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着付けの気づき

着付けの個人教室を行っている先生が、着付や着物に対するこだわりの思いを中心に語ります。

着付けに興味を持ってもらうためには

2025-05-04 14:20:11 | 着付け

今年も4月から某美容学校の選択授業である「和装技術」の講師としての勤務が始まりました。

こちらの学校でお世話になるのも4年目となります。

美容師さんのお仕事は、

「シャンプー、カット、パーマ、カラーリング、ヘアセットメイク、ネイル、エステ、マツエク…」

と、本当に多岐にわたり、それらの全てが専門性の高い技術習得が必須となるので、学生たちは本当に大変な訓練が続いていくのだなぁ、と想像します。

美容師の国家資格を取るのには技術試験と筆記試験がありますが、技術試験ではそれらの分野全てが出されるわけではないので学校では必要最低限の単位を取り、試験に出るところを絞って徹底的に学べば美容師免許を取得することができるかもしれません(それも相当大変なことだと思いますが…)。

ですが、免許が取得できても実際に現場に立ち、お客様に施術してお金を頂戴出来るレベルになるのには、その後も実践の訓練が必須になるとのことです。

私が担当する和装技術については美容師国家試験の実技科目には入っていませんのでひょっとすると学生さんたちにとってみれば私の授業は「息抜き」の時間になっているのかもしれません。

彼女たちが将来美容師として、また着付け師として活躍できるようになるには、先ず目の前の目標である美容師国家試験に合格し美容師になって、美容師としての日常の職務をこなしながら、再度着付けの勉強をし直すことになる方が多いのかな、と思っています。

今回選択授業で学んで単位を取得したのちに、これらを全くやらない期間が数ヶ月や数年も経つと、折角学んでこられたことを忘れてしまう学生さんたちが多いであろうことも推測しています。

こういった状況下で私としては、任された授業の中で、

︎知っておいて欲しいことを最小限に絞って、徹底的に覚えてもらうことができるように

︎和装を嫌いにならない(できれば興味を持って好きになってもらう)で授業を終えることができるように

そしてそのうえで、

︎いずれまた着付けの勉強をし直したい、と思ってもらうことができるように

頑張りたいと思っています。しかしながら、

「言うは易し」

ですね。

さてどうしたら私の目標が達成できるのか?

模索しながら今年も私の挑戦が続きます。

 

川口着付個人教室
 http://www.wbcs.nir.jp/~yoko

 

 


個人の着付け教室の開業に資格は必要?

2025-04-18 23:40:07 | 着付け教室

先日SNSを見ていたら、

「個人の着付け教室の開業に資格は必要?」

というショート動画が流れてきました。

 

この教室の先生は、

「個人教室開業に資格は要らない、自分のやりたいようにカリキュラムを組んで、自分が『これがいい』と思うやり方を教えていけばいいんです。こう考えると教室を開くことへのハードルは結構下がりますよね、あなたにも出来ますよ」

的な内容でした。

 

確かに、着付け講師や着付け師という仕事は、医師や看護師などと違って資格がないのにその職務を請負ってはいけないということはありません。

着付けにも厚生労働省認定の国家資格は出来ていますが、こちらが出来たのは比較的最近のことですし、これまた、こちらの資格が無ければ仕事ができないというものでもありません。無資格で着付けを教えていらっしゃる着付け講師、着付け師と名乗られる方も少なからずいらっしゃるのは事実ですし、前述の通り違法なことでもありません。

ですが、

「人さまに着物を着せてお金を頂戴する、着付け師」

を名乗る方を育てる先生は、やはりそれ相応の着付けの資格を持っている方、或いは着せ付けの現場でお仕事をしていらっしゃる方にして欲しいです。

なぜでしょうか?

