掌蹠膿疱症とたたかう”たかが皮膚科医” in 愛媛

変わり者と後ろ指を差されながらも、掌蹠膿疱症とひたすらとりくむ元北海道地域医療従事臨床研究者のひとりごと。

汗?

2013-09-30 06:05:14 | PPPについて思ふこと

なかなかブログが更新できませんが、外来と研究が忙しいためと言い訳をさせてください

実際、愛媛に来て一年半ですが、やっと生活と愛媛大学病院ならではの診療スタイルが分かってきたところです。やはり北海道で9年間も修業して戦う皮膚科医をしてきましたので、そのスタイルやポリシーはなかなか変えることができません。一年やってどうしても自分のスタイルが合わないようであれば、北海道に帰ることもやむなしとさえ思ってやってきたつもりです。

同じ皮膚科なのに、随分と患者層も違えば病気へのアプローチの仕方も違うということを感じ、日本は広いなと思わざるを得ません。

一番感じたのは、北海道では”異汗性湿疹”で苦労をあまりしなかったのに、愛媛では異汗性湿疹?全身性金属アレルギー?掌蹠膿疱症?と毎日悩まされています。特に全身性金属アレルギーについては相当勉強させられており、発汗と皮膚病はかなり奥が深いと今更ながら思うようになりました。

私も汗の抗菌ペプチドを見つけて以来、汗については自分なりに研究してきたつもりですが、すでに10年が過ぎてしまいました。ずっとその物質を追いかけつづけていますが、どうやら掌蹠膿疱症でもこいつが絡んで悪さをしているという結果にたどり着きました。ちゃんと報告して論文掲載された折りには報告させていただき、治療応用についての提案をしたいと思います。

とはいえ、なかなか病気のイニシエーターにたどり着くことができず、本当にヒトの体はジェット旅客機以上に複雑だということを今更ながら感じています。


来年こそは。

2012-12-31 23:22:50 | PPPについて思ふこと

愛媛に移動して初めての年越しとなりました。

一年を振り返ると、今まで旭川医大にいたときと随分と生活様式が変わったなと実感しています。細かいことはともかくとして、この10か月は随分とPPPに関して疑問に思っていることを調べたり研究を進めることができました。これも一重にS教授のおかげと愛媛大学皮膚科医局員の皆様のおかげだと感謝しています。

来年もまだまだ病態に関する研究を進めないといけないのですが、今までに分かってきたことを少し応用して、新しい治療試みも少しやってみたいと考えています。とはいえ、IRB(倫理委員会)を通らないと実際に外来でやることが憚れてしまうので、今しばらくトライアル開始に時間はかかってしまいそうですが。。。

PPPと案外関係なさそうな論文が意外とヒントになりそうなので、これからもそういうところから情報をちゃんと収集するようにこつこつと努力を継続しないといけないと、新年を迎えるにあたって気を引き締めたいと思います。

早く、PPPの病態解明と治療開発がすすみますように。

 


PPP専門皮膚科医の集い

2012-12-02 20:45:11 | PPPについて思ふこと

先週金曜日、11月30日の夕方に、東京某所にて掌蹠膿疱症専門外来でPPPと戦う皮膚科医の集まりがありました。メンバーは

日本大学皮膚科学教授 照井 正 先生

東京医科大学皮膚科学教授 大久保ゆかり 先生

聖母病院皮膚科部長 小林里実 先生

で、私という顔ぶれでした。

1900ごろから集まりが始まったのですが、これでもかというくらい病態と臨床に対する疑問や工夫、悩んでいることなど話が尽きず、場所を変えて結局真夜中過ぎまで(プラスアルファもあったけど)白熱してしまいました。

どの先生も同じ様に病気と取り組むときに真剣に悩んでいて、皮膚科医としてなんとかしてこの病気を克服したいという熱い思いは同じなんだとつくづくわかりました。今までにこれだけPPPの話で盛り上がったことはなかったので、すごいカルチャーショックでありましたが、これからみんなで力を合わせてがんばりましょうということになったので、すごく勇気づけられました。

臨床面もさることながら、研究面において皆さんが私に多少なりとも期待してくださっていることが分かったので、来年はぜひPPPの病態に関してさらに新しい知見が得られるように努力をしようと決意を新たにすることができました。日本から発信しないと、この病気は世界で認めてくれないから、がんばらねば。


