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N響 2023年12月B定期(ファビオ・ルイージ 指揮)

2023年12月10日 | pocknのコンサート感想録2023
12月7日(木)ファビオ・ルイージ 指揮 NHK交響楽団
《2023年12月Bプロ》 サントリーホール


【曲目】
1.ハイドン/交響曲第100番ト長調 Hob.I-100「軍隊」
2.リスト/ピアノ協奏曲第1番変ホ長調
【アンコール】
 ♪ ペルト/アリーナのために
 Pf:アリス・沙良・オット
3.レーガー/モーツアルトの主題による変奏曲とフーガ Op.132



コンマスに郷古さん、トップサイドにマロさんという強力布陣で行われたファビオ・ルイージが指揮するN響12月B定期、最初はハイドン。切れと潤いを兼ね備え、各楽器が息づき、充実したアンサンブルを繰り広げた。表情豊かで雄弁で、ハイドンらしい愛らしさやお茶目な語りかけも自然。軍隊の進軍シーンの描写は意気揚々とした誇らしさが伝わって来た。節度が保たれて音楽的ではあるが、進軍シーンなどは少々羽目を外して悪乗りするのもありではないかな。微笑みを絶やさない優美な演奏はもちろん素敵だが、香水のスペシャリストであり、蝶ネクタイが似合うお洒落な紳士というイメージからは想像できないようなファビオさんの意外な一面も聴かせて欲しい気がしてしまった。

続いてリストのピアノ協奏曲。これはアリス・紗良・オットのピアノに尽きる。オットはピアニスト生命を脅かす難病と闘いながら演奏活動をしているというが、そんな病気の影を全く感じさせず、鮮やかなピアノで聴衆を魅了した。凝縮された感性で、全身で音楽を敏感に感じ取り、それを澄み切って磨かれた音で表現していく。暗闇の中の一筋の鮮やかな光のようにピーンと伸びる最弱音から、鋼鉄のように逞しく、熱い火花を散らす最強音まで幅広い音を使い、感覚の赴くままに自由自在に飛び回り、ある時はロマンチックな歌を奏で、ある時はアグレッシブに迫り、掴みかかってくる。終始カデンツァを弾いているように解き放たれていながら、オケとの見事なコラボで息が合うのはファビオの腕前があるからだろう。欲を云えば、オケの更なるアグレッシブな働きかけがあると良かったが。

アンコールでは「リストは音がとても多かったので、少ない音の曲を弾きます。これは演奏者と聴衆の両者で作り上げる音楽です。」と云ってペルトの静謐な世界を聴かせてくれた。トレードマークの素足で元気にステージ上を行き来していたオットだが、今後も体調を保ちつつ活躍を続けて欲しい。次はリサイタルを聴いてみたい。

後半はレーガー。この曲をまともに聴くのは初めてだったが、レーガーのモーツァルト愛が溢れた名品だと感じた。作曲の腕前を見せつけるような大袈裟な変奏曲ではなく、柔らかな詩情に溢れた音楽。ブラームスのハイドンバリエーションにも通じるものを感じた。ファビオ/N響は隅々まで丁寧に、繊細で豊かな表情を湛え、優美にモーツァルト讃歌を紡いで行った。最後のフーガも軽やかで自然体。モーツァルトが天上で微笑んで聴いているよう。最後は壮大にモーツァルト讃を謳歌して華やかに曲を閉じた。ファビオ/N響による幸せ気分の好演となった。

N響 2023年5月B定期(ファビオ・ルイージ 指揮)
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N響 2022年9月B定期(ファビオ・ルイージ 指揮)
マゼール指揮N響(Pf:アリス・紗良・オット)2012.10.29 NHKホール

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