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堤剛80歳記念チェロ・リサイタル

2023年04月27日 | pocknのコンサート感想録2023
4月22日(土)堤剛(Vc)/河村尚子(Pf)

サントリーホール

【曲目】
1. ベートーヴェン/チェロ・ソナタ第4番ハ長調 Op. 102-1
2.R. シュトラウス/チェロ・ソナタ ヘ長調 Op. 6
3.権代敦彦/無伴奏チェロのための"Z"ゼータ Op.186(2022)
♪ ♪ ♪
4.プロコフィエフ/チェロ・ソナタ ハ長調 Op. 119
5.マルティヌー/ロッシーニの主題による変奏曲
《アンコール》
1.ラヴェル/ハバネラ形式の小品
2.カサド/愛の言葉


堤剛が、昨年80歳を迎えたことを記念して開催されたリサイタルを聴いた。多彩な曲目が並ぶリサイタル全体を通して、堤の柔軟で、かつ芯は揺るぐことのない「哲学」が伝わり、感銘深いリサイタルとなった。

ベートーヴェンのソナタの序奏が始まるや、堤は落ち着き払った語り口で聴き手の心を優しく包み込んだ。長い呼吸で、無理なく楽器を朗々と鳴らして深くたっぷりと歌を奏でる堤さんのチェロには、悠久の時を刻むような泰然自若の味わいがある。アレグロ・ヴィヴァーチェへ入っても慌てず騒がず全てを大きなオーラで包み、作品の奥底にある大切なメッセージを自然な息遣いで伝えて来た。

こうしたアプローチは全ての曲に共通していた。どの作品にも深い洞察の目で向き合い、一つ一つの音を吟味してそれに相応しい色付けを施し、全体を丁寧に磨き上げて仕上げて行く名匠の技を感じる演奏は、この年齢になって初めてできる円熟の表現とも思えた。

シュトラウスでの豊かな詩情は必然として響き、プロコフィエフでの諧謔的で一種気まぐれな表現にも真実が宿っていた。権代の新曲やマルティヌーの演奏曲に現れる速いテンポの激しいパッセージでも、うわべの激しさの奥底にある魂を語って聴かせる姿勢が感じられた。

堤のチェロは終始安定し、ブレることなく作品の本質を伝えてくれるのだが、もう少しハラハラするようなスリリングな展開が欲しいと感じることもあった。河村のピアノは、堤のチェロに耳を澄ませ、それを尊重しつつ対話し、穏やかな叙情や詩情が醸し出される一方で、河村の持ち前の逞しいダイナミズムは抑え気味。若さの特権で思いっきりアグレッシブな働きかけを仕掛け、それが起爆剤となって堤さんのハートもメラメラと燃え上がるような場面があっても良かったとも感じた。

チェンバーミュージックガーデン オープニング 堤剛プロデュース (2022.6.4 ブルーローズ)
堤剛(Vc)& 小菅優(Pf)デュオリサイタル (2021.3.11 東京文化会館小ホール)
堤剛&ルドルフ・ブッフビンダー (2013.11.7 東京文化会館小ホール)
堤剛 チェロリサイタル (2011.11.19 東京文化会館小ホール)
♪ブログ管理人の作曲のYouTubeチャンネル♪
最新アップロード:「かなりや」(詩:西條八十)

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