愛媛大学附属病院皮膚科内 掌蹠膿疱症専門外来

2012-08-26 19:18:43 | PPPについて思ふこと

赴任して五ヶ月がたとうとしています。

やっと、大学と街になれてきました。掌蹠膿疱症専門外来にも9人エントリーされ、火曜日の午前中枠で予約制でみさせてもらっております。そのうち一名は関節症性乾癬や関節リウマチと鑑別が必要な掌蹠膿疱症性骨関節症の方です。ご他聞に漏れず、整形外科でなんともないといわれてそれ以来途方に暮れていたという方で、初めて診せていただいた時には、指先の関節が赤く腫れて機能障害も一部生じてしまっていました。すでに複数年がたってしまい、関節X線写真でも変形が分かるほど。

まず痛みをとってできるだけQOLをあげることからということで、北海道で一緒に戦ってくださったPPPの皆様との経験を駆使して、まずは再診時に赤みと痛みをとることはできました。これから長い戦いだけど、北海道の皆さんのように気長にあきらめずに辛抱強く2-3年お付き合いしてくれるかなあ、というのが今一番の心配事です。愛媛の患者さんと北海道の患者さんはタイソウちがうとわかってきました(笑)

私が目指す医療は、患者と医師の二人三脚。そして治療の主役は医師ではなく患者。

富良野や旭川医大で一緒にPPPの治療に取り組んでくれた患者さんたちは、たいていこのことを理解してくださって、最後は僕が何も言わなくても、”今回は自分であーした、こーしたよ”とか”この状態ならばこういう治療だよね”と外来で行ってくださる方が半分以上でした。今でも手元にある登録患者さんの記録をみると、一人一人の顔が思い浮かんできます。(むろん、それを見ると今でもブルーになってしまいます)。

一日も早く病態解明と治療開発が進むように、ここ愛媛でも一緒にPPPと戦ってくださる同志を探し求めております。我こそはという患者さんおられましたら、ぜひ愛媛大学病院皮膚科内 掌蹠膿疱症専門外来へご連絡ください。お待ちしております。


掌蹠膿疱症と扁桃摘出術

2012-06-18 05:36:03 | PPPについて思ふこと

他のブログで扁桃摘出のことを聞かれたことと、私が以前に旭川で見ていた患者さんからのコメントがあったことを踏まえて、少し今の時点で私が扁桃摘出に思うところを述べたいと思います。

扁摘にはその立場から賛否両論があります。耳鼻科医は積極的切除派が多く、秋田の前橋先生は反対派のようです。各々言い分があるので、興味のある方はインターネットなどで読んでみてください。

私の個人的な私見は、

”扁桃が掌蹠膿疱症の根本原因ではないから、全例切除には反対。ただし、病的状態な扁桃で異常な免疫反応を誘導するT細胞がブーストされているような症例においては、切除することによりQOLの改善を認めることができる。しかしながら、扁摘後も必要な加療を行って根本的に掌蹠膿疱症を惹き起こす免疫異常状態からの離脱を目指す必要がある。”

というものです。実際に扁桃をとって症状が改善するケースは多いのですが、再発する方が10-20%くらいいました。逆に扁摘しても全然よくならなかったといって憤慨して専門外来を受診された方も何人もおられました。

もし扁桃がこの病気の唯一原因だというのであれば、とったら治癒しないとつじつまがあいません。扁桃はまったく関係ないよというのであれば、症状が改善する人がおられるのはなぜでしょう?一方的な立場では実際の現症を説明できないことは明らかです。

私は過去の治療経験から、やはり本症は掌蹠膿疱症ではなく掌蹠膿疱症状あるいは掌蹠膿疱症候群と考えるべきと思っています。すなわち、この症状が惹き起こされる原因とそして症状を増悪させるブースト因子の二者があると考えています。

したがって、治療抵抗性でいくら加療を試みても、水疱膿疱をくりかえすような症例に関しては、回り道でも一旦は、後者のブースト因子探しを行い、QOLをある程度改善させてから、今一度根本と戦うことも必要と考えています。その際に扁摘が必要であると判断された症例については、耳鼻科にお願いして切除してもらうと決めています。実際、これは”扁摘するべき”と考えて4人ほど(当時の専門外来にエントリーしていた患者総数は150人です)お願いしましたが、幸いどの患者さんも見込み通り、いい方向へ向いているようです。

逆に”まったく扁摘しなくても完全治癒(ほぼ無治療で6か月間disease free)の患者さんも多数おられます。

旭川医大では扁摘を依頼するとほとんど全例行ってくれましたので、よかったのですが、耳鼻科によっては扁摘をいやがるところもあるとのこと。いきなり耳鼻科医を訪れて扁摘してくれというのではなく、一度皮膚科専門医と相談してから耳鼻科医へというのがいいかと思います。

とるのは簡単ですが、とった後でやっぱりやめたというのは難しいことだと思います。