 

今、お金を払って着付け師に着付けを頼むようなシチュエーションは「礼装や準礼装」の場が多いです。

勿論お遊び着として浴衣などの着せ付けを頼まれることもありますが、どちらにおいてもお客様が期待されることは、

「綺麗に、着崩れないように、また今風に着せて欲しい」

という状況になるかと思います。取り敢えず

「着物を着ている、という体裁を整えてくださればいい」

と思われる方は少ないと思います。

 

そして、礼装、準礼装や写真撮影の為の、お皺が無く、左右対象ですっきりとした綺麗な着せ付け方というのはかなりレベルの高い技術ですので、自己流だけで成立させることは難しいと思われます。そしてそれらの技術を修得するには、それなりの訓練や知識が必要です。

その技術が無い、「先生」と名乗られる方からいくらマンツーマンで教わろうが、長時間教わろうが、その生徒さんは現場で通用するような着せ付けができるようになることは難しいでしょう。

 

単に自分が着物を着られるようになりたいとか、コーディネートが分かるようになりたいと思うなら着付けの本を見たりYouTubeを見たり、着物好きな方や先生から教わったりして自分の責任において自由に着たら良いと思います。しかしながら、もしも自分が将来お金を頂戴出来るような、仕事として通用する着付け師になりたいと思うのであれば、教わる教室が自分やお仲間が着物を着たり、身内に着せたりして楽しむレベルの教室なのか、それとも実際に着せ付けの現場に日常的に仕事として入られている先生が教えていらっしゃるプロレベルの教室なのかを調べる必要があるかもしれません。

 

私自身長年この仕事に携わりながら、人さまにものを教えてお金を頂戴するということの大変さ、またお金を頂戴できるレベルの人材に教育していくということの難しさ、それに伴う責任の重大さを感じているところです。

 

川口着付個人教室
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着付けを仕事にする前に

2025-02-19 13:16:37 | 着付け師

成人式当日に某美容室で着せ付けをされたお嬢様たちの仕上がりの写真を載せた冊子を、私の生徒さんがたまたま見てその写メを撮りました。そして、
「先生〜、この着付け酷いと思いませんか?」
と私に見せてこられました。
「ん、どれどれ?」
「え?! 何これ?」
それら数人のお嬢様の写真は、恐らく同じ方が着せつけされたものと思われましたが、お客様たち共通に

⚫︎刺繍半衿が殆ど見えていない
⚫︎綺麗に着られるような体型補整が出来ていない
⚫︎裾線の決め方がよろしくない
⚫︎左右で半衿の見え方や伊達衿幅が違う(明らかな左右非対称)
⚫︎帯位置が低すぎる
⚫︎帯結び、ひだの取り方が雑
⚫︎おはしょりがぐちゃぐちゃ或いは全く無い
⚫︎帯揚げ帯締め、脇などの始末が雑
等々……

あげればきりがないほど稀に見る下手な着付けでびっくりしました。お母様やお婆様など、身内に着せてもらったということではありません。皆さんお金を払って着せ付けてもらっているはずなのです。私の教室の生徒さんであれば、まずこのレベルの方に現場に出る許可をくだすことはありません。

成人の日1日に限っては、着せ付けをされるお嬢様が沢山いらっしゃるので一時的に着付け師不足になるというのは良く聞くことですが、例えそれ以外の日でも、お客様の一生に一度のセレモニーの場での着付けを、腕がないのに受けるのは本当にやめていただきたいです。そして、そのような酷い着付けをする方の周りには、上手な着付け師がそもそもいないためにやっている(やらされている)ということでしょうから、自分に腕がないことに気づいていないということもありそうです。

私が携わってきている写真スタジオなどでは七五三からご成人まで一年中着付けをする機会があるので、成人式、卒業式の時期でしか着付けをしない美容室よりは格段に技術に差があるな、とつくづく思います。また、そのようなところでは着付け師自身も一緒に働く別の着付け師さんと技の共有をしたり、また、時にはスタジオさんからダメ出しされたりしながら技術が磨かれていくので、技術不足で着付けをされる方とは明らかに差が出ます。

お客様にとっても、苦しくなくて着崩れず、綺麗な着付けが出来るように常日頃から頑張っている着付け師さんに着せてもらった方が絶対にいいと思います。美容室も、定期的に着せ付けを頼まれることがなく技術に不安を感じるなら、専業の着付け師さんと提携を結べば良いと心から思います。

また、もしも着せ付けの仕事をしたいと思われる方は、現場に出ていらっしゃる着付け師の先生から技術をしっかり学んで研鑽することが必須です。それができないのなら、美容師であれば着付けの仕事は受けない代わりに、ヘアセットの技術を磨く方がいいのではないでしょうか。

