先日SNSを見ていたら、
「個人の着付け教室の開業に資格は必要?」
というショート動画が流れてきました。
この教室の先生は、
「個人教室開業に資格は要らない、自分のやりたいようにカリキュラムを組んで、自分が『これがいい』と思うやり方を教えていけばいいんです。こう考えると教室を開くことへのハードルは結構下がりますよね、あなたにも出来ますよ」
的な内容でした。
確かに、着付け講師や着付け師という仕事は、医師や看護師などと違って資格がないのにその職務を請負ってはいけないということはありません。
着付けにも厚生労働省認定の国家資格は出来ていますが、こちらが出来たのは比較的最近のことですし、これまた、こちらの資格が無ければ仕事ができないというものでもありません。無資格で着付けを教えていらっしゃる着付け講師、着付け師と名乗られる方も少なからずいらっしゃるのは事実ですし、前述の通り違法なことでもありません。
ですが、
「人さまに着物を着せてお金を頂戴する、着付け師」
を名乗る方を育てる先生は、やはりそれ相応の着付けの資格を持っている方、或いは着せ付けの現場でお仕事をしていらっしゃる方にして欲しいです。
なぜでしょうか?
今、お金を払って着付け師に着付けを頼むようなシチュエーションは「礼装や準礼装」の場が多いです。
勿論お遊び着として浴衣などの着せ付けを頼まれることもありますが、どちらにおいてもお客様が期待されることは、
「綺麗に、着崩れないように、また今風に着せて欲しい」
という状況になるかと思います。取り敢えず
「着物を着ている、という体裁を整えてくださればいい」
と思われる方は少ないと思います。
そして、礼装、準礼装や写真撮影の為の、お皺が無く、左右対象ですっきりとした綺麗な着せ付け方というのはかなりレベルの高い技術ですので、自己流だけで成立させることは難しいと思われます。そしてそれらの技術を修得するには、それなりの訓練や知識が必要です。
その技術が無い、「先生」と名乗られる方からいくらマンツーマンで教わろうが、長時間教わろうが、その生徒さんは現場で通用するような着せ付けができるようになることは難しいでしょう。
単に自分が着物を着られるようになりたいとか、コーディネートが分かるようになりたいと思うなら着付けの本を見たりYouTubeを見たり、着物好きな方や先生から教わったりして自分の責任において自由に着たら良いと思います。しかしながら、もしも自分が将来お金を頂戴出来るような、仕事として通用する着付け師になりたいと思うのであれば、教わる教室が自分やお仲間が着物を着たり、身内に着せたりして楽しむレベルの教室なのか、それとも実際に着せ付けの現場に日常的に仕事として入られている先生が教えていらっしゃるプロレベルの教室なのかを調べる必要があるかもしれません。
私自身長年この仕事に携わりながら、人さまにものを教えてお金を頂戴するということの大変さ、またお金を頂戴できるレベルの人材に教育していくということの難しさ、それに伴う責任の重大さを感じているところです。
川口着付個人教室
http://www.wbcs.nir.jp/~yoko