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別府アルゲリッチ音楽祭2022 アルゲリッチ&マイスキー

2022年05月19日 | pocknのコンサート感想録2022
5月16日(水)マルタ・アルゲリッチ(Pf)&ミッシャ・マイスキー(Vc)/チョン・ミン指揮 東京音楽大学オーケストラ・アカデミー
~第22回記念 別府アルゲリッチ音楽祭参加公演~
東京オペラシティコンサートホール・タケミツメモリアル


【曲目】
♪ ベルリオーズ 序曲《ローマの謝肉祭》
♪ シューマン ピアノ協奏曲イ短調 作品54 
Pf:マルタ・アルゲリッチ

(アルゲリッチ&マイスキーのデュオ)
♪ シューマン《幻想小曲集》作品73 
【アンコール】
 ♪ ショパン/序奏と華麗なポロネーズ Op.3 
 ♪ ショパン/チェロ・ソナタ ト短調 Op.65~第3楽章 
Pf:マルタ・アルゲリッチ/Vc:ミッシャ・マイスキー

♪ ブラームス/交響曲第1番ハ短調Op.68
【アンコール】
♪ 同曲~フィナーレのコーダ

別府アルゲリッチ音楽祭の一環によるアルゲリッチの東京公演は、一昨年も去年もチケットを取っていたが感染症のために中止となり、3度目の正直でようやく実現した。4年前の演奏会でのあの稀有の体験を胸に、タケミツメモリアルへ出かけた。

極めつけはマイスキーとのデュオ。シューマンでも、アンコールの2曲のショパンでも、これ以上考えらない至福の時を堪能した。どのフレーズでも全てが、音楽が正に今この瞬間生まれたように息づき、羽ばたき、自由に対話して歌を奏で合う。アルゲリッチとマイスキーは、お互いの演奏を耳に伝わる前に既に感知し合い、魂の交感を繰り広げているよう。2人の間には、合わせでも言葉は要らないのではないだろうか。

2人とも無限の伸び代を惜しげなく使い、縦横無尽に自由自在に音楽を奏で、至るところにハッとする煌めきが散りばめられている。2人の間には、何の壁もなくルールもない。それでいて2人の音楽は親密で調和を極め、音楽ってこんなに楽しいんだと伝えてくれる。

これ以上言葉を連ねてもあまり意味はないし、言葉を重ねると反って安っぽくなってしまうのでもうやめておこう。いつまでもこの幸せな時間が続いて欲しかった。まだ演奏会はメインプログラムを残していたが、満席のホールの大喝采の中、多くの聴衆がスタンディングオベーションで2人を讃え、僕も加わった。

このデュオの前に、アルゲリッチのソロによるシューマンのコンチェルトでは、アルゲリッチのピアノが期待を満たすまでには至らなかった。思いっきり粋で切れ味のいい冒頭でいきなり魅了されたが、聴き進んで行っても冒頭の感動が膨らんでこない。コンチェルトを聴き終わって、アルゲリッチも高齢のため4年前のようには行かないのだろうか、とも思った。けれどその後のデュオで、そんな思いは完全に吹っ飛び、コンチェルトで満たされなかった訳がわかった気がした。

東京音大の学生オケは上手いし、しっかり合わせていたけれど、アルゲリッチのピアノとどう対峙し、アルゲリッチに何を語りかけ、どう渡り合うかという意思が伝わってこない。アルゲリッチへの期待が満たされなかったのはこのせいだと思った。プロを目指して研鑽を積んでいる優秀な学生で編成されたこのオケなら実力は申し分ないはず。アンサンブルが乱れたって、もう少し前のめりにソリストとガチでやり合ってほしかった。そんな気概を示せば、アルゲリッチはそれを敏感にキャッチして、もう一次元上の世界を見せてくれたのではないだろうか。そのための指揮者の役割は重要だが、チョン・ミンは学生オケをそのようなステージに上げることはできていなかった。

共演者との生きたやり取りが盛り上がってこそ、アルゲリッチの本領が発揮されるということに、このコンチェルトと、次のデュオを続けて聴いたことで気づいた。アルゲリッチがソロ活動から遠ざかりアンサンブル活動に徹しているのは、ソロを弾きたくない、という消極的な理由ではなく、アンサンブルにこそ音楽の真髄があり、それをやるために自分がいるという、極めて積極的な理由があるのではないだろうか。

最後は、チョン・ミンと東京音大オーケストラ・アカデミーの単独ステージで、ブラームスが演奏された。最初にやったベルリオーズでもクリアな響きと勢いのある演奏を聴かせてくれたが、こちらも悪くない。オーボエやクラ、ホルンと云ったソロ楽器も表情豊かな歌を奏で、弦楽合奏の情感溢れる演奏も耳を引いた。けれど、もう一つ脇の甘さというか、フォーカスが定まらないという印象が最後まで続いたブラ1だった。

アルゲリッチ Meets プロコフィエフ(別府アルゲリッチ音楽祭2018) 2018.5.16 タケミツメモリアル
マイスキー バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲演奏会 I  2007.11.1 タケミツメモリアル
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