空からマリコ「安全第一」

おそらのともだち。安全のこと、空のこと、時々経済、ところによって時事ネタ

【オリジナル】CRMはどこにいった

2015-04-17 17:21:35 | 定期航空

<【オリジナル】CRMはどこにいった>

 アシアナ航空機広島空港着陸失敗事故では、メディアが多くの角度から事故原因を考えています。しかし肝心要に言葉がどこにもありません。それはCRM(コックピット・リソース・マネジメント)です。

 80年代、航空機事故の件数減少がある一定のところに止まったことから、それを突破しようと考え出された方法がCRMです。ユナイデッド航空と米の大学で開発された組織論的方法です。いわゆる技量訓練とは別に、2人いる操縦者が相手を理解しコミュニケーションをとり、互いを助けながら飛行機を安全に運航しようというものです。

 CRMの訓練内容は、どちらかといえば「相手の意図をわかろう」とか「心理的な行動理解」など経営学セミナーに近いようなものです。

 で、CRMの失敗例を2つ、大韓航空とアシアナ航空の事故から取ります。これはヘイトスピーチ的な視点(マリコが一番アフォだと思う行為)ではなく、たまたまCRMが理解されていない典型的な事例であり、アシアナに関しては、過去にも同様の事故があったのに・・という批判を込めてのことです。

1)大韓航空A300チェジュ空港着陸失敗事故

 1993年8月10日、ソウル(金浦)発の大韓航空A300(乗員6人、乗客152人)が悪天候の済州島チェジュ空港に着陸しようとした際に失敗。死者は出なかったが機体が炎上した事故。
 事故調査でコックピット内でカナダ人機長と韓国人副操縦士がゴーアラウンドをめぐって着陸直前に対立していたことが判明。機長が強引に着陸したために滑走路逸脱を起したもの。日頃よりこの機長は自分の主張を強引に押しつけるタイプで、反発した韓国人副操縦士も機長の指示を聞かずゴーアラウンドの操作を行ったが原因。

2)アシアナ航空B777サンフランシスコ空港着陸失敗事故

 2013年7月6日、ソウル(仁川)発のアシアナ航空B777(乗員18人、乗客291人)がサンフランシスコ空港で着陸失敗、機体が大破し3人が死亡、180人以上がけが。
 操縦していた副操縦士は、1万時間以上の飛行時間で他機種の機長を持つパイロットだったが777は45時間あまりで、同機種でのSFO着陸も初めて。一方、機長も1万時間以上の飛行時間を持つベテランだったが教官として、このフライトが初めて。実質的な操作はすべて副操縦士に任せており、監視の役割を果たしていなかった。直接的な原因は副操縦士の777のシステムへの無理解だったが、副操縦士が同様の飛行時間をもつことから技量を過信し、間違えを指摘しなかった機長の責任も大きいといわれている。

 いずれも「対立」「過信」と心理状態こそ違え、2人いるパイロットが「孤立」して本来目的である飛行機を安全に運航するという役割を「一緒に」果たさなかった・・という共通性があります。

 さて、今回のアシアナ航空機広島空港着陸失敗。事故原因として急激に視界が悪くなった気象的要因が指摘されています。現段階で機長、副操縦士どちらが操縦桿を握っていたかはわかりませんが、急激な視界悪化で操縦者がパニック(正常は判断ができない)に陥ったとしても、操縦桿を握っていない(操作していない)方が異常を感じた段階で「高度が低いです!!」「ゴーアラウンドしましょう!!」とアドバイスして、操縦側がそれを受け入れれば事故は防げた可能性が高いと思います。

 このクルーの「CRM」はどこにいってしまったのでしょうか? 事故調査ではこの点も明らかにしてほしいと思います。


最新の画像もっと見る