ネコきか!!

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珈琲と猫

2007-08-21 | 小説・その他
朝。
目覚めのコーヒーを飲む。
起きたてで豆を挽くのは少々辛いのでインスタントで妥協した。
コーヒーをゆっくり口に含みながら、まだ寝ている頭を起こしていく。
なにか聞こえる。
外を見てみると、向かいのマンションの駐車場に1匹の猫がいた。毛なみから察するに子猫以上成猫未満といったところか。
車の隣に座り、にゃあにゃあと鳴き続けている。
何を言いたいのかはさっぱりわからないが、なんとなくそいつを観察してみた。
視線が合った。
にゃあと一声鳴くと車の下に隠れてしまった。
どうやら嫌われたらしい。

昼。
上司に呼び出され説教された。
原因は全く見当違いのことであったが、面倒だったので黙っていた。
屋上で飯を食いながら缶コーヒーを飲んだ。同僚に飯とコーヒーは合わないだろうと言われたが無視した。
どうせコンビニ弁当だ。美味いも不味いもないだろう。

夜。
新しい豆を購入。
家に帰り早速豆を挽いた。
電動ミルは高くて手が出せないため手動ミルだ。
別にコーヒーが好きなわけではなく、ただの習慣だ。両親が好きだっただけである。
江戸川乱歩を読みながらコーヒーを飲んでいると、隣の部屋から物を投げつける音と罵声が聞こえてきた。
最近越してきた新婚らしい。らしいというのは挨拶に来なかったことと、今も聞こえる罵声の内容からだ。
週に一度はやらかすが、よくこれで結婚する気になったものだ。
一時間もすれば罵声は泣き声に変わり、翌日には何事もなかったかのように振る舞うのだろう。
男と女はわからない。

朝。
今日も猫はいた。
昨日と同じ場所で、昨日と同じ様に鳴いている。
目が合うとやはり引っ込んでしまった。
ちょっちょっと舌を鳴らしてみた。
車の下からこっちを覗いている。
冷蔵庫からししゃもを持ってきてちらつかせた。
5分くらいにらめっこが続いただろうか。
にゃあと鳴くと恐る恐るこっちに近づいてきた。
さすがに生のししゃもをやるわけにはいかないのでカニカマをあげた。
始めはこっちの様子をちらちらと窺っていたが、すぐに食べることに集中しだした。

昼。
新人の仕事のできなさに辟易する。
上司に怒られるのは自分なので手伝ってやった。
礼も言わずに、こんなの終わりませんよ、とへらへら笑っているこいつを心底殴りたくなったのは言うまでもない。
どんな教育を受けてきたんだか。
向いていないのに教育係をやらされているのは上司に嫌われているからだろう。
ため息もでない。

夜。
コインランドリーから戻り、衣類を畳む。
肉が安かったので肉野菜炒めをおかずに飯をかきこんだ。
テレビをつけると野球中継をしていた。興味がないので別のチャンネルにする。どの局もバラエティで面白味がない。
借りてきたDVDでも見るとしよう。そういえば明日が返却期限だった。
床に就いてしばらくすると、猫の唸り声が聞こえてきた。鳴き声が二種類ということは縄張り争いかなにかだろう。
隣室の男がうるさいとわめいている。うるさいのはお前だ、阿呆。

朝。
インスタントコーヒー片手に窓を開けた。
ちょっちょっと舌を鳴らす。
しかし、あの猫は見当たらない。
ちびちびとコーヒーを飲みながら待ってみたが、やはり現れる様子はない。
昨日の唸り声はあいつだったんだろうか。
どうやら用意した猫缶も無用のようだ。猫好きの同僚にでもやるとしよう。
冷たくなったコーヒーを一気に飲み干すと俺は家を出た。

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