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パーヴォ・ヤルヴィ/N響の「幻想交響曲」

2015年10月08日 | N響公演の感想(~2016)
10月8日(木)パーヴォ・ヤルヴィ指揮 NHK交響楽団
~NHK音楽祭2015~
NHKホール


【曲目】
1.ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
2.ラヴェル/ピアノ協奏曲ト長調
Pf:ジャン・イヴ・ティボーデ
3.ベルリオーズ/幻想交響曲 Op.14

この秋のシーズンより、いよいよパーヴォ・ヤルヴィがN響の初代首席指揮者に就いた。僕が会員になっているB定期では大規模でかつ盛り上がる曲は滅多にやってくれない。ヤルヴィの首席指揮者就任にはやっぱり「盛り上がる大曲」を聴きたくて、このNHK音楽祭の「幻想」を聴きに来た。客席は3階の最上段までギッシリの超満員。パーヴォへの期待の大きさが窺える。

1曲目は「牧神」。途切れ途切れの呼吸が自然に繋がって行くゆったりした部分のまどろみ感、パート間でフレーズを受け渡しつつ動きが生じる部分での能動的な生命力、どちらも印象的。
ジャン・イヴ・ティボーデを迎えてのラヴェルのコンチェルト、ティボーデのピアノはジャズ的な即興性や奔放さよりも、おしゃれで粋な色彩感やリズム感が冴える。オーケストラで印象的だったのは第2楽章。「牧神」でも感じた滑らかに弧を描きながらメロディーを受け渡して行く様子から、大きくゆったりとした呼吸が感じられた。

「幻想交響曲」で期待していたのは、「冴え」「輝き」「パワーの炸裂」といった能動的な面での魅力。第1楽章終盤や第4楽章、そしてフィナーレの終盤では、ギュッと中味の詰まった密度の濃いN響ならではの光沢のある響きが、力強い集中力を持続させて突き進み、聴きごたえ十分だった。また第2楽章の弦楽器によるワルツのメロディーからは、耳元で生温かな息をそっと吹きかけて囁きかけてくるような妖しげな魅力を感じ、フィナーレでは妖怪たちの不気味な饗宴の様子が、ぞっとするほどリアルに表現されているのが伝わるなど、この音楽の持つ妖気や狂気がうまく表現されていた。

ただ、パーヴォ・ヤルヴィの首席指揮者就任を華々しく飾る名演!…と言うには、悪いけれどほど遠いというのが正直な感想。特に第1楽章前半や第3楽章などで、焦点の定まらない曖昧さを感じた。もしかしてこの曲の「幻」的な要素を出したかったのかも知れないが、それが成功していたとは思えない。パーヴォ/N響には、隙のない、集中力の切れない、終始「攻め」の演奏を期待していただけに、ちょっと拍子抜けしてしまった。

パーヴォ・ヤルヴィ指揮 NHK交響楽団/「英雄の生涯」他(2015年2月B定期)

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