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東京音楽大学大学院 伴奏科1年生によるアンサンブルコンサート

2016年12月11日 | pocknのコンサート感想録2016
12月7日(水)伴奏科1年生によるアンサンブルコンサート
第6回♪大学院コンサートシリーズ♪
東京音楽大学J館スタジオ

1. 虫明知彦
♪ドビュッシー/ビリティスの3つの歌 L.90
♪ラヴェル/シェヘラザード Op.41
♪ラカジェ/アマポーラ
 S:藤井玲南

2.藤島さつき
♪ドビュッシー/ヴァイオリンとピアノのためのソナタ ト短調
 Vn:佐藤さやか
♪デュパルク/ため息、悲しき歌、恍惚、フィデレ
 S:北村さおり

3. 吉岡佑弥
♪リスト/ペトラルカのソネット S270/R578
♪R.シュトラウス/子守歌
 S:鳥海仁子

4. 宮阪優奈
♪ブラームス/チェロ・ソナタ第1番ホ短調 Op.38
 Vc:門脇大樹

5. 冨田実加
♪R.シュトラウス/「乙女の花」Op.22
 S:小谷美佳
♪ベートーヴェン/ヴァイオリンソナタ第7番ハ短調 Op.30-2~第1、4楽章
 Vn:門倉茜

6. 森 光平
♪カプースチン/ヴァイオリンソナタ Op.70
 Vn:竹中勇人

伴奏科の院生によるコンサートということで、今日の主役は伴奏者。だからと言って普段よりも伴奏者が目立つ演奏をやるわけではなく、当然そこでは共演者との音楽的な方向性やバランスなど、コミュニケーションに配慮しつつ、伴奏者としていかに的確な演奏を行い、アンサンブルとしていかに魅力ある演奏にするかを、伴奏者のイニシアチブを主体に作り上げることになるだろう。伴奏者にとっては、共演者がどんな演奏をするかによって、出来不出来の印象も含めて演奏全体の印象が違ってくるという難しさも抱えている。

既に学部時代からピアノ伴奏の研鑽を積んできた学生達が作り上げるアンサンブルは、共演者にも恵まれてハイレベルの演奏が並び、初めて聴く曲も多かったがそのどれもが名曲で、3時間のコンサートはとても充実していて楽しかった。 そして一口にピアノ伴奏と言っても、曲や編成によって異なるアプローチや役割分担が必要で、伴奏の世界の奥深さを改めて感じることにもなった。

ブラームスやベートーヴェンのソナタでは、両者に対等な役割が与えられているが、今日の演奏会で多く取り上げられた歌曲では、主役は直接言葉を担い、ほぼメロディーを独占する歌い手になるだろう。そこでは歌手にとっていかに歌い易い伴奏を行うかを心がけたうえで、伴奏者のイメージをいかに聴かせるかも大切になる。伴奏を担った今日の「主役」達は、共演者の役割の違いも的確に捉え、共演者の個性にも配慮しつつ音楽に向き合い、魅力たっぷりの共演を聴かせてくれた。

虫明知彦さんは、藤井さんの清澄な歌に合った明晰で軽やかなタッチのピアノで、ドビュッシーとラヴェルを淡い色調でファンタジックに表現した。次は藤島さつきさん。ドビュッシーのソナタでは、くっきりとしたコントラストを効かせる佐藤さんのヴァイオリンを、溢れると光彩で柔らかく包み、また鋭い切り込みには敏捷に反応し、ムーブマンに富んだ立体的で生き生きとしたデュオを聴かせた。デュパルクの歌曲では、北村さんの表情豊かで濃い歌に、色彩を感じる陰影をつけ、端正かつ冷静に歌を引き立て、詩のイメージを膨らませた。「ため息」を聴いたときは、題名を見る前から自然なため息がピアノから漏れてくるのが感じられた。

吉岡佑弥さんは、大胆でダイナミックなタッチと表現で、鳥海さんのスケールの大きな歌と対峙。弱音でも長くて深い呼吸で音楽を萎ませることなく、透明で深い世界を描いた。ブラームスのチェロ・ソナタを演奏した宮阪優奈さんのピアノは、ブラームスに相応しい落ち着きと粘りがあり、動きと陰影にも富んでいた。門脇さんのチェロは豊かな音量を湛えて朗々とダイナミックに歌ったが、ピアノとの音量的なバランスがうまく取れていなかったように感じた。

5番手は冨田美加さん。シュトラウスの歌曲では、明るく艶やかな小谷さんの歌を、品の良い濃淡の変化と温かな響きで支え、ベートーヴェンのソナタでは、少々控え目ながら門倉さんの芯のあるしなやかなヴァイオリンと向き合い、節度とバランス感覚に優れた演奏を聴かせた。最後に演奏した森光平さんは、パフォーマンスでも見事な「取り」を演じた。英語で前口上を行い、胸に大きな花をつけて登場。それに、ヴァイオリンの竹中さんだけでなく、譜めくりさんまで胸に花をつけて順番に登場し、会場を盛り立てた。2人の演奏もアクティブで冴えがあり、ジャジーなノリで聴き手を楽しませた。演奏そのものだけでなく、パフォーマンスも聴き手の気分にプラスに働いたのではないだろうか。伴奏者もこういう目立ち方をしてもいいんだ、という主張が感じられた。

こんなに楽しくて充実したコンサートだったのだが、聴衆が少なくて残念。もっと宣伝してお客を集め、聴衆と共に演奏会を盛り上げることにも力を注いだ方が良い。それは演奏者の成長にとっても必ずプラスになる。また、他の学生は人の演奏を積極的に聴いた方が良い。
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