9月中旬にカシオ計算機から発売される腕時計“G-SHOCK”シリーズのニューモデル「GBA-400」
■音楽機能を強化したスマートなG-SHOCK
カシオではBluetoothでスマホと連携して、電話の着信やメール受信を知らせたり、スマホに保存した音楽を再生できるプレーヤー機能を搭載した、言わばスマートウォッチ版“G-SHOCK”シリーズを展開している。ランニングメーターなどフィットネス系の機能を充実させたスポーツウォッチタイプの“PHYS(フィズ)”シリーズにもスマホと連携する「STB-1000」がある。
今回G-SHOCKのラインナップに新しく加わる「GBA-400」は、音楽を楽しむための機能を充実させた点が大きな特徴。メーカー純正の音楽アプリ「G'MIX App」により、多種イコライザー機能を駆使したライブ感豊かな音楽再生が楽しめるほか、周りで流れている音楽の情報をアプリで検索できる。これらの機能をスマホに触れることなく、腕時計のボタンで直接操作できるのが魅力だ。アプリはiOS版とAndroid版の両方が提供されるが、連携機能の動作が確認されている端末がキャリアごとに異なっているので、最新状況は製品の特設サイトで確認して欲しい。
カシオオリジナルの音楽アプリ「G'MIX App」が提供される
極小のバッテリー消費で動作する無線通信規格の「Bluetooth Low Energy」に対応したことで、スマートフォンとの連携による「モバイルリンク機能」を2時間/日使用した場合でも、約2年のバッテリー寿命を実現している。
本体はG-SHOCKシリーズならではの耐衝撃構造。海やプールでも身につけたまま使える20気圧防水機能を装備。ルックスはいかにも“男もの”な感じだが、本体はスマートウォッチの割には軽量だし、レッドやブラック×ゴールドのカラバリなら女性が身につけるのもアリだと思う。時刻表示はデジタルと針によるアナログ表示を両方搭載。筆者としては針の表示が少し見づらく感じたので、実際に使うとしたら正確な時刻の把握はデジタル表示がメインになると思う。
強い磁気や衝撃を受けると針の時刻とデジタル表示の時刻がずれることもある。そんな時にはアプリから針のずれも補正できる
■カシオオリジナルの音楽プレーヤーアプリ「G'MIX App」
それでは、音楽まわりの機能をチェックしていこう。今回は「GBA-400」本体と、公開前のアプリ「G'MIX」をインストールしたiPhone 5sをカシオ計算機からお借りしてテストを行った。
まずは時計とスマホをペアリングするために必要な基本アプリ「G-SHOCK+」をスマホにインストール。時計の本体側面にある「Bボタン」を押すと、ペアリング時に使用するコントロールモードのON/OFFが切り替えられる。
時計とスマホのペアリングや各種機能の設定に使う基本アプリ「G-SHOCK+」もインストールする
左側面の「Bボタン」を0.5秒押すとコントロールモードのON/OFFが切り替わる。その下にある「Cボタン=MODE」を押して7つのモードをスイッチする
音楽アプリ「G'MIX App」は、プレーヤー画面の中央に再生中楽曲のカバーアートを表示。丸窓の周囲をアイコンが移動しながら現在の再生位置を時間軸で表示する。ボタンのアイコンなど時計本体のデザインとマッチングさせたデザインがG-SHOCKファンの期待にしっかりと応えている。
「G-SHOCK+」のミュージックApp設定。「G'MIX App」のほかにも、iOS/Androidともにプリインされている「ミュージック」アプリと連携ができる
スマホ本体に保存した楽曲はプレイリスト/アルバム/楽曲/アーティストの基準で並べ替えて表示できる
画面の左側をタップすると、アプリが搭載する「3つの音もの機能」を切り替えられるスイッチャーの画面に遷移。右側をタップするとイコライザーのリストが表れる。下側の音符アイコンをタップすると、スマホの本体に保存されている楽曲リストが立ち上がる。
3つの音もの機能のセレクター画面
音楽コントロール機能のボタン設定の解説
再生スピードコントロールの機能も設ける
オリジナルのイコライザー機能を使って音質のカスタマイズが行える。イコライザーは14種類のプリセットと、ライブ感を高める6種類の音場設定を用意。イコライザーと音場設定を一つずつ選んで掛け合わせてもよい。
アプリのイコライザープリセット。14種類のイコライザーとライブ感を高める6種類の音場設定が選択できる
さらに画面上部の「カスタム」タブでは、グラフ上の座標軸をタッチ操作しながらより細かく好みの音質に追い込めるUIを用意。設定した値は5つまでのユーザープリセットとして保存ができる。
音場設定は「インドア」「オープンエア」の2種類を設けて、それぞれライブ感の強弱が調整できる機能がユニークだ。設定次第で音楽の表情がダイナミックに変化する。イコライザー機能だけでもかなり遊べるだろう。
音楽再生のコントロールは時計本体のボタンを使ってスマホに触ることなく行える。本体左下のモードボタンが楽曲の再生・停止ボタンに割り当てられているほか、右側面のロータリースイッチを回してボリュームやイコライザーが設定できる。
ロータリースイッチに割り当てられる機能はそれぞれON/OFFが設定できる
■音楽検索機能はどれほど“使える”のか?