大いに考えさせられる出来事でした。

川口着付個人教室
 http://www.wbcs.nir.jp/~yoko


帯を新たに作ってみました 第二弾

2025-02-16 22:30:46 | 和裁

だいぶ前に音符やピアノの鍵盤などがデザインされた生地の帯を作ったというブログを書きましたが、第二弾で知人から要らないといただいた生地から帯を作りました。
前回同様、手持ちの8寸名古屋帯↓の上に生地を覆い被せて縫い合わせる形での作成法です。



こちらの帯は、もともと公民館のバザーで買い求めた安いリユースものでした。
レースのような涼しげな生地でしたから夏帯として重宝していましたが、もともと前腹あたりにシミがありました。↓



反対巻き(関西巻き)にすればシミを隠すことができたのでそのように締めてきていましたが、古いものなので当初から全体的に少し汚れていましたし、購入後何度も使用しましたので、もうそろそろお役御免にしようか迷ったこともありました。
『いや、待てよ、そうだ!またこの帯の上に生地を被せて違う帯を作ればいいのだ!』
そう考えて大事に取っておいて良かったです。

今回帯にした生地は楊柳のような薄手のペラペラした生地でしたので、この生地に帯芯を入れて1から仕上げるとするととても扱いにくいものであったと思います。しかしながら既存の帯の上に貼り付けるだけなので思いの外簡単に、あっという間に仕上げることができました。
阿波しじらの生地で現在作っている着物が出来上がったら、そちらにも合わせやすそうです。

↑出来上がった帯


↑今作りかけている着物。阿波しじらの生地です。仕上がったらこんなコーデはどうでしょう😊

 

川口着付個人教室
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成人式着付け2025 新たな挑戦

2025-02-02 22:00:38 | 成人式

昨年の夏頃から左肩の痛みとそれによる可動域制限があるため、引き続き整形外科に通い続けています。

当初の見立てでは、
「じきに治る」
ということでしたので、
「引き受ける」
と伝えた成人の日とその前日の着せ付けのお仕事でしたが、予期せず良くなるどころか悪化し始めてしまいました。治療期間が長引くことを懸念された主治医からは、
「成人式のお仕事は受けない方がいいと思う」
と言われてしまいました。そのため最終確認の昨年10月には、
「一旦は受けると言っておきながら大変申し訳ありませんが、今回はご辞退したいです」
と申し出ました。
「わかった。無理をして川口さんの肩が壊れたら大変なことになるものね、兎に角良くなったら戻ってきて、今はリハビリを頑張ってね」
と優しいお言葉で励まされました。

いつもお世話になっているそちらの現場には、私の生徒さんたちを送り込むことになりました。その中で初めてお世話になる生徒さんがいらしたので、12月初めにご紹介がてら先方にご挨拶に行ったところ、社長より、
「川口さん、着せ付けはやらなくて良いから、この現場の総括やってくれないかな」
と言われました。総括のお仕事は仕上がったお嬢さまの仕上がりの総チェック、軽いお手直し、お嬢様に着崩れないように過ごす注意点をお伝えすること、ご不安などにお答えすること、万一クレームなどがあれば対応すること、現場の着付け師さんたちのフォローなどが主なお仕事です。80名ほどのお客様の大きな現場のお仕事が私に務まるのか否か不安になりましたが、受けることになりました。

当日は着付け師として入った生徒さんたちの頑張りを横で見守りながら、私も精一杯現場を動かしました。至らないことがあったかもしれませんが、今回お受けしたお嬢様全員のチェックをさせていただきながらお声掛けさせていただいた時には、着せ付けの仕上がりを皆さん満足されていると感じることができました。そのため、
「この現場のお仕事は成功したな」
と確信しました。全ての仕事が無事に終わり、その旨社長に連絡すると、
「有難う、この現場、川口さんにお願いして良かった」
と言われました。私としては初めて大きな現場の「全体を見る」という経験の場を持たせてくださった社長に本当に感謝しました。また、一生懸命お仕事される生徒さん達の成長を感じることもでき、頼もしく、また嬉しく思いました。

次は卒業式のお仕事が入ってきましたよ!
お互い頑張りましょう。
私も引き続き治療に集中していきます。

 

