。講堂内は窓が大きく取られている。開演時には夕暮れ時の外の明かりが講堂にも入っていたのが、徐々に真っ暗になって行く時間の流れに身を委ねて聴くのにぴったりの演奏会だった。

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