掌蹠膿疱症とたたかう”たかが皮膚科医” in 愛媛

変わり者と後ろ指を差されながらも、掌蹠膿疱症とひたすらとりくむ元北海道地域医療従事臨床研究者のひとりごと。

雑感

2012-11-29 05:39:27 | 火曜日は専門外来日!

私は患者さんと話をするのが好きで、基礎医学から臨牀医学へ転身したようなものです。ですから、つい熱くなると時間を忘れていろいろ病気にまつわる話をしてしまうのが、いいところであり悪いところだと思っています。

以前から申し上げているように、PPPは単なる虫刺されのような皮膚反応だと思っていません。かなりそのメカニズムは複雑です。そして、過去20年(精確には50年近く)いろいろ先人が考えて調べてくださっているにも関わらず、答えがでないということは、おそらく今までとは異なる考え方や見方をしないと先に進めないとも思っています。

そういう意味で前橋先生の”ビオチン欠乏説”は、センセーショナルであります。それまでそういうことを提唱した医師はいないわけで、それを自分なりに理論化して実践しておられるということは大変なことだと思います。医師、患者双方から賛否両論あるでしょう。

私はこの病気と本格的に取り組み始めてわずかに7年ですが、試行錯誤で研究面と臨牀面からPPPについて考えてきました。取り組めば取り組むほど一筋縄ではいかないことを実感し、本当にこれは皮膚科common diseaseでいいのかしらとさえ思うようになっています。そして、いつも思うのは”この病気は江戸時代にもあったのかしら。。。”です。

気がつけば、愛媛に来て8か月がすぎ、赴任したばかりのころは新しい環境になれることに多忙でしたが、とてもよい仲間に恵まれたこともあり、今は旭川にいたときのように毎日PPPのことを沢山考える時間ができるようになりました。すごく”そんなことありえないだろ”と言われそうな思いつきも相当増えましたので、今度はそれをどうやって証明するか考えることに時間を割きたいと思っています。

その夢の実現のためには、研究費ももっととらないと・・・ということで、今年5つめグラント書きに追われて連日また居残り・・・しています(泣) なまいきなことを言いますが、京大・山中教授がマラソン走って研究費を集めたお気持ちが少しわかるようになってきた今日この頃です。


照井先生の講演を聞いて思ったこと

2012-11-23 08:44:35 | 火曜日は専門外来日!

毎週水曜日に前日のPPP外来を振り返ってブログを書こうと決めていますが、きちんとできていない・・・忙しいという単語で言い訳するのはいけないことなので、その週のうちに必ず何かコメントすると決めました。すみません。

水曜日に日本大学医学部皮膚科学講座の照井正教授の講演会が、ここ松山でありました。

照井先生は東北大学に居られるときに好中球の仕事をされており、PPPに関する皮膚科領域の第一人者であります。先生のところから以前に出たkey paperを拝見して、すごく自分の研究のヒントになることが多く、大変尊敬申し上げる皮膚科研究者のお一人です。

今回のお話は乾癬に関するものでしたが、食事と乾癬についてのお話しで腸内細菌のことに触れられました。実は、病理医時代から腸内細菌叢と腸管リンパ節については興味があり、千島教授の腸管免疫説(一部では禁断の書と言われている)にかなり傾倒したことがありました。無論、当時は形態学を重んずる病理医のはしくれでしたから、そのような機能面からの研究アプローチが許されることなく、ずっとお蔵入りしていました。

皮膚科臨床医・研究者に転身して、病気を全身の形態・機能の両面から考えることの重要性を再認識し、なかなか目に見える形にして説明のできない機能面の異常というものに特に関心を持ち、取り組む方法はないものかいつもぼーっと考えております。

話を戻しますが、乾癬でメタボリックが増悪因子、喫煙が発症因子、増悪因子に関わるというスタディが多く報告されています。無論、PPPにおいても喫煙は厳禁ということがほぼ明らかになっています。今回、照井先生から腸内細菌に関する報告を紹介いただき、やはり本来人間にとって快適な生活様式があって、それからはずれることは次第に生体に対するストレスになるとつくづく思いました。

PPPが自然に治癒するのはなぜかという問いに答えてくれる人はおりません。でも実際にそういう方がおられます。逆にどんどん悪化してPAOまで生じてしまう方もおられます。きっとmoleculeレベルでは原因があるのだけれど、それを生じる環境は個人により異なること、そしてその域値もことなることが病気のphenotypeを多様化させ、難しくさせているのだと思います。

いかんせん、西洋医学はやたらに新しい病名をつけたがりすぎると思います。10年したらAもBもCも同じ病気だったということが平気で起こりえますから、異端といわれてもやはり病気は細かい病名ではなく体系的に大局的にとらえて扱うべきという気がしてなりません。

照井先生とPPPをはじめとした膿疱症に関するディスカッションをするのは本当に楽しいです。政治的なことは抜きにして純粋に病気を考える皮膚科医ともっともっと交流を重ねて日本発のPPPに関する提言をしていきたいと改めて思いました

(病気についてディスカッションするのが楽しいとかいうのは患者さんに対して失礼な発言で、不謹慎であるように思います。その点については申し訳ないと思います。不快になった方がおられたらお許しください。)


膏薬の塗り方一つをとっても。

2012-11-16 06:11:12 | 火曜日は専門外来日!

保湿剤にはかなりいろんなメーカーが参入していますが、我々皮膚科医が処方するものとしてM社の”H*r*doid”というものがあります。ヘパリン類似物質含有剤で、軟膏、クリーム、ローションといろんな基材があり、実際冬季に多くなる、皮脂欠乏症や皮脂欠乏性皮膚炎の治療の際にかなりお世話になるものです。

先日杏林大学皮膚科教授の塩原先生の講演がここ松山でありまして、この薬が単に保湿効果のみならず発汗促進作用があることを講演されました。そしてかなり大量のM社”H”を処方され、実際に患者さんにべたべた塗らせています。驚くべきことに皮脂欠乏症のみならず、扁平苔癬、アトピー性皮膚炎などに対してもステロイドを使わずにHのみで改善した症例を多数供覧して下さいました。

私も汗の自然免疫とPPPの研究者の一人として、非常に興味深いデータだと拝聴しましたが、確かに思い起こすとかさかさして湿疹がなかなか治らないと訴える患者さんに、前医と全く同じ処方で外用方法の変更を指導しただけで、劇的に改善する症例を何十例あるいは何百例と経験しています(富良野地区(特に南富良野)では、私は”膏薬をすごくたっぷり塗らせる医者”として有名だったと聞き及んでいます)。

北海道地区の一部の先生からは”あいつはやたらに軟膏べたべた塗りすぎ!”と批判的なことをいわれたこともありますが、私自身の経験と先日の塩原先生の講演を聞いて、自分の判断が正しかったと改めて思うとともに、一方的にあんなのだめだよと(実際に自分で試してみたりもしていない癖に)決めつける”理論武装のみ経験知ゼロ”の輩なんかのいうことに耳を貸すより、”これからも自分の経験と正確な理論や実験データに基づいた診療を組み立てる姿勢を変えないでいこう”と自信を深めることができました。

そして塩原先生の医局員も体を張っていますが、先生御自身も体を張ってデータをとっているだけにすごく好感が持てました。現場の臨床医の匂いのする臨床研究者だと改めて尊敬することができて、講演会を楽しむことができ良かったと思います。

ちなみに、うちの佐山教授も自ら体を張って研究のために汗を採取して下さるし(自転車で走り回って採取する・・・)、僕だってSanDiegoにいたときは大竹先生(現:旭川医大准教授)と長谷先生(現:東京大学特任教授)と三人で仲良くUCSDキャンパスを走りまわって熱中症になりかけながら汗を集めました。あ、PPPの実験のため自分の手掌から皮膚生検もしたっけ・・・僕らも自分の体を張ってがんばって研究しています、山中教授のようにマラソンにはでれないけど(^_-)-☆

 

 

 


Schreiber

2012-11-08 06:30:10 | 火曜日は専門外来日!

最近、同門の諸先生方や近隣の皮膚科の先生方からPPP患者さんのご紹介をうけるようになり、少しずつじわじわっと専門外来エントリー数が増えています。

旭川医大とは異なり、シュライバー(Schreiber: 書記)の若手医師がついてくれるため、かなり仕事がスムースにできるようになったことは大変喜ばしいと思っています。

何より嬉しいことは、掌蹠膿疱症は案外真剣に取り組むと大変なんだとわかってくれる若手が多いことです。時に一緒になって”前回写真より改善していてよかったですよねー”とか一言言われると、もっともっと勉強していいところをみせてやらねばと思ってしまいます。

一人ぼっちで戦うのはつらいけど、仲間がいると思うとがんばれるものです。患者さんも一人一人PPPを思い煩っておられますが、同じようにこの病気と戦っておられる方々がここ愛媛大学皮膚科掌蹠膿疱症専門外来を中心に複数おられるということを、感じていただいて、少しでも勇気とやる気の支えになれればと思います。

とはいえ、愛媛に来て半年たらずですが、かなりいろいろやらねばならぬことが増えているのもこれ事実ですので、一緒に病気の研究や診療に力添えいただける若手医師が増えないかなーーーーと、ひそかに想いをめぐらせています。やっぱり未来は若者が切り開くものだから、若者を大事にしないと。

Special thanks to young colleagues, Drs. General, No.1, Mathkana, and Sweetpea (AKA: Sharan-Q).  本当はSchreiberだけに独逸語で書きたかったのだが、かなり忘れて書けない・・・ あんなに苦労して勉強したのに(;_:)