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イザベル・ファウストによるバッハの無伴奏

2021年11月21日 |  pocknのコンサート感想録2021
11月17日(水)イザベル・ファウスト(Vn)
東京オペラシティコンサートホール:タケミツメモリアル

【曲目】
1.バッハ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番ト短調 BWV1001
2.バッハ/無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第1番ロ短調 BWV1002
3.バッハ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ長調 BWV1005
【アンコール】
♪ バッハ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番イ短調 BWV1003~第3楽章

1月に続き、イザベル・ファウストが今年2度目の来日を果たし、素晴らしいリサイタルに立ち会うことが出来た。1月の来日時は欧米での演奏会が全て中止されていた時期で、日本で演奏活動ができることをとても喜んでいたファウストだが、今回は欧米で演奏活動を普通にできる状況ながら、来日後の隔離も覚悟で日本に再び来てくれた。とても有り難い。

ファウストのリサイタルはこれまで何度も聴いているが、無伴奏でのリサイタルは初めて。バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータとソナタの全曲演奏会の1日目を聴き、デュオやアンサンブルとはまた異なる、稀有で孤高の世界を体験した。

ファウストのヴァイオリンはとにかく自然体だ。どこにも余分な力が加わらず、この上なくデリケートに音を紡いでいく。聴き慣れた演奏ではアグレッシブに攻めてくるような場面も、何の気負いもなく穏やかな音楽を聴かせる。それは、ちょっとでも刺激を加えると壊れてしまいそうな、ぎりぎりのところで調和を保っているデリケートさとか、生まれたばかりの雛をそっと掌にのせて優しく包み込んでいるようなデリケートさだ。

しかしこの演奏には、か弱くヤワなものとは全く異なる強い生命力がある。デリケートに音をひたすら連ねていくことで、とてつもない力を授かり、命を宿した生命体が熱いメッセージを発するのだ。魂のモノローグとでも云いたくなる演奏に、いつの間にか心がグイグイと引き込まれて行く。大上段に構えて圧倒するのとは対極の、目力だけで静かに全てを納得させてしまうパワーがある。

演奏をとりわけ豊かにしているのがポリフォニーの表現の広さと深さだ。重音による声部の弾き分けが柔らかな調和をもたらすだけでなく、単音が続く場面でも、微細なアゴーギクやディナミーク、音色の変化によって、各声部の役割がくっきりと描き分けられたポリフォニーが鳴り響く。そして全体が美しく調和する。この世で最も美しいものとの出会いと云えるような美しい音色で心の一番深いところに語りかけてくる演奏は、バッハの音楽の神々しさが伝わるようで畏怖を覚えるほど。それほどバッハの真髄に導いてくれたファウストのソロリサイタルだった。

ファウスト&メルニコフ(2021.1.27 王子ホール)
ファウスト&メルニコフ(2019.10.29 王子ホール)
ファウスト&ケラス&メルニコフ(2017.2.23 王子ホール)
ファウスト&ベザイデンホウト(2016.10.11 王子ホール)

コロナ禍で演奏会の中止が続く欧米、やっている日本
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