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N響 2024年2月B定期( パブロ・エラス・カサド 指揮)

2024年02月18日 | pocknのコンサート感想録2024
2月15日(木) パブロ・エラス・カサド 指揮 NHK交響楽団
《2024年2月Bプロ》 サントリーホール


【曲目】
1.ラヴェル/スペイン狂詩曲
2.プロコフィエフ/ヴァイオリン協奏曲 第2番 ト短調 Op.63
【アンコール】
 ♪ ガルデル/ハーデリヒ編/ポル・ウナ・カベーサ(首の差で)
 Vn : アウグスティン・ハーデリヒ
3.ファリャ/バレエ音楽「三角帽子」(全曲)
 S: 吉田珠代


2月のN響定期は、3つのプログラムにそれぞれ別の指揮者が立った。Bプロは、スペイン出身のエラス・カサドの指揮でスペインにまつわるプログラム。スペイン生まれの指揮者によるスペインものと聞くと、奔放で情熱的なフラメンコみたいな演奏をイメージしてしまうが、カサドは濃厚な民族色より、緻密で洗練された鮮やかな音をN響から引き出した。

ラヴェルの「スペイン狂詩曲」冒頭、弦の下降音階の再弱音の極致のような静けさは、泉の水面が微動だにせず、鏡のように深い森を映し出しているような静謐で神秘的な世界。淀みも揺れも濁りもなく楽器をここまで滑らかにコントロールする技にも驚いた。こうしたデリケートさや、色彩に溢れた洗練されたサウンドを繰り広げ、最後の「祭り」は、目にも鮮やかな眩い光と躍動するリズムの饗宴で締めくくった。

続いて、ハーデリヒをソリストに迎えてのプロコフィエフの協奏曲。ハーデリヒの濃密で熱い歌を奏でるヴァイオリンは、既に冒頭で聴き手の心を捉えた。奔放さや粗削りのところはなく、速いパッセージも正確無比に刻み、鋭く斬り込んで来る。しかも軽々とした印象ではなく一つ一つの音が確かな重力を具えていた。アンコールでは、温かなメロディーとタンゴの踊るリズムによる伴奏形の重音がデュオのように奏でられ、心に沁みるシーンを描いた。

後半のファリャも俊敏で鮮やか。団員の手拍子と掛け声は威勢がいいし、吉田珠代の呼びかけの艶やかな歌も期待感を高める。オケは民族色的な臭いはないが、ここではいかにもスペインを思わせる底抜けの明るさがあった。カサドは、音を一極に集めるエネルギーの持って行き方や、それを発散させる勢いのコントロールが巧みで、次々と情景が変わる音楽を、スリリングに活き活きと表現して行く。コンマス姿も板についてきた郷古さんのノリに乗った弾きっぷりがオケ全体に伝染して、アグレッシブな大きなうねりを生む。その一方で、甘い愛の囁きを思わせる歌のデリケートさにも痺れた。凄まじい勢いで畳みかける最終盤は、力づくではない一糸乱れぬトゥッティによる輝かしいエンディング。エネルギーと緻密さの両方が最大限に発揮され、鮮やかな快演となった。

N響 2019年12月B定期(パブロ・エラス・カサド 指揮)

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