もう一つ「G'MIX App」の大きなハイライトになる機能が音楽検索だ。周囲に流れている音楽をスマホのマイクで拾い、データベースから該当する楽曲情報を自動で取得するという機能。時計から音楽検索を起動させる連携操作にも対応した。音楽検索システムには「SoundHound」が採用されている。
音楽検索機能を使う際は、iOSの場合「設定」>「プライバシー」>「マイク」から「G'MIX」をONにする
検索機能を使う前にはスマホのマイク入力をONにして、インターネットに接続しておく。音楽検索は「G'MIX App」アプリをマルチタスクのバックグラウンドで起動させている状態や、スマホをスリープさせた状態でも利用できる。時計からの操作は、気になる楽曲が流れている時に本体左上の「Aボタン=ADJUST」を押すとすぐに検索が起動する。
左側面上の「Aボタン」を押すと音楽検索が立ち上がる
まずは静かな自宅室内でiPhoneを音源に近接させた状態で試してみた。歌つきの楽曲では、前奏の時点で検索を始めてしまうとやや精度が落ちるなど起動のタイミングに左右されることもあったが、概ね10~15秒ぐらいで意中の検索結果がヒットした。
楽曲の候補が見つかると結果一覧に表示。「BUY」をタップするとAmazonのミュージックストアに飛んで楽曲が購入できる
クラシックの楽曲は演奏者などの情報で誤差が生じることもあるが、曲名を調べるだけなら十分に正しい結果が得られる。一方、ラジオ番組で楽曲にDJのトークが被ってくるような場合は検索に失敗して「*FAILED」と表示されてしまうことが増える。
アプリの画面には曲名とアルバム、アーティスト名が表示されるほか、Amazonのミュージックストアで取り扱いのある曲はストアへのリンクボタンも表れる。
見つかった楽曲は「ヒストリー」の履歴にアーカイブされていくので、過去の検索履歴を辿ることもできる。時計側のディスプレイに表示されるのは曲名までで、文字も17文字までのアルファベットと数字・記号、5文字までのカタカナに制限されている。
時計の側にもヒットしたタイトル名が表示されている。なお、時計のディスプレイに表示できない文字が曲名に含まれている場合、または複数の曲名とイッチした場合は「*CHECK App」が表示され、アプリの画面で確認することを促してくる。曲名がヒットしなかった場合には「*FAILED」が表示される
街中でもドトールコーヒーの店内BGMで検索機能をチェックしてみたところ、ここでもかなり高い精度で良好な検索結果が表示された。周囲がある程度会話などでざわついていても、元音源のボリュームがある程度確保されていれば検索のレスポンスや精度に大きな影響が無かった。
音楽検索アプリ「Shazam」と精度を比べてみたが、店内BGMでの対決は互いに譲ることなく正確な楽曲情報を検出。両者の差は「G'MIX App」が“鼻歌”でも検索ができるという点に表れた。
■UIも好感触な“音楽系スマートウォッチ”
ほかにも、音ものとして3つめの機能になる「サウンダー」では、本体に内蔵されているサウンドを時計のボタン操作でスマホから鳴らすことができる。
また、音もの以外にもワールドタイムの都市設定、アラーム時刻やタイマーの設定など、日常生活に役立つ時計の各種設定がスマホから行える。アプリ上で行った設定変更はBluetooth経由で時計に送信され、素速く反映される。Bluetooth接続を活かしたスマホ探索機能は、時計のボタン操作でスマホの音を出して、目の前に見当たらず行方不明になっているスマホの在処を探索するのに便利だ。
音楽系の連携機能が本機にとって最大の見どころではあるものの、シンプルでレスポンスの良いユーザーインターフェースを搭載している点などトータルでバランスの良い完成度を実現した製品だと実感した。定価が税抜で23,000円と、G-SHOCKシリーズの中ではスタンダードクラスの位置付けながら満足度の高い“音楽系スマートウォッチ”だと言えそうだ。