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インキネン指揮 日本フィルのシベリウス・チクルスⅡ

2013年04月19日 | pocknのコンサート感想録2013
4月19日(金)ピエタリ・インキネン指揮 日本フィルハーモニー交響楽団
第355回 名曲コンサート
サントリーホール

【曲目】
1. シベリウス/交響曲第4番イ短調 Op.63
2. シベリウス/交響曲第2番ニ長調 Op.43
【アンコール】
シベリウス/悲しいワルツ

インキネン指揮日フィルによるシベリウスチクルスの2回目で演奏されるのは2番と4番。2番はシベリウスのシンフォニーの人気ナンバーワンだが、シベリウスの真価が表れる前の作品とよく言われる。だけどやっぱり僕は2番が一番好きだし、3回シリーズで一番楽しみな回だ。前回の演奏会がとても良かっただけに、期待を益々膨らませて出掛けた。客の入りはしかし人気の曲をやるにしては空席が目立った。どうして?

まずは4番。この曲はシベリウスが逆境に苦しんでいたどん底のなかから生まれたということで、およそクライマックス的な華やかさや、大きな盛り上がりは見当たらない。聴き手としては、この重苦しさを受け止め、深い精神性を感じ取ることで、この音楽の価値を見出だすことができるのだろう。と言っても、馴染みの薄い曲だし、自分がこの曲をどの程度「ちゃんと」聴けたかはちょっと怪しい。

その上での感想だが、インキネン/日フィルは、高いテンションを維持し、とても緻密な演奏をしたと感じた。しなやかな弦はとても雄弁で、心に熱く迫ってくるものがあったし、木管はソフトでハーモニーも美しい。金管が活躍する場面は少なかったが、ここぞという出番では安定した演奏で存在感を聴かせた。前回の演奏会同様、インキネンは音楽を大きな流れで捉え、日フィルはその流れのなかで大きく呼吸していた。その一方で、劇的なクライマックスを備えていないこの曲から、それに代わるような深い精神性や、重苦しい気分は伝わってこなかった。これは、曲自体がそういうものだからなのか、演奏のせいか、よく判断がつかなかったが、後半の第2シンフォニーを聴いて、4番から「精神性」や「心の痛み」が感じられなかったのは、演奏のせいでもあるかも、という思いが強まった。

波打つ弦で始まる第2シンフォニーだが、この冒頭部分が、テヌートで音がみんな押さえつけられている。この重心の低さは曲全体で基調をなし、演奏に安定感を与える反面、この音楽に欠かせない、浮き立つ気分が押さえられてしまっているようにも感じた。大きな流れや強い持続力、自然で深い呼吸では耳を引くが、衝動的なものや、ほとばしる気分、香りたつものがない。事前によく整備された道を、予定通りに順調に進んでいる感じで、どうも面白みに欠ける。

第2楽章はオーボエの歌のあたりは叙情的でとてもよかったが、プログラムノートに書いてあるような「内側に秘めた激しいパトス」は伝わらなかったし、第3楽章のスケルツォもスリリングさがない。フィナーレも順風満帆の進行で、それは悪くないのだが、みんな計画通りに進んでいる観が、ライブの醍醐味を感じさせない。堂々とした進行で最後のクライマックスを築いたところはさすがに胸に迫ってきたが、多感で傷つきやすいナイーブな一面が感じらてこそ、クライマックスの意味が明確になるのではないだろうか。

1回目の演奏会ではインキネンの実力に頼もしさを感じたが、2度目の演奏会では冒険や遊びがほしいと感じた。3度目はどうかな…?

インキネン指揮 日本フィルのシベリウス・チクルスⅠ~2013.3.16 サントリーホール~
インキネン指揮 日本フィルのシベリウス・チクルスⅢ~2013.4.26 サントリーホール~

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