6万円台で買えるハイレゾポータブルプレーヤー 注目モデル一斉テスト♪
●AK Jr|カッチリクリア系
●PAW5000|柔らかな空気感
●X5 2nd|通常のプレーヤーレベル
…といった感じだ。そして方向性については「好み次第」としか言いようがないので、自分に合うものはどれか?ということで検討してみてほしい。
▼AK Jrの音質
やや硬質でクリアな音調。いわゆるクール系のモニターサウンドを想像してもらえれば方向性としてはそれに近いはずだ。つまりAKのハイエンドモデルの音調との違和感は少ない。
しかしシビアなモニター系サウンドに追い込んではおらず、もう少しわかりやすい「好い音」に寄せてある。具体的には高域のカチッと感と低域のボリューム感をちょい乗せしてある感じだ。AK120IIをクール系スレンダーお姉さんとすると、Ak Jrはその妹で顔立ちの基本路線は同系統なんだけれどちょっとかわいい系に寄っていて服装が明るくて肉感はちょっとだけぷにっとした印象。…いやこの表現だと「じゃあJrたんの方が完全に上じゃねーか!」って人もいそうだが。
相対性理論「たまたまニュータウン (2DK session)」冒頭のバスドラムとハイハットシンバルだけの場面でそこのところが特にわかりやすい。バスドラムの太さや密度感がしっかりとしており、大きなリズムがドンと安定感している。ハイハットの刻みは音色の芯が明確で細かなリズムのニュアンスもはっきり届いてくる。
次に入ってくるベースがグイッと押し出されつつボワンと膨らんではいないこともポイントだ。リスニングに寄せてはいるが基本の土台はモニターサウンド。AKシリーズを名乗るからにはそこを破綻させてはいない。
やくしまるえつこさんのボーカルもやはりやや硬質のクール系。もちろんAK120IIのような超上質なシャープさとまでは言えないが、十分に上質なシャープさだ。この価格差とサイズ差にしてと考えれば納得だろう。
相性のよさを感じた曲としては坂本真綾 コーネリアス「あなたを保つもの」とTECHNOBOYS P.G.「SHaVaDaVa in AMAZING♪(OUT OF LOGIC)」を挙げておきたい。曲調は異なるがどちらも、電子音を巧みに配置した空間の構築美が持ち味というのは共通点。AK Jrはそのカチッと感でそこをクリアに再現してくれる。後者ではベースのグイッした重みや力感もポイント。
使いこなし的な話をすると、AK Jr側で低域の量感を稼げることを生かしてスッキリ系のイヤホンと組み合わせるとうまくいきやすい印象だ。FitEar「fitear」やaudio-technica「ATH-IM02」は実際に試して好印象だった。
▼PAW5000の音質
柔らかで暖かな空気感。しかも「どちらかといえば」レベルではなく完全に明確にそちらに寄せてある音作りだ。「毎日ずっと聴いてもらいたいので聴きやすさ聴き疲れなさを重視した」とのことなので、その設計意図に忠実な音と言えるだろう。AKがシリーズとしての音の方向性を打ち出しているのに対して、こちらはPAWGoldとは全く異なる方向性にしてきたのも面白い。ここまで振り切った音作りでそれが成功している例も珍しいので、僕としても「これも…ありだな!」と思わされる。
なおこのモデルは「DAMP」スイッチの切り替えでの音の変化が大きい。詳しくは後述するが、DAMP Hだと「柔らかで暖かな空気感で湿度60%のしっとりとした濃さ」、DAMP Lだと「柔らかで暖かな空気感で湿度40%のすっきりとした抜け」みたいなイメージだ。試聴の機会があればDAMP切替も忘れずに試してみてほしい。ここでは僕の好みに合わせて「DAMP L」での印象を主に述べる。
相対性理論「たまたまニュータウン (2DK session)」冒頭のバスドラムはとにかく空気感や音抜けが見事だ。タイトとかソリッドとか対極の感触でありつつ、しかし緩くぼわんと広がるわけでもない。太鼓類としての生感の強い響きだ。
全体としても空気感の印象が強い。AK Jrは背景を無色に近付けようという方向性だが、PAW5000は背景の粒子感というのか、背景にまで手触りを出している感じだ。それでいて背景が音の響きを邪魔することはなく、響きもむしろ豊かに感じ取れる。
ハイハットシンバル等、高域側の細かな音はその芯や輪郭を強くは打ち出さず、よい具合にほぐすタイプ。シャープな描写にこだわらず、ナチュラルで聴きやすい感触にしてある。この点がやくしまるえつこさんのボーカルとの相性を抜群に高めており、ふわっふわだけれどぼやけてはいないという絶妙な表現だ。
ということで他に相性のよい曲としては花澤香菜さん「こきゅうとす」を挙げるしかない。天使であるところの花澤さんのその天使感がさらに高まる。クール系のプレーヤーで再生すると「冬の午前に降り立った天使」のような印象だが、PAW5000だと「春の午後に降り立った天使」といった感じ。どちらもよいのだが今回は後者の新鮮さにやられてしまった。
また空間表現という意味でも、エレクトロな感じの曲よりはこういったナチュラルな空気感の曲の方によりフィットする。
▼X5 2nd gen.の音質
AK JrやPAW5000と比べて際立った個性というのは感じさせない。
音質面においての実際の役割はさておき、印象としては「DAC部分の精密感+アンプ部分の力強さ=全面対応!」みたいな感じだ。
X5 2ndは先代X5からの小型化は実現しているがAK JrやPAW5000ほど攻めた小型化はしていない。
すっきりとした解像感とすっとしたアタック感は、描き出せていない。
無難でとくべつよいものではなくて良ければこれでよいだろう。