【デノン】
■実力派のヘッドホン&イヤホンと組み合わせて音質をチェック
まずは、DA-10の最高の実力を発揮させるべく、ハイレゾ音源を中心に試聴。PCにMacBook Air、プレーヤーソフトにAudirvaba Plusをチョイス。こちらと「DA-10」をUSBケーブルで接続して、実力のほどを検証してみた。なお、ヘッドホンはSHURE「SRH1540」やPHILIPS「Fidelio X1」、AKG「K812」など、イヤホンはJH AUDIO「Roxanne」やWestone「ES50」など、高級ヘッドホンからカスタムIEMまで様々な製品を組み合わせてみた。
DA-10の試聴をスタートして、まず第一に感心したのはドライブ力の高さだ。たとえがSHURE「SRH1540」は決して鳴りにくいヘッドホンではないものの、駆動力が“そこそこ”のポタアンでは低域の押し出し感が弱く、かつフォーカス感の甘いサウンドになってしまうことがある。しかしながら、「DA-10」は上質な据え置き型ヘッドホンアンプのごとく、ダイナミックレンジ幅の十分確保した、躍動感溢れるサウンドを聴かせてくれるのだ。おかけでハードロックなどの楽曲は、ビートのキレがよい、パワフルな演奏が楽しませてくれる。「DA-10」と「SRH1540」、なかなかに相性の良い組み合わせといっていいだろう。
もうひとつ、特に相性が良いと感じたのはPHILIPS「X1」との組み合わせだ。「X1」ならではの、ソリッドで芯のある低域が際立ち、とてもグルーブ感が高い。解像感も良好で、チェロなどの弦楽器は、丁寧で伸びやかな演奏を披露してくれる。また、各ヘッドホンとの組み合わせを通じてわかったのは、DA-10のiOSデジタル入力のサウンドも、上限は48kHz/24bitながら、非常にタイトでレベルの高いサウンドだということだ。
■カスタムIMEを中心にイヤホンとの組み合わせもチェック
イヤホンについてはカスタムIEMを中心に試聴してみたのだが、解像度とノイズの少なさにおいて高いアドバンテージを感じた。JH AUDIO「Roxanne」は、BAドライバー12基搭載というシステム構成のためか、(ユニバーサルタイプも含め)駆動力をしっかり持ちつつも、制動の利いた良質なパワーアンプを組み合わせる必要がある。そうしないと、ただ単に音数の多い、猥雑な音となってしまう傾向があるのだ。そんなキャラクターを持つ「Roxanne」を、「DA-10」は軽やかに鳴らしつつ、抑制の利いたS/N感の高いサウンドを引き出してくれる。
おかげでオーケストラの演奏などは、楽器ひとつひとつの演奏が細やかなニュアンスまで伝わってくると同時に、ホールの大きさ、響きの特徴までも感じられる。こういったきめ細やかな抑揚表現、空間表現は、ポータブルオーディオの世界ではなかなか出会えうことがない。「Advanced AL32 Processing」ならではの恩恵も多分にあるのだろう。いずれにしろ「Roxanne」の実力を充分に引き出してくれる、マッチングの良い組み合わせといえる。
続いてWestone「ES50」も試聴した。本機との組み合わせでは、音色的な素直さが魅力。チェロのボーイングからピアノまで、リアリティの高い演奏を楽しませてくれる。どちらかといえば美音系なのだけど、芯がしっかりしていて、かつ付帯音がほとんどないイメージだ。ちなみに、この「ES50」はユニバーサル・モデルのカナル型イヤホン「UM Pro50」と音色的なキャラクターが似通っていて、ポタアンに求める実力や相性の良さもほぼ近似値となっている(異なるのはカスタムIEMならではの絶対的な遮音性と音の伸びやかさの2つのみ)ので、そちらのオーナーも是非とも参考にして欲しい。
■スピーカーと組み合わせて据え置きDACとしての能力を確認
続いて、プレーヤーはMacBookAirのまま、出力を固定にして使ってプリメインアンプ&スピーカーシステムと接続。USB-DACとしての実力を試してみた。なお、今回の試聴ではプリメインアンプにAura「Vita」を、スピーカーにELAC「BS312」を使用している。
結論からいえば、こちらのサウンドもかなりのレベルだった。DAC内蔵のポタアンをDACとして利用すると、S/N感の貧弱さ、フロアノイズレベルの高さを露呈することがままある。しかし、その点「DA-10」は優秀で、良好なSN感を持つ、ピュア志向のサウンドを楽しむことができる。おかげで、オーケストラの演奏などはヘッドホン試聴の時よりもさらに広がり感の大きい、壮大なスケールのサウンドが味わえる。
組み合わせたスピーカーはELAC「BS312」
もちろん、絶対的な解像感の高さなどは据置型の高級モデルに一歩譲るが、そういった本格派に肉薄するくらい、純度の高いサウンドを持ち合わせているのも確かだ。特にデスクトップ環境では、それほど大きな差にならない、上手いまとめ方も可能なはず。たとえば、良質なパワードスピーカーと組み合わせて、シンプルながらも本格派のサウンドを構築することもできる。そういった、デスクトップでの使い勝手の良さも「DA-10」ならではの魅力といえるだろう。
■アナログ入力の音質を検証する
最後にアナログパート、純粋なアナログ・ヘッドホンアンプとしての実力もチェックしよう。「DA-10」はアナログ入力(3.5mmステレオミニ端子)も持っているため、こちらにAstell&Kernのハイレゾ対応プレーヤー「AK100II」を接続し、先ほどのUSB-DAC接続時に使用したヘッドホン&イヤホンを使って試聴を行った。
正直にいえば、これまでの試聴で「DA-10」はデジタルパートに大きなアドバンテージを持っていると感じていたため、大きな期待はしていなかったのだが、これがなかなかのもの。グイグイと低域がドライブされ、抑揚表現が大きく、ノリの良さあふれるサウンドが楽しめるのだ。フォーカス感も良好で、音がダイレクトに感じられる点も好印象。おかげで、ハードロックなどのジャンルではグルーブ感の高い演奏が楽しめる。この実力があれば、アナログ接続のポタアンとしても充分に活用できる。
■パワフルさと音楽性を兼ね備えた“デノンらしさ”全開のサウンドだ
ヘッドホンからスピーカー、デジタル接続からアナログ接続まで、今回は様々なパターンの試聴を行ったが、「DA-10」のキャラクターをひとことで表すならば「デノンらしさが全身からあふれ出ているポタアン」という言いまわしがピッタリかもしれない。
実は、アナログ接続での試聴を行っていたときにピンときたのだが、デノンの据置型プリメインアンプと、音色的なキャラクターや表現の個性が近いのだ。低域の芯の強さ、リズムパートのパワフルさを信条としつつも、丁寧な表現を併せ持つ上質なサウンド。まさに、デノンらしい溌剌としたサウンドが、ポータブル環境でも存分に楽しめるのだ。これは嬉しい。
しかも、「Advanced AL32 Processing」を初めとする独自のデジタルシステムによって、ポータブル製品としては望外といえるきめ細やかな階調表現と、音のピュアさを持ち合わせている。良い意味でデノンらしい、良い意味でポタアンらしくないのが、「DA-10」ならではの魅力といえるだろう。