東南アジア諸国連合(ASEAN)主要5カ国の経済成長が加速している。
1-3月期の前期に比べた実質国内総生産(GDP)成長率は季節調整済みの年率換算で平均17.7%に達した。
中国やインド向けの好調な輸出が追い風となった。プラスは4四半期連続で、伸び率は昨年10-12月期(8.7%)のほほ2倍まで高まった。
●中印向け輸出寄与
アジア開発銀行(ADB)が27日までに各国政府が発表したデータをもとに算出した。
1-3月期の年率換算の実質成長率は米国が3%程度、日本は5%近くで、2ケタの東南アジア主要国との差は歴然としている。
特にシンガポールの伸びは38.6%と突出。中国、香港、インド向けの輸出が好調だった。マレーシアの実質成長率も1-3月期は15.9%まで高まった。
主力のエレクトロニクス製品の中印向けの輸出が寄与した。
タイの1-3月期の実質成長率は16.0%。トヨタ自動車のピツクアップトラックなど自動車関連の輸出が大きく押し上げた。
反政府デモの広がりによる混乱を経ても、輸出産業への影響はいまのところ軽微にとどまったとの声が多い。
フィリピンの成長率は個人消費を支えに12.6%になった。インドネシアは5.3%にとどまった。
●底堅く推移
09年のASEAN主要5カ国のGDPは合計で約1兆3000億ドル規模で、インド(約1兆2000億ドル)をやや上回る。
全体の4割を占めるインドネシアの成長率は5%前後で安定する半面、その他の4カ国は世界景気の強弱や市場の変動の影響を受けやすい。
ADBはベトナムやラオスなどを含むASEAN全体の10カ国の実質成長率について、09年の1.2%から10年は5.1%まで上向くと予測する。
タイの混乱や欧州の信用不安などは懸念材料だが、エコノミストの間ではASEANの経済は底堅く推移するとの見通しが大勢。
【記事引用】 「日本経済新聞/2010年5月28日(金)/3面」