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着付け師が身体を傷めないためには

2025-01-16 22:14:01 | 着付け師

先日SNSで、ある着付け教室の先生が、ご自身の着付け教室のPRをされるショート動画が流れてきてたまたま見ることになりました。
その内容は、
「着付け師の方で、手や肘、肩、腰などを傷める方は着せ付けのやり方が間違っています。うちでは身体に負担をかけないやり方なので身体を傷めることはありません」
という趣旨のものでした。
身体を傷めるような無理な力のかけ方…というのは確かにあると思いますし、そんな動作は避けなければなりません。
私自身、右手、左手ともに指の腱鞘炎、そして右肩、左肩ともに負傷した経験があり、その都度医師や理学療法士にも相談しながら指、肩、肘などに負担をかけないように力加減を探ったり、力を入れる角度などを改善したりしてきました。
そして、それは左肩の治療中の現在も続いています。
肘を傷めていて通院されている生徒さんも居られるので、気をつけるべき動作については共有したうえで、身体に負担をかけない着付けの仕方を常に研究しています。
そして私なりに気をつけるべきことは改善し、新たなやり方を生徒さんたちに伝えてきています。
ですが、一方で、
「この動作をしていれば身体を傷めることは無いよ」
などという万全策は無いな、というのも実感します。
なぜなら身体は着せ付けだけに使っているわけでは無いということに加えて、生まれつき持っている筋肉や骨のつきかたや強さ、しなやかさの違い、また実際の仕事量、練習量の違い、また、年齢などによっても結果は変わってくると思うからです。
そもそも同じ動きをしていても身体を傷める人もいらっしゃれば傷めない方もいらっしゃるでしょう。
先日担当の理学療法士さんからは、
「理学療法士さんは腰を痛める人が多い」
とか、
「知り合いの理学療法士さんが五十肩になって大変だった」
と聞いたことがあります。
身体のことを学び、常日頃気をつけて過ごしているであろう理学療法士さんでも身体を痛めることがある位なのです。
またそもそも、現在私が患っている
「五十肩」
というのは、まだ原因のメカニズムすら良くわかっていないらしいですし、
私がかつて患った、
「腱鞘炎」
については、主治医の先生は、私の腱鞘が標準より細いらしく、
「これはなるべくしてなったね」
とも仰いました。
いずれにしても着せ付けは身体に負担をかける職種であることには間違いがありません。
それぞれの身体に応じて身体を壊さないように出来る術を見出していきたいものです。

 

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今度は肩関節周囲炎ですと?!

2024-12-20 23:13:08 | 肩関節周囲炎

右肩の腱板断裂術後1年が経過したことを書いたブログで、左肩にも痛みが出て治療をはじめたことを述べていました。左肩については、じきに治るかと思いきや、じわりじわりと痛みがきつくなり可動域制限が起こりはじめて、夜寝ている時にも痛むようなことが起こり始めました。

初めは「インピンジメント症候群」という診断でしたが、その後「肩関節周囲炎」いわゆる五十肩であるとの診断に変わりました。五十肩も、症状の軽いものから、重いものまであるようですが、どうやら私の場合、「重いもの」となってしまったようです。
「五十肩ごときで病院に通うなんて」
「五十肩は知らない間に自然に治るよ」
と仰る方も居られますが、症状が重いと、やはり病院のお世話にならなければ完治は難しいそうです。
そういう訳で、いまだに整形外科通いをしております。

左肩の疾患の発症理由については不明ですが、右肩の治療中に、どうしても右で出来ないことを左でかばうようなことをしていたことは容易に想像でき、左に相当な負荷がかかっていたのではないかと言われました。そして、左肩については完治には1年はかかるであろうという見立てとなり、またもや仕事が思うように出来ない状態になっています。なかなかの試練です。
確かに今まで着付けのお仕事やその他でも、手や肩を酷使してきたことには間違いがないので、それら身体の使い方については反省するところがありますが、医師には
「左肩についてはリハビリを頑張っていけば手術に及ぶようなことにはならないであろう」
と言われています。
右肩に引き続き、今度は左肩の治療…
「またか」
と落ち込みましたが、抗えない事実なので、ここにきて焦らず慌てず治療に向き合う覚悟を決めて、リハビリ通院と自主リハビリに励んでいます。

相変わらず痛みから着物を着ることどころか、洋服の脱ぎ着も不自由な状態ですが、着付けの教室の方は洋服着用で一部口頭指導をしたり、出張着付けのお仕事も生徒さんに助けていただきながらこなしています。こんな状態でも来ていただける生徒さんたちがいらっしゃることは有り難いです。生徒さんたち、家族や周りの皆さまに支えていただいていることに改めて感謝して
「きちんと治すこと」
に主眼を置いてこれからも腐らず治療に専念していこうと思います。

 

川口着付個人教室
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箪笥の肥やしにしておくなんて勿体無い!

2024-11-15 23:32:54 | 和裁

先日、私が和裁のサークル活動で通っている公民館の文化祭がありました。

こちらでは絵画、書道、生花…、その他さまざまな活動があり、それぞれ一年かけて作られた作品や活動の発表などを展示する場でしたので、我々のサークルも着物や帯などの作品の展示をしました。

それぞれの展示のブースには誰かしらサークルの担当者が付き、見にこられた方々からのお尋ねに答えたり、作品の紹介などをしたりしていました。私がその担当をしていた時のお話です。

 

ある年配数人の方々がブースに来られ、こう仰いました。

「素晴らしい作品ですねー。でも皆さん、こんなに着物や帯を作られてどうされるんですか? 私は着なくなった着物や帯をどうやって処分しようかと思案しているところなのに、こんなに作って、着ていくところがあるんですか?」

「私なんてこの間、不要な和服を売ろうと思ってリサイクルショップに相談したら二束三文なのね。こんなことならゴミに出したほうがマシだったと思ったわ」

「私、古い帯で鞄を作ったのよ。でも、そもそも古い帯だから、織り糸も弱っていて、折角苦労して作ったのに使っているうちにすぐに糸が擦り切れてきて、ダメになっちゃった」

「着物は洗えないしメンテナンスが大変よね」

「今度、公民館でバザーがあるからそれに出そうかしら」

 

こっちは好きで作って、自身が着たり身内に着せたりして楽しんでいるのに、何という言いようでしょうか。

ある意味、我々のような着物好きの人間以外の方々の、着物に対して持っている感情を聞けて勉強になったのですが、そもそも礼装用の着物を着る機会があまりないのは礼装用の洋服を着る機会があまりないのと同じことですし、普段着の洋服と同じように着物にも普段着となるものはありますし、普段にはそういうものを自由に着たら良いことです。

私はこのところ、自分用の、そして普段仕様の着物や帯ばかり作っていますので、そういった作品も出していました。来場者さまには、着物生地には洋服生地と同じように「洗える素材」もあることも話し、私が普段に着ている時の写真、またそれを楽しんでいる様子も見てもらいました。

 

私自身、最近、自分用にはメンテナンスの楽な素材のものばかり作っています。

例えば、礼装の場に着るようなものでも絹生地に似たポリエステルの生地だってあります。

来場者さまたちには、

「そういう素材もあるのね」

「そういう着こなし方もあるのね」

と言っていただけました。

出来ないこと、不自由なことばかりにスポットを充てていたら折角の日本文化も廃れてしまうのではないでしょうか。

 

着物は着てナンボのもの。

もう少し着物への凝り固まった先入観を捨てて、ファッションの一部として楽しむ方が増えたらいいのにと思いました。

 

川口着付個人教室
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まずはきちんと鶴を折りましょう

2024-11-12 15:04:15 | 着付け教室

10月に入り、これから七五三シーズン。また来年1月には成人の日を迎えるので、現場に入られる予定の生徒さん達は技術磨きに一生懸命です。


着物の形は昔と変わらないとは言え、「装うもの」という意味ではファッションなので、衿合わせの角度、帯位置、また帯結びや帯揚げ、帯締めの整え方のアレンジ方法は微妙に変化、進化していたりします。
ですから、今のお嬢さまたちはどんな装いを好まれるのか、アンテナを高く張って、お客さまに喜んでいただけるようにしっかり対応出来るようにしたいと思います。


ある生徒さんには、
「先生〜、私、もしお客さまがこんなふうに整えて欲しいとか、こんな帯結びをして欲しいとか画像を見せられてもとっさには出来ない気がします…」
と言われました。
確かに、
「なんじゃこれ?一体どうなってるの?」
と思うようなアレンジを見ることもありますが、私としてはそれを再現できた時の喜びは、まるで学生の頃、難しい数学の問題が解けた時のような達成感を感じて、それらのやり方を読み解くのも好きなのです。しかし、限られた時間内で出来るようになるにはやはり相当練習しなければならないのだろうな、と正直思います。


でも、それらの難題を解くことが出来ないと着付けの仕事ができないのか?と言われればそれはちょっと違います。
例えば日本人で大人であれば折り紙で
「鶴を折ってください」
と言われて出来ないのは恥ずかしいかもしれませんが、
「カマキリを折って」
「ネズミを折って」
などと言われたとして、それらが折れなくても恥ずかしくはないですよね。折り紙を折るのに相当精通している方々が例えそれらを折れたとしても、仕上がりは折る人によってきっとさまざまだと思われます。
着付け師たるものも、出来ないと恥ずかしいという、昔ながらの「王道」の着方の「基本」をしっかり押さえて、それが当たり前に出来ることがまずは最も大切です。そしてその上の応用は感性や練習によるところも大きいと思います。


先程の例では、折り紙の大きさや色、素材によって、きっと「カマキリ」や「ネズミ」もそれぞれ違うものが出来ることが推測できるのと同じで、着せ付けの仕上がりも、着付け師によって、またお客さまのご衣装や小物の素材感によっても全く同じにはならないのだと割り切ることも大切です。
自分がお客さまにとって最良のデザイナーになるという意識と自信を持って、また、お客さまの気持ちに最大限寄り添うことが出来るように対応できることが大切なのではないかと感じます。
でも言葉で言うは易しで、常に研究していくことはやはり大切です。


「継続は力なり」
生徒さんも、私自身も、現場はしんどいことも多いですがお互いお客さまから喜ばれる仕事をして、楽しみながら精進していきたいと思っています。

 

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「質」と「量」の問題について

2024-10-02 17:38:58 | 着付け師

たまたまSNSで、大阪府の吉村知事と、サッカーの本田圭佑さんとの対談の一部が流れてきました。

その時語られていた内容は「質」と「量」の問題についてで、本田さんの発言を要約すると、

「量をやってない人間に質を語る権利はないと思っている。サッカーもそうだが、思いっきりたくさん練習することもせず、怪我もしてないような人間は、どのフェーズまでいったら疲れて怪我するのかもわからない。いっぱい動かないと質なんてわからない」

というものでした。

『確かに…』

私は、がむしゃらに着付けの練習をして様々な現場に出続けることで技術を磨き、漸くある程度自分の技術が定着しました。そして、どんな現場でも仕事上困ることがなくなってきて、仕事のやりやすさや楽しさを感じることが多くなってきたと思っていました。

本田さんが言うところの「質」を語るのはおこがましいかもしれませんが、それだけの「量」をこなしてきた自負はありました。

ですが、ここ数年で私の身体は悲鳴をあげ始めました。

左右の手の腱鞘炎で手術はするわ、右肩の腱板断裂で手術はするわ、現在は左肩の痛みでずっと不調続きです。つまり、本田さんがいうところの、より良い「質」を求めるために沢山の練習や仕事「量」をこなし過ぎてしまったのかもしれません。

私を診察されたどこの病院でも、それらの不調の原因は「加齢」と「使い過ぎ」と言われました。

「加齢」しかり。「使い過ぎ」しかり。自分自身でも思い当たる節がありすぎます。ここまで使うと身体に故障が出てくるのだな、と思ったのでした。 

今の時代なら、YouTubeなどをはじめとするSNSなどでは簡単に、しかもタダで着付けの技術の情報を取りに行けるので、それらを利用して量を伴わず質を改善してしまう人が沢山いらっしゃるかもしれません。私自身、自分なりに苦労して編み出した着付けの技術も、生徒さんたちには簡単に惜しみなくお教えしています。私の時代はSNSもなく、長い間現場の技術を教えてくださる方も居られず、

「技術は見て盗め」

などと言われる時代でしたから、仕事に集中すれば見ている暇などなく、結局わからず、悔しい思いも沢山しながら自分なりにトライアンドエラーを繰り返して技術を習得してきました。

ですが、

「簡単に教えてもらえたもの」は

「簡単に忘れてしまう」

こともあるな、と思うことも正直あります。私のように

「身体を壊すまで質を見極めるために量をこなせ」

と言うことはできませんし、それはある意味過りです。ですが、やはり、苦労して獲得したものというのは何事にも代えがたいものがあることを実感しています。

ですので、ある程度の量をこなした人でないと質を見極められないし効率性も上がらないのではないかという本田さんの意見には激しく同意します。

質を上げるには一定量の継続は不可欠。でも私のように心身故障しないために、指導者としてはバランスを考えながらご指導することも、今後はより一層大事だと思っています。

 

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