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幻想小説周辺の 覚書

写真付きで日記や趣味を書く

読書レビュー 天童洗太

2022-07-27 22:45:51 | 映画レビュー
ムーンナイト・ダイバー   天童荒 243頁
 を読みました(ーωー)132  ★★★

なかなか評価が難しい作品になってしまっているな。という感想が
第一に浮かんできました。
津波や原発の災害への喪失に対するアプローチとしてダイビングでの
遺品収集が主人公や登場人物が想い入れているほどには僕には必然性が
響いてこないところにどうも原因があるようです。

物語性という観点で見てしまえば遺品を求めて月夜の海にダイビングする
というシーンはそれだけで美しく、かつドラマチックで惹かれる設定です。 
ですが、その素晴らしい舞台に対して登場し役を演じ、想いを告げなければ
ならない人物たちは、もっともっと濃く、強烈である必要があるのでは
ないでしょうか?


地震に関連して何作ものルポルタージュや写真、或いは漫画やドラマ
といった創作物を読ませていただきましたが、玉石混交のそれらの作品の
中で、胸を打つ作品に共通しているものは、日常の安寧さを揺り動かすような
ナニモノカであるような気がします。
いたづらにセンセーショナルなものやお涙頂戴劇でなくても、
魂の深海を冷たい潮流でなであげるような、
静かではあっても強い波動を持つもの。。。

なにかこの物語を通じて、別の物語を自分では読んでしまっていて、
その存在していない物語に深く感動している。。。
それは海の底で超自然な救済が現れSF的な結末を持つ物語であったり
遺された人々が愛憎に翻弄されつつも激しく出会ったり別れたりする
人間ドラマであったりするのかもしれません。

むしろ震災というものに対する表現の形式とすると具体的なストーリーを
綴らねばならない小説というものは結構不利で、文章であれば詩や歌詞、
絵画や彫刻、といった抽象性を許容しながら深く人間の感情をノックする
芸術形態のほうが適しているのではないか?
そんな考察さえ想起するような読書体験でした。   

怪談 西瓜

2022-07-27 22:30:37 | 映画レビュー
今日は7月27日、何故かすいかの日だそうです。丁度日本中が暑さで湯立ってる状況でピッタリの記念日ですね。
そこでわたくしからは西瓜にまつわる恐い話のプレゼント。
語られると恐い話  監修、赤木かん子
西瓜 岡本綺堂が収録されてます。 
時は江戸時代、夜中に使いに出された女の人、風呂敷の中身は冷やしたまるごとの西瓜。。。。。さて行く先で相手に使いの風呂敷をほどいて見せると、中に包んでいたのは罪人の生首でした。。。。。さあこの先は?何故生首が?
続きを思い巡らしながら味わう今宵の西瓜は、怖さの調味料でより一層美味しく感じられることでしょう🎵








映画レビュー イットフォローズ

2022-07-27 12:13:00 | 映画レビュー
Amazonprime 映画レビュー 
『イット・フォローズ』(原題: It Follows)

2014年のアメリカのホラー映画。
監督脚本  デヴィッド・ロバート・ミッチェル、
主演 マイカ・モンロー
音楽 ディザスターピース

冒頭アバンタイトルが良くできている。一軒家から飛び出してくる少女、何かにおびえてる、
何かから逃げるように車に乗り込む、近くに父親がいるが娘が何から逃げているのか見えていない。
逃げて浜辺で独り母親に泣きながら電話をかけている少女。暗転。
翌朝浜辺で少女が両脚を逆折れで砕け千切れた目も当てられない惨殺死体に変わり果てた少女。--タイトルーーIt Follows----






場面は変わり、主人公の女子大生ジェイ(マイカ・モンロー)は、最近付き合い始めたヒュー(ジェイク・ウィアリー)とデートを重ねている。伏線だが、デート中のヒューの態度やたわいもない遊びがちょっとぎこちなかったり、妙なところが観客には示されてるのだが、恋してるジェイには気が付かない。
映画館のドアのところに黄色い服の男がいる、とヒューが誰もいない空間を示してここから出よう、と映画を出てしまう。。。

車にジェイをのせ、あわただしく郊外へ走るヒュー。そしてジェイは車の中で待望の初セックスをする。
セックスのあと幸福感にひたるジェイ、だが背後からヒューが薬の布を彼女に押し付け眠らされてしまう。

廃墟で目覚めたジェイは下着姿で車椅子に縛りつけられている。監禁エロ映画か!と慌てる私(苦笑)
勝手にとんでもないことを説明し始める腐れオトコ・ヒュー。
「申し訳ない さっきオレは君とセックスをした。君が好きだからじゃなくて、必要だったからだ。
 そのセックスによって君に、”IT 以下 それ” がオレから君に乗り移った。
 ”それ”の呪いに君は憑かれた。悪いとは思ってるが、生き延びてくれ・・・・・・ 」 
どェ”~~っ!!何言っているか、わかんないんですけど!!

