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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

イザベル・ファウスト&アレクサンドル・メルニコフ

2021年01月30日 |  pocknのコンサート感想録2021
1月27日(水)イザベル・ファウスト(Vn)/アレクサンドル・メルニコフ(Pf)
王子ホール

【曲目】
1.シューマン/幻想小曲集 Op.73
2.バルトーク/ヴァイオリン・ソナタ第2番 Sz76
3.シューマン/3つのロマンス Op.94
4.ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ ヘ短調 Op.120-1
【アンコール】
♪ シューマン/ヴァイオリン・ソナタ 第3番イ短調~第3楽章 インテルメッツォ

今夜はホルンのファン・デア・ズヴァールトも加わったトリオのコンサートが予定されていたが、新たな入国制限強化のためにデア・ズヴァールトが来日できなくなり、それより前に来日して自主隔離を済ませたファウストとメルニコフが、急遽デュオのプログラムを組んでくれてコンサートが実現した。この状況下、こうして外来アーティストの演奏会を聴けるのはとても貴重な機会だ。毎回深い感銘を与えてくれているこの2人によるデュオが、新たな感動を届けてくれた。

ファウストのヴァイオリンはいつもながら極限まで研ぎ澄まされてピュアに輝き、楽曲を生々しいほど鮮やかに浮かび上がらせた。そこには、単に美しいという次元を超えた独特の光がある。ある時は、夜明けに最初に差し込む太陽の一条の光のようにギラーッと云う強靭さを放ち、またある時は層をなした雲母の結晶がはがれ、光を反射してハラハラと舞うようなデリケートな光。そんな音色で綴られる音楽は、曲によって多彩な表情を見せた。

シューマンの小曲集のような音楽では、韻文調の詩を語っているように簡潔で洗練された、香り高い抒情を宿す。これには和歌の世界にも通じるような詩情と切なさを感じた。メルニコフのピアノは、ファウストのヴァイオリンと共にモザイクのような文様を描いて行った。

これがバルトークでは強靭な刃となる。静寂のなかで相手をじっと見据えてギラリと光る刀を構えているような沈黙が続いたあと、後半では整然とした姿勢から鮮やかな太刀さばきで斬りつけてくる。その集中力と瞬発力には、息もつかせぬ凄みがある。メルニコフとの真剣勝負のアンサンブルが聴き手を異次元へと運んで行った。

最後はブラームスのソナタ。クラリネット・ソナタとして書かれた作品120のソナタは、ヴィオラヴァージョンも有名だが、ブラームスの手によってヴァイオリン版も書かれたことは知らなかった。音域も動きも、元々ヴァイオリンのために書かれた3つのソナタと比べて地味だが、そのなかでファウストのヴァイオリンは特異な存在感を示した。穏やかに歌い、語りかけてくる調べのなかにも、何かにちょっと触れただけでビーンと反応しそうな敏感なアンテナを具えていて、この曲がファウストによってヴァイオリンで演奏されることで、新たな素敵な顔を見せてくれた。

ファウスト&メルニコフ(2019.10.29 王子ホール)
ファウスト&ケラス&メルニコフ(2017.2.23 王子ホール)
イザベル・ファウスト&クリスティアン・ベザイデンホウト(2016.10.11 王子ホール)

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