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獨協大学混声合唱団 第34回定期演奏会

2017年12月12日 | pocknのコンサート感想録2017
12月10日(日)獨協大学混声合唱団 第34回定期演奏会
三郷市文化会館小ホール


※獨協大学混声合唱団の定期演奏会は、1998年に第33回が行われていたことが判明したため、当ブログではそれに合わせて表記を訂正しました。(2018.11.5)



【曲目】
~第1ステージ『ア・カペラ ア・ラ・カルト』~
♪ 木下牧子/混声合唱曲集「光と風をつれて」~「いっしょに」
♪ 黒人霊歌/Moses Hogan編/Oh Mary, Dont't You Weep, Don't You Mourn
♪ 田中達也/無伴奏混声合唱曲集「レモンイエローの夏」~「レモンイエローの夏」

~第2ステージ『OBOG合同ステージ』~
♪ 原田史郎/新しき友
♪ 高田三郎/混声合唱組曲「水のいのち」~「雨」
♪ 野田隆造/高島豊編/「覇者」(獨協大学応援歌)
♪ 佐藤眞/混声合唱のための組曲「旅」~「行こうふたたび」
♪ 佐々木伸尚/夜のうた

~第3ステージ『ある真夜中に』~
♪ 千原英喜/混声合唱とピアノのための組曲「ある真夜中に」

~アンコール~
♪ 北川昇/ここから始まる

【演奏】
指揮:岡部武彦、小原怜、佐野幸雄/Pf:澤谷香奈/合唱:獨協大学混声合唱団、OBOG有志


1964年に結成された獨協大学混声合唱団(獨混)には学生時代の4年間在籍し、多くの貴重な音楽体験と大切な仲間を得た。その後、時代の流れのなか、タイトで厳しい活動を嫌い、もっと気楽に楽しみたいという考えが多数派を占めるようになって活動が緩くなると、長く合唱団の指揮を務めていた指導者が去り、団は衰退の一途を辿り、毎年行われていた定期演奏会も1998年を最後に途絶えしまった。それでも少数の熱心な学生が合唱団の灯火を消すことなく活動を続け、近年は獨混を盛り返したいという熱心なOBOGの後押しもあり、新たな指導者を迎え、少しずつ活動が盛んになってきた。そして、今年は団員数が16名にまで回復し、19年振りに定期演奏会が復活した。

開演時刻となり、16名の団員がすっきりしたコスチューム姿でステージに整列し、ライトを浴びる姿を見たときは、「どっこん」が復活したという感慨がこみ上げた。その感慨は、実際に彼らの演奏を聴き進むに連れて、感銘・感動へと膨らんで行った。
第1ステージでは、今の獨混がよく歌っているアカペラ作品が3つ。美しいハーモニーと生き生きとした表情で、言葉も聞き取りやすく、自然に聴き手の心に届いた。黒人霊歌では女声陣が順番にソロを担当する積極的な姿勢にも好感が持てた。

第2ステージはOGOGが加わっての合同ステージ。今回の定演復活には、獨混の活動が盛んだった頃の卒業生の熱い思いが後押しした背景もあり、その頃の世代を中心に12名が集まった。披露されたのはOB世代の愛唱歌たち。新歓や合宿、各種コンパなどで折に触れて歌ってきた曲だ。そんな特別な思いが込もった曲を現役と歌うのは、20年の時を越えて一緒になれるという期待の一方で、両者の温度差をどう埋められるかが正直心配だったが、それは杞憂に過ぎなかった。OB側は、個人的な思い入れは脇に置いて、現役と最初から音楽作りを始める姿勢が窺えた。テンポがもたれることも、センチメンタルに傾くこともなく、すっきりとしたフォルムを主体にメリハリのある表情で、それぞれの曲のメッセージを明確に伝えた。声量だけでなく、アンサンブルの支えがより強くしゃんとして、OBが現役を見守りつつアンサンブルを作る様子が窺えた。参加したOBOGは、今もそれぞれ合唱を続けている面々が中心で、音楽に真剣に向き合っていることを考えれば、余計な心配だったようだ。

第2ステージでは、OB達の愛唱歌の他に、獨協大学の応援歌「覇者」が披露された。OBにとっても現役にとっても馴染みがあるという共通項の下、この演奏会のために混声合唱用に編曲された新しい譜面を手に、両者が同じスタートラインで取り組める曲を、合同ステージのプログラムとして選んだ意義は大きい。僕が編曲の機会を頂いて今日が初披露となった演奏は、学生指揮者の小原さんの下、各パートのバランスや受け渡しにも配慮が行き届き、伸び伸びとしなやかに、清々しいハーモニーを聴かせてくれた。記念すべき定期演奏会で現役とOBを結ぶ曲を編曲する機会を頂けたことに感謝!

休憩を挟んだ第3ステージは、瀬戸内寂聴の詩に千原英喜が作曲した大規模な愛の歌。これは、現役メンバーがこの演奏会へ注いだ思いと努力が結実した完成度の高い演奏となった。複雑なハーモニーでも美しい響きを作り、澤谷先生の清新でドラマチックなピアノと共に、ギュッと中味の詰まった濃い歌で、寂聴さんの真摯である一方、色気もあるメッセージを熱く伝えてきた。2013年から獨混を指導している岡部先生が、今の獨混がなし得る最高のものを引き出した見事なステージだった。

最近の「どっこん」の演奏は、学内のイベントで何度も聴いていて、しっかりした発声でキチンとしたアンサンブルを作ることは承知していたが、教室や、音楽の演奏には全く向かない響かないホールでのコンサートでは(響きの良い大講堂は学生には使わせてもらえないらしい)、日常の活動の延長という感じでテンションも上がりにくい。それと比べ、20年振りにキチンとした定期演奏会を設定し、それに向かって日々練習を積み重ねた末に迎えた今日の本番は、団員達にとってこれまでの演奏会とは色々な意味で大きく違ったはずだ。その違いをしっかりと認識して努力を重ねて来たからこそ、今日の成功があった。

最後の団長と実行委員長による挨拶では、一時は団員が2名にまで減ってしまったところから、ここまで団員を増やし、定期演奏会を実現できた感慨に溢れていた。そこには、目標に向かい、苦しみながらも努力し続けたからこそ成し遂げられた感動があり、大きな成長がある。挨拶での「この定演がゴールではなく、私たちにとってこれからが始まり」という言葉通り、この定演を機に大きくステップアップした「どっこん」のこれからの更なる成長を楽しみに見守って行きたい。

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