市民活動総合情報誌『ウォロ』(2013年度までブログ掲載)

ボランティア・NPOをもう一歩深く! 大阪ボランティア協会が発行する市民活動総合情報誌です。

2008年11月号(通巻440号):レポートL

2008-11-01 15:34:18 | ├ レポート
未来の「日常」へ
『ポレ壁』プロジェクト

編集委員 村岡 正司

 市民派映画館「ポレポレ東中野(東京都中野区)」。その支配人大槻貴宏さんの呼びかけにより、映画『ひめゆり』、監督の柴田昌平さんやボランティアが中心となり、今年6月23日の沖縄慰霊の日にひめゆり学徒生存者、若い世代のゲストたちを迎え、トークイベントを開催した。また、6月の特別上映期間に並行させ、初の試みとして「ポレポレ壁プロジェクト(ポレ壁)・アオイソラ ヒロイウミ」を企画実施した。
 戦後、沖縄で子どもたちの青空教室が始まったときに配られた初めての教科書。その最初の1ページに書かれていた言葉が「アオイソラ ヒロイウミ」だった。生き残ったひめゆり学徒にも、教師としてその1ページをめくった方が多くいたことにちなみ、「百年後に贈りたいなにかを、空色か海色を使って作る」「百年後の毎日に贈りたいことをハガキに書いて送る」作品を市民公募。劇場に下りる階段の壁を使って、集まった作品を展示しようというものだ。
 映画を観に来た人たちも、ひめゆりの真実に触れた後、戻っていく場所は特別な場所ではなく、人それぞれそこにある日常。未来は毎日の繋がった先にいつもある。『ひめゆり』を感じながら、いろんな人