ああ 美味しい!

美味しいものを求めて
ひたすら食べ続けます

つつじ

2004-04-18 19:43:50 | yomoyama


爽やかな小春日和のなか、みんなが、それぞれの目的をもって歩いている。
道路わきのつつじからやさしい香りがする。
ピンクや白が緑のコントラストの中にうかび、目が痛いほどだ。

前から不思議な軍団が、うつむき加減でぐいぐい押し寄せてくる。
作業ズボンの左右のポケットに新聞が突き刺さる。
我先に券売り場へ急ぐ。
競馬場のスタンドが見えた、たくさんの人が「ウォー」と言っているようだ
脇の緑の広場では、思い思いに座りこんで、新聞をみている。
家族づれもいる。オジサンもいる。たばこをふかした女性もいる。
掃除をしているおばさんたちの背中に「皐月GI」のゼッケンが。
心なしか、みんなうつむいている。早く駆け抜けたい。

軍団を抜けた先に、美味しいパン屋がある。
目指すパン屋は喧騒とは離れゆっくりとした時間を刻んでいた
対面式のケースには、デニッシュ、あんぱん、フルーツで飾られたパン
食パン、バゲット。おいしい香りに包まれほっとする。
店員はせかすわけでもなく、勧めるわけでもなく、おいしそうなパンと
ともに微笑んでいた。奥の厨房では、職人がバゲットにクープを入れていた。
すべるように窯へパンが入る。パンを見ていると次々と買いたくなる。
うきうきとしてくる。店先のベンチで休んでいると。奥から職人が
「バゲット焼けたからもってって」無造作に渡された。
かりかり音がしている、熱い、いい香りがただよう、耐えられずにバリっと
割る、蒸気が立ち上る。そのまま食べた。何物にも替えがたい至福の時。
これに会いに来たのだ。目をとじて深く深呼吸をした。

ふと我に返る、あの軍団の中を、もう一度通らなければならない。
今度は、新聞売りのスタンドと焼きそばを売るアンちゃんが見えた。
バスが到着したらしい、新たな軍団がわらわらと券売り場へ走る。
みんな新聞を持っている。今度はみんな目がぎらぎらしていた。
一人一人がそれぞれ独立していた。誰とも話していない。同じ方向へ
歩いている。一瞬、真空状態のようにシンと静まり返った。早く駆け抜けたい。

みんなが、それぞれの目的をもっているかのように歩いている。
伏目がちで、早足に通り過ぎた。
手にバゲットの残りを掴み、パンの香りを振りまいている自分がいる。
道路わきのつつじがやさしい香りを放つ。
つつじは、胸をはってしっかり活きていた。




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