「これから君は、人間の姿をした”それ”に追いかけられる。
 だけど”それ”は呪いに憑かれている君にしか見ることができない。
 ”それ”に捕まったら殺されるから、絶対捕まるな。
 ”それ”は歩いて追いかけてくるから走れば逃げられる、でも知能はあるから撒くことはできない。」
「”それ”は、憑かれた者をつかまえて殺すと、今度は、その前に呪いに憑かれていた者を追いかける。
 オレのところに”それ”が来るんだ。だから君は逃げながら、だれか新しい相手に”それ”を移してくれ。
 そうすればオレが助かるんだ。
がんばれ、頼んだぞ 」
なんつう言い草、なんつう自己中クソ男だ(観客怒)

そして現れた”それ”(浜で死んだ女の姿してる、顔が死んでる)がジェイを追いかけ始める。
車で逃げるヒューとジェイ。”それ”は歩いてくるだけなので追いつけない。
でも顔が怖いょう・・・絶対こんなのに捕まりたくないわ。
ヒューはジェイを車で彼女の家の前に放り出して、行方をくらます。

このセックス版”リング”とでも言うべき呪いの設定が、もう最低で最高におっかない。
呪いはセックスで伝染せるが、でも、相手が殺されたら自分のところへ戻ってくる。
愛情で大事なセックスだけど、好きな人とは出来ないし、呪われてしまうというジレンマ。
呪いの設定はシンプルで把握できるけど、”それ”が結局ナンなのかは最後までわかんない。








映画はここから、ひたすらジェイの、”それ”からの逃避行鬼ごっこ、が続く。
学校に、家に、街中に、唐突に現れる”それ” 一見人間の姿してるので遠目にはわかりづらいが、”それ”は顔色が死人のものだったり、街中なのに下着姿だったりずぶぬれだったり はだしだったり 縮尺が狂ったような大男だったりするので近づくとわかるのだ。
だいたい主人公が逃げた先で、ほっと一息ついたり、うとうとしてると、そのたびに異形の姿で現れる。実に主人公にも観客にも心臓に悪い。
ゾンビとかモンスターじゃなくて見た目人間だけどニンゲンじゃないナニカに延々と追っかけまわされる映画、音響もめっちゃ怖いので、映画館でリバイバルで見るか、自宅で独りで夜中にヘッドホンして暗い中で見るのがオススメです。

It Follows 邦訳は 僕的には 「追っかけてくる。」よりは
「付いてくる。。憑いてくる。。」 こっちを採用したいと思いますがいかがだろうか?

読書レビュー 又吉直樹 劇場

2022-07-25 20:52:57 | 映画レビュー
「劇場」 又吉直樹   208頁

面倒くさい男である
まだるっこしい男である
主人公の劇団の脚本書きの永田:又吉は奇跡の様に付き合えることになった恋人の沙希がディズニーランドに行きたいという要望にこんなセリフを吐くのだ

「おれは自分で創作する側の人間やからディズニーランドで
好きな人が楽しんでるのを見るのは耐えられへんねん」
「どういうこと?」
「他の劇団の公演を女と一緒に行った劇作家が、自分の好きな女が自分じゃない外のやつの書いた劇に感動してるのを見て、幸せだな・と思ってたらアホやろ?」

この視点は凄い、と思ったさすがに又吉だ、
嫉妬する相手がウオルトディズニーでディズニーランドとは
彼に書かれて男とかクリエイターはこんな気持ちやこんな目で確かに世界を見ていることがあるのだ、と気づかされた

男達はみな こんな風な道を通ってきている
この永田:又吉が好きか、嫌いかという仕訳は自分という存在の中の又吉成分が好きか、嫌いかを問うことでもありあまり意味を成さないのだと思う
むしろ許せるか、許せないかという問いの方がこの本を読む際は有効かもしれない

クリエイターの道だけではない、あるものは世界最強を目指し、あるものは大金持ちを目指し、あるものは文部科学省次官を目指すのである
男子だけではなく女子もそうなのかもしれないが男子の方がより、この業は深いように思える

又吉の書く小説は純文学と言われているが文芸という方が僕にはしっくりきた
物語の盛り上がりや、読後の思索の深さよりも彼が創作に求めているのは、前に引用したように文章で切り取った彼の目線で見た世界の捉え方のような気がする。

「おれはこんな風にしか世界を見ることがでけへんねん。
じぶんでもメンドクサイことわかってるけど、こんな生き方しかでけん  この物の見方こそがおれの製作物の根源なんや、表現なんや 」と

本当にめんどくさい、愛すべき男である




読書レビュー ガラパゴス 相場英雄

2022-07-24 21:25:12 | 映画レビュー
ガラパゴス上 相場英雄 を読む!!ヽ(゚д゚ヽ)130
★★★★ 270頁
読書の醍醐味のひとつに、
自分が今まで知らなくて、知るべきだった情報がどんどんと
ダムの放流のように自分に雪崩れ込んで来るような興奮というか
アドレナリンが暴走する感覚を味わう、というものがあります。

この本は刑事モノです。
自殺とされて処理されていた一人の身元不明者が、巧妙に偽造した
殺人事件の被害者であることを見抜いたベテラン刑事が企業ぐるみ
の暗幕に迫ってゆくというストーリーです。
ですが読者に詰め寄るこの本の核は、事件の真相に迫るうちに
明らかになるってゆく派遣業界に依存する現代社会の闇にあります。

経済が不景気であろうが好景気であろうが、効率化の名のもとに
雇用形態の底辺として 使い捨てられ 搾取されていく 派遣の人達。
その立場になってしまえば破格の低賃金と過酷な労働条件を強いられ
正社員への道は絶望的に狭く、病気や職場での労災で怪我を負っても
補償されることはおろか雇用自体も簡単に雇い止めされてしまう。
綱渡りのような月々は不安とストレスの連続で貯金も結婚も
思い描くことさえできません。

そして少なくない人数が綱から一度落ちれば更にホームレスや生活困窮者に
転落してしまいます。そこから這い上がることは更にできません。

小説ということで多少の誇張があったとしても事実と実態の持つ重みは
読者にじわじわと詰め寄ります。
いつからか、いつのまにか僕らが育ち、学校を出て就職してきた世界とは
全く変質してしまった世界。ホラーよりも異常殺人よりも怖いです。
この世界はどうしてしまったのでしょうか?
救われる道は下巻では示されるのでしょうか?。。。(/≧◇≦\) 
残念ながら下巻の予約の順番が巡ってくるのは少し先のようです。