【Cambridge Audio】
■192kHz/24bit対応のDACチップ「ES9023」を搭載
DACチップにはESSテクノロジーの「ES9023」が搭載されている。USB2.0接続時はアシンクロナス転送で再生。ハイレゾ入力はPCMで最大192kHz/24bitまでサポートする。最大出力は150mWのハイパワーを確保しているので、様々なヘッドホン・イヤホンで満足なパフォーマンスが得られるはずだ。
なお、同じマイクロサイズのDAC内蔵ポタアンとしてはAudioQuestのDragonfly v.1.2も同じ150mWの最大出力を備え、ESS「ES9023」をDACチップに採用しているが、DacMagic XSは192kHz/24bitまでの入力信号に対応している点がスペック的なアドバンテージだ。
PCとの接続については、Mac OS 10.6以降はドライバー不要。Windows XP以降の場合は専用ドライバーをケンブリッジ・オーディオのサイトからダウンロードするかたちになる。なおiPhone/iPad、Android端末と直結し、USBオーディオ再生が行えるかも試してみたが、本機は対応していないようだ。
豊かな音楽性とエネルギッシュなサウンド!
いくつかのハイレゾ音源と、CDからリッピングした音源を使ってDacMagic XSを試聴してみた。再生機にはMacBook Air/Audirvana Plusを、ヘッドホンにはソニーのMDR-R1を組み合わせた。
◆Madonna La Isla Bonita/True Blue(192kHz/24bit・FLAC)
1980年代後半の元気なアメリカン・ポップスを代表するマドンナのヒット作。メリハリの効いたシャープなパーカッションとタイトなベースにシンセサイザーやコーラスが分厚く重なるゴージャスな演奏が、マドンナのジューシーなボーカルをいっそう引き立たせる。解像感の高さだけでなく音楽性も兼ね備えた、煌びやかで上品なサウンドを楽しむことができた。
◆Waltz for Debiie/Milestones<Bill Evans Trio>(192kHz/24bit・AIFF)
ウッドベースの低域は足腰がどっしりしていて量感も豊かなのに、スピード感や躍動感までも非常にハイレベルだ。今回の試聴でDacMagic XSの効果とインパクトを最も強く受けた曲だった。ドラムスのシンバルやハイハットは倍音成分をたっぷりと濃厚に再現。S/Nが良いのでピアノの細かい打鍵のタッチまでが艶めかしく聴こえてくる。クールな演奏なのに熱く情熱的なグルーブが体に染み渡るような不思議な感覚を覚えた。
◆Kuniko Plays Reich/Electric Counterpoint Version for Percussions<加藤訓子>(192kHz/24bit・FLAC)
中高域はクリアさやキレの良さだけでなく、ふんわりと優しく包み込むように芳醇な響きを備えている。スチールパンの音色は金属の弾力が伝わってくるほどリアルで濃密。情報量がとにかく豊富なので、すべての楽器の音色が濃厚で鮮度も高い。音場は縦軸・横軸ともによく広がり、解像感も高く立体的な空間表現を味わえる。
◆Eyes On Me<フェイ・ウォン>(CDリッピング/ALAC)
CDからリッピングした44.1kHz/16bitの音源もチェックした。ストリングスを加えた大編成のバンド演奏をバックにフェイ・ウォンが歌い上げる壮大なスケールのバラード曲。ストリングスの抑揚は表情が豊かで、旋律は余韻の消え際まで伸びやかに美しく再現される。広大な空間に展開される楽器のハーモニーは開放感に溢れていながら細部までよく見渡せる。パーカッションやギターの細かな音も響きが損われることなく、しっかりと楽器の音が鳴っている。滲みがなく鮮度の高いボーカルが、広々とした音場の中にキリッと浮かび上がる。女性的な柔らかくてしっとりとした声の質感も心地良い。
■USBケーブルを交換してみた
DacMagic XSはPCとmicroUSBケーブルを介して接続するポタアンなので、ケーブル交換で音の違いが楽しめるのではないかと考えた。そこでオーディオグレードを謳うmicroUSBケーブルを探してみたのだが、実はまだ非常に数が少なく、見つけるのに意外と苦労した。今後音質にも注力したAndroid系のスマートフォンやタブレットがもっと出てくれば、製品カテゴリーとしてさらに成長していくだろうと期待している
ようやく探し当てたのが、現在オンキヨーが取り扱っているモンスターケーブルのmicroUSBケーブル「DLUSBHSMI」だ。
一般的なUSB2.0はデータ転送が理論値で最大480Mbpsとなるが、本製品では約1.5倍のデータ帯域幅を実現し、理論値で最大800Mbpsのデータ伝送速度を実現している。またノイズの干渉や伝送データの劣化を防ぐため、本体には高密度の2層シールド構造が採用されている。本体の長さは45cmと、DacMagic XS同梱のケーブルよりも少し長めだ。
モンスターケーブルで聴いたサウンドは、付属のケーブルよりもやや硬質でカッチリとしている。演奏の空気感がキリッと引き締まって、フォーカスがより明瞭な印象だ。ビル・エヴァンスでは、付属のケーブルで聴いた際には少し暴れ気味に思えたピアノのタッチが落ち着いて、旋律の安定感が高まるように感じた。ドラムのアタック感はモンスターの方がよりタイトでビシッと決まる。
比べて聴いてみると、反対に付属ケーブルの方は音像がわずかにソフトなぶん、よりふくよかで伸びやかなボーカルや弦楽器の響きを楽しめる点が魅力だ。だからといって輪郭が曖昧なわけではなく、例えばフェイ・ウォンの場合では、よりキュートで艶やかな声の特長がぐっと引き立ってくるイメージだ。やはりケーブル交換による効果は多分にありそうだ。
原音に忠実でありながら、音楽的な表現力の豊かさを兼ね備えている点は他のDacMagicシリーズと共通しているキャラクターだ。小柄なのにしっかりとしたドライブ力も備えているので、低音の力不足を感じることはない。筆者はふだんロックやポップス系の音楽ばかり聴いているので、エネルギッシュな本機のサウンドに満足している。ケーブル交換の確かな効果も実感することができた。今回はモンスターケーブルのケーブルでしか試せなかったが、オーディオグレードのmicroUSBケーブルが増えてきたら、ほかのケーブルの効果も試してみたいと思う。