■UIの新要素「感圧センサー」と「デジタルクラウン」
Apple Watchのユーザインターフェイスは、iPhoneなどのiOSデバイスと同様のタッチパネルを基軸としつつも、だいぶ異なる操作感をユーザにもたらす。その要因は、搭載された「Apple Watch OS」の階層構造を持つアプリの実行環境もあるが、新採用の「感圧センサー」と「デジタルクラウン」の働きが大きい。
Apple Watchでは、シングルタップを主要な動作として規定している。複数の指を同時に使うマルチタップはサポートされず、指2本を狭めたり広げたりするピンチイン/アウトも利用できない。代わりに導入されたのが「感圧センサ-」で、強く押すことでApple Watchにアクションを伝える。軽く触れるタップ(タッチ)と、強く押す「フォースタッチ」を効果的に使うことで、画面の物理的な制約を意識させないというわけだ。
Apple Watchのホーム画面。アプリはアイコンのみで、名称は表示されない。タップするかデジタルクラウンを回転して起動する
文字盤(時計)のフェイスは、デフォルトでは簡素な「モジュラー」が設定されている。上部の赤丸は、未チェックの通知があることを意味する
デジタルクラウンは、側面にある龍頭状のダイヤルを回転させることでアクションを伝える。画面を上下方向にスクロールしたり、ズームイン/アウトするときに利用するものだ。押す(クリック)こともでき、それはホーム画面に「戻る」操作や、アプリのキャンセル処理に使われる。2回連続押し(ダブルクリック)は最後に利用したアプリの、長押し(プレス)はSiriの呼び出しだ。
この感圧センサーとデジタルクラウン、確かに新鮮な印象はあるが、扱いやすさと実用性でいえば微妙な部分を否定できない。
フォースタッチはコツを飲み込めばどうということもないアクションだが、アプリの情報を1画面で表示し起動にも使える「グランス」では作用しない -- グランスの画面とアプリの画面は見分けにくく、つい誤ってグランスのときプレスしてしまう -- など、使うべき場面がいまひとつ直感的でない。ボタンやアイコンといった操作対象を明確にしないアプリが多いことも、混乱を招く原因だ。
文字盤を上方向へフリックすると、Watchアプリの情報をすばやく確認できる「グランス」が現れる。下部にある○はアプリの数、●は表示中のアプリを意味する
デジタルクラウンは平たい形状のためつまみにくく、リストバンドに"あそび"の部分があるため(まったく動かないようキツく締め上げるなら話は別だが)、ダブルクリックが難しい。Siriを呼び出すときも、指1本ではリストバンドがずれてしまうため、Apple Watch本体をつまむようにしてデジタルクラウンを押すことになる。
操作感という点では微妙なデジタルクラウンだが、"Apple仕込みのアプリ"を介すと印象は大きく変わる。その洗練度合いや作り込みの入念さは、正直なところAndroid Wearをはじめとする他のウェアラブル端末を大きく引き離しており、そこでデジタルクラウンは効果的に使われている。
『時計』アプリはその好例だ。このアプリは、画面上の適当な位置をプレスすると文字盤(フェイス)を変更できるのだが、そのひとつ「アストロノミー」では存分にデジタルクラウンを活用している。地球や月を表示しているときは、デジタルクラウンを回すと±方向へ自転させることができ、日の入り/日没や満月/新月までの日時が視覚的に表現される。表示を太陽系に切り替えると、惑星が公転するようすもわかる。他のフェイスも相当な凝りようだが、ことデジタルクラウンに関して言えば、このアストロノミーが頭1つ、2つ抜き出た印象だ。
文字盤のフェイスを「アストロノミー」に変更したところ。iPhoneと通信せず自律的に動作するネイティブWatchアプリだ
■アプリ実行環境として見た「Apple Watch OS」
Apple Watchには、システムソフトウェアとして「Apple Watch OS」が採用されている。現時点での最新バージョンは1.0、ビルド番号は12S507。母艦たるiPhoneで動作する管理用アプリ『Apple Watch』の「情報」画面で確認できる(それにしてもApple製アプリの直球すぎるネーミングは記事にするとき困る、どうにかならないものか)。
この『Apple Watch』は、Apple Watchで動作するアプリ(以下、Watchアプリ)の追加/削除や設定変更にも利用される。Apple Watchにも『設定』アプリは存在するが、明るさの調整や機内モードのオン/オフ、パスコードの登録といった基本的な設定しか扱えず、システムの更新を含めiPhoneに大きく依存している。かつてのiPhoneがパソコン(iTunes)なしでは利用できなかったように、Apple WatchもiPhoneなしではありえない。
Apple Watchのソフトウェア・アップデートはiPhone側(『Apple Watch』アプリ)で行う。Watchアプリの管理を行うのもiPhone側だ
Watchアプリ自体も、iPhoneへの依存度が高い。Watchアプリ『カメラ』を例にすると、起動するとただちにiPhoneの『カメラ』アプリを起動し、iPhone内蔵カメラが取得したイメージをApple Watchに転送する。シャッターはApple Watch側で切ることができるが、写真が記録されるのはiPhone側で、Apple WatchはiPhoneの『カメラ』アプリを遠隔操作するに過ぎない。位置情報を参照する『マップ』の道案内や『電話』で受発信する機能も、基本的なしくみは同じだ。
iPhoneとの通信を遮断すると、『マップ』などインターネット接続を前提としたWatchアプリは機能しなくなる。WatchKit Extensionで動作するアプリは、赤いiPhoneが表示され起動自体できない
この動作は、「WatchKit Extension」によって実現されている。この方式に沿って開発されたiOSアプリは、格納された機能拡張モジュールを外部(Watchアプリ)から呼び出し、連携して処理を行うことができる。iOSアプリからWatchアプリへ送信されるのは演算結果などわずかなデータであり、ボタン類や画像ではない。実際の描画はWatchアプリ側にあるリソースファイルで行うため、いちどに送受信できるデータは少ないが消費電力はわずかなBluetooth LEで足りる。WatchKit Extensionは、慎重に検討された"Watchアプリのあり方"なのだ。
もちろん、このしくみが最速・最良のアプリ実行環境というわけではない。当然、すべての処理をApple Watch上で完結できるアプリ(ネイティブWatchアプリ)のほうがパフォーマンスに優れる。これは、機能的にiPhoneに依存する必要がない『時計』や『ストップウォッチ』のキビキビとした動作からもわかるはず。
しかし、現在AppleはネイティブWatchアプリの開発をサードパーティーに認めていない。Apple Watchのパワーをフルに引き出せるネイティブWatchアプリを解放してしまうと、余裕があるとは思えないバッテリーの消費を速め、"腕時計"としての立場を揺らがしてしまいかねないからだろう。
そのような事情もあってか、Apple Watchの発売と同時に公開されたサードパーティー製アプリはいささか"紋切り型"に映る。個別製品について言及するまでもなく、「たまごっち」以外ゲームアプリが見当たらない(4月26日時点)ことからも明らかだ。
WatchKit Extensionを利用してアプリ開発を行うにしても、サードパーティーは制約が多い。フォースタッチはコンテキストメニューの表示にしか使えず、デジタルクラウンは画面を上下にスクロールするだけ。各種センサーへのアクセスや、手首を軽くたたいて通知する「タプティック・エンジン」の利用も、純正アプリだけに許された特権だ。
Appleとしては、「Apple Watch総体から得られるエクスペリエンス」を大切にするがために、Watchアプリの機能をコントロールしたいのだろう。それはそれとして理解できるが、アプリ実行環境として評価するには制約が多すぎる。つい、初代iPhone/iPod touchがサードパーティーに対しWEBアプリの開発しか認めていなかったことを思い出してしまうのだが…。
■Apple Watchの「音楽端末」としての価値は?
結論からいうと、Apple Watchの「音楽端末」としての価値はかなり高い。先行するAndroid Wearベースの端末と比較すると、新味に乏しく映るかもしれないが、Apple WatchにはiTunesとiTunes Storeが背後にある。その点を踏まえれば、見え方が変わってくるはずだ。
標準装備のアプリ『ミュージック』は、iPhoneに貯えたサウンドライブラリを再生できるだけでなく、最大2GBの楽曲データをApple Watch側に持つことができる。Bluetooth/A2DPの送り出し側としての機能を持つため、Bluetooth対応ヘッドホンまたはBluetoothスピーカーを用意すれば、自律的に動作するデジタルオーディオプレイヤーとなるのだ。
Apple Watchの『ミュージック』。iPhone上の音楽だけでなく、Apple Watch上にも音楽を取り込み再生することができる
実際にBluetoothスピーカー「Klipsch GiG」で試したところ、iPhoneと大きく変わらない手順で音楽を再生できた。利用されるコーデックがSBCかAACかは確認できなかったが、iPhoneと聴き比べても遜色はない。2GBといえばアルバム数枚を収めるにはじゅうぶん、初期のiPod nanoやiPod shuffleを上回る容量だ。
iPhone上にあるプレイリストと同期すれば、Apple Watchに曲が転送される(充電時のみ実行)。上限の2GBを多いと見るか少ないと見るか?
『ミュージック』の画面上をフォースタッチすると、再生ソースを選択できる。Apple Watchを選択すると、出力先のBluetoothデバイスを選択させられる(Bluetooth出力も「AirPlay」と呼ばれるようだ)
リモコンアプリ『Remote』も収録されている。パソコン側でiTunesを起動しておけば(iTunesライブラリを公開する設定も必要)、Apple Watch側から再生/停止を指示できる。出力先とするスピーカーも指定できるので、機能的にはiOS版『Remote』と大差ない。
ただし、Watchアプリ版『Remote』はiPhoneが必須。iTunesライブラリ(パソコン)にはApple Watchから直接アクセスできず、iPhoneのWi-Fiをオフにしていると動作しない。前述したWatchKit Extensionではなくネイティブアプリらしく、iPhone側に『Remote』アプリがなくても動作するが、『カレンダー』や『マップ』などハンドオフ(OS X Yosemiteからサポートされたアプリ間連携機能)がOS Xと直接やり取りできることからすると不思議な仕様だ。
パソコン上のiTunesライブラリにアクセスし、再生などを指示できる『Remote』も付属する。ただし、直接パソコンとは連携できず、iPhoneを介さなければならない
Apple Watchのユーザインターフェイスは、iPhoneなどのiOSデバイスと同様のタッチパネルを基軸としつつも、だいぶ異なる操作感をユーザにもたらす。その要因は、搭載された「Apple Watch OS」の階層構造を持つアプリの実行環境もあるが、新採用の「感圧センサー」と「デジタルクラウン」の働きが大きい。
Apple Watchでは、シングルタップを主要な動作として規定している。複数の指を同時に使うマルチタップはサポートされず、指2本を狭めたり広げたりするピンチイン/アウトも利用できない。代わりに導入されたのが「感圧センサ-」で、強く押すことでApple Watchにアクションを伝える。軽く触れるタップ(タッチ)と、強く押す「フォースタッチ」を効果的に使うことで、画面の物理的な制約を意識させないというわけだ。
Apple Watchのホーム画面。アプリはアイコンのみで、名称は表示されない。タップするかデジタルクラウンを回転して起動する
文字盤(時計)のフェイスは、デフォルトでは簡素な「モジュラー」が設定されている。上部の赤丸は、未チェックの通知があることを意味する
デジタルクラウンは、側面にある龍頭状のダイヤルを回転させることでアクションを伝える。画面を上下方向にスクロールしたり、ズームイン/アウトするときに利用するものだ。押す(クリック)こともでき、それはホーム画面に「戻る」操作や、アプリのキャンセル処理に使われる。2回連続押し(ダブルクリック)は最後に利用したアプリの、長押し(プレス)はSiriの呼び出しだ。
この感圧センサーとデジタルクラウン、確かに新鮮な印象はあるが、扱いやすさと実用性でいえば微妙な部分を否定できない。
フォースタッチはコツを飲み込めばどうということもないアクションだが、アプリの情報を1画面で表示し起動にも使える「グランス」では作用しない -- グランスの画面とアプリの画面は見分けにくく、つい誤ってグランスのときプレスしてしまう -- など、使うべき場面がいまひとつ直感的でない。ボタンやアイコンといった操作対象を明確にしないアプリが多いことも、混乱を招く原因だ。
文字盤を上方向へフリックすると、Watchアプリの情報をすばやく確認できる「グランス」が現れる。下部にある○はアプリの数、●は表示中のアプリを意味する
デジタルクラウンは平たい形状のためつまみにくく、リストバンドに"あそび"の部分があるため(まったく動かないようキツく締め上げるなら話は別だが)、ダブルクリックが難しい。Siriを呼び出すときも、指1本ではリストバンドがずれてしまうため、Apple Watch本体をつまむようにしてデジタルクラウンを押すことになる。
操作感という点では微妙なデジタルクラウンだが、"Apple仕込みのアプリ"を介すと印象は大きく変わる。その洗練度合いや作り込みの入念さは、正直なところAndroid Wearをはじめとする他のウェアラブル端末を大きく引き離しており、そこでデジタルクラウンは効果的に使われている。
『時計』アプリはその好例だ。このアプリは、画面上の適当な位置をプレスすると文字盤(フェイス)を変更できるのだが、そのひとつ「アストロノミー」では存分にデジタルクラウンを活用している。地球や月を表示しているときは、デジタルクラウンを回すと±方向へ自転させることができ、日の入り/日没や満月/新月までの日時が視覚的に表現される。表示を太陽系に切り替えると、惑星が公転するようすもわかる。他のフェイスも相当な凝りようだが、ことデジタルクラウンに関して言えば、このアストロノミーが頭1つ、2つ抜き出た印象だ。
文字盤のフェイスを「アストロノミー」に変更したところ。iPhoneと通信せず自律的に動作するネイティブWatchアプリだ
■アプリ実行環境として見た「Apple Watch OS」
Apple Watchには、システムソフトウェアとして「Apple Watch OS」が採用されている。現時点での最新バージョンは1.0、ビルド番号は12S507。母艦たるiPhoneで動作する管理用アプリ『Apple Watch』の「情報」画面で確認できる(それにしてもApple製アプリの直球すぎるネーミングは記事にするとき困る、どうにかならないものか)。
この『Apple Watch』は、Apple Watchで動作するアプリ(以下、Watchアプリ)の追加/削除や設定変更にも利用される。Apple Watchにも『設定』アプリは存在するが、明るさの調整や機内モードのオン/オフ、パスコードの登録といった基本的な設定しか扱えず、システムの更新を含めiPhoneに大きく依存している。かつてのiPhoneがパソコン(iTunes)なしでは利用できなかったように、Apple WatchもiPhoneなしではありえない。
Apple Watchのソフトウェア・アップデートはiPhone側(『Apple Watch』アプリ)で行う。Watchアプリの管理を行うのもiPhone側だ
Watchアプリ自体も、iPhoneへの依存度が高い。Watchアプリ『カメラ』を例にすると、起動するとただちにiPhoneの『カメラ』アプリを起動し、iPhone内蔵カメラが取得したイメージをApple Watchに転送する。シャッターはApple Watch側で切ることができるが、写真が記録されるのはiPhone側で、Apple WatchはiPhoneの『カメラ』アプリを遠隔操作するに過ぎない。位置情報を参照する『マップ』の道案内や『電話』で受発信する機能も、基本的なしくみは同じだ。
iPhoneとの通信を遮断すると、『マップ』などインターネット接続を前提としたWatchアプリは機能しなくなる。WatchKit Extensionで動作するアプリは、赤いiPhoneが表示され起動自体できない
この動作は、「WatchKit Extension」によって実現されている。この方式に沿って開発されたiOSアプリは、格納された機能拡張モジュールを外部(Watchアプリ)から呼び出し、連携して処理を行うことができる。iOSアプリからWatchアプリへ送信されるのは演算結果などわずかなデータであり、ボタン類や画像ではない。実際の描画はWatchアプリ側にあるリソースファイルで行うため、いちどに送受信できるデータは少ないが消費電力はわずかなBluetooth LEで足りる。WatchKit Extensionは、慎重に検討された"Watchアプリのあり方"なのだ。
もちろん、このしくみが最速・最良のアプリ実行環境というわけではない。当然、すべての処理をApple Watch上で完結できるアプリ(ネイティブWatchアプリ)のほうがパフォーマンスに優れる。これは、機能的にiPhoneに依存する必要がない『時計』や『ストップウォッチ』のキビキビとした動作からもわかるはず。
しかし、現在AppleはネイティブWatchアプリの開発をサードパーティーに認めていない。Apple Watchのパワーをフルに引き出せるネイティブWatchアプリを解放してしまうと、余裕があるとは思えないバッテリーの消費を速め、"腕時計"としての立場を揺らがしてしまいかねないからだろう。
そのような事情もあってか、Apple Watchの発売と同時に公開されたサードパーティー製アプリはいささか"紋切り型"に映る。個別製品について言及するまでもなく、「たまごっち」以外ゲームアプリが見当たらない(4月26日時点)ことからも明らかだ。
WatchKit Extensionを利用してアプリ開発を行うにしても、サードパーティーは制約が多い。フォースタッチはコンテキストメニューの表示にしか使えず、デジタルクラウンは画面を上下にスクロールするだけ。各種センサーへのアクセスや、手首を軽くたたいて通知する「タプティック・エンジン」の利用も、純正アプリだけに許された特権だ。
Appleとしては、「Apple Watch総体から得られるエクスペリエンス」を大切にするがために、Watchアプリの機能をコントロールしたいのだろう。それはそれとして理解できるが、アプリ実行環境として評価するには制約が多すぎる。つい、初代iPhone/iPod touchがサードパーティーに対しWEBアプリの開発しか認めていなかったことを思い出してしまうのだが…。
■Apple Watchの「音楽端末」としての価値は?
結論からいうと、Apple Watchの「音楽端末」としての価値はかなり高い。先行するAndroid Wearベースの端末と比較すると、新味に乏しく映るかもしれないが、Apple WatchにはiTunesとiTunes Storeが背後にある。その点を踏まえれば、見え方が変わってくるはずだ。
標準装備のアプリ『ミュージック』は、iPhoneに貯えたサウンドライブラリを再生できるだけでなく、最大2GBの楽曲データをApple Watch側に持つことができる。Bluetooth/A2DPの送り出し側としての機能を持つため、Bluetooth対応ヘッドホンまたはBluetoothスピーカーを用意すれば、自律的に動作するデジタルオーディオプレイヤーとなるのだ。
Apple Watchの『ミュージック』。iPhone上の音楽だけでなく、Apple Watch上にも音楽を取り込み再生することができる
実際にBluetoothスピーカー「Klipsch GiG」で試したところ、iPhoneと大きく変わらない手順で音楽を再生できた。利用されるコーデックがSBCかAACかは確認できなかったが、iPhoneと聴き比べても遜色はない。2GBといえばアルバム数枚を収めるにはじゅうぶん、初期のiPod nanoやiPod shuffleを上回る容量だ。
iPhone上にあるプレイリストと同期すれば、Apple Watchに曲が転送される(充電時のみ実行)。上限の2GBを多いと見るか少ないと見るか?
『ミュージック』の画面上をフォースタッチすると、再生ソースを選択できる。Apple Watchを選択すると、出力先のBluetoothデバイスを選択させられる(Bluetooth出力も「AirPlay」と呼ばれるようだ)
リモコンアプリ『Remote』も収録されている。パソコン側でiTunesを起動しておけば(iTunesライブラリを公開する設定も必要)、Apple Watch側から再生/停止を指示できる。出力先とするスピーカーも指定できるので、機能的にはiOS版『Remote』と大差ない。
ただし、Watchアプリ版『Remote』はiPhoneが必須。iTunesライブラリ(パソコン)にはApple Watchから直接アクセスできず、iPhoneのWi-Fiをオフにしていると動作しない。前述したWatchKit Extensionではなくネイティブアプリらしく、iPhone側に『Remote』アプリがなくても動作するが、『カレンダー』や『マップ』などハンドオフ(OS X Yosemiteからサポートされたアプリ間連携機能)がOS Xと直接やり取りできることからすると不思議な仕様だ。
パソコン上のiTunesライブラリにアクセスし、再生などを指示できる『Remote』も付属する。ただし、直接パソコンとは連携できず、iPhoneを介さなければならない
Apple WatchはiPhoneだけでなく、同じApple IDでサインインしたMacとも連携して利用できる
このデバイスは、既存のカテゴリで括られるよりも新しいカテゴリ、もしくは「Apple Watch」という固有名詞で語られたほうが適正に評価できる、ということだ。
その理由は、「腕時計」とするにはあまりに多機能で、しかも近い将来に実現可能なレベルで拡張が可能なこと。たとえば、付属の『ワークアウト』はランニング中に心拍数を測定できるが、一定の心拍数レベル(ex.110~140BPM)を外れたことを知らせる機能がない。しかし、外部開発者の層の厚さを誇るApple製品のこと、センサー制御を可能にするフレームワークを開放すれば、たちどころにその手のアプリが登場することだろう。
実のところ、「腕時計」という名前に囚われているのはAppleかもしれない。もちろん質感は高いほうがいいが、数百万円というプライスタグはやり過ぎの感が否めず、後方互換性やらなにやらで自縄自縛に陥りかねない(さすがに百万超えの製品を1~2年で陳腐化させることはないと思いたい)。
旧い仕様を遠慮なく切り捨てできることがAppleの強みだが、Apple Watchはそれができるだろうか? 腕時計やウェアラブルといったカテゴライズは気に留めず、我が道を行ってほしいというのがオーナーとしての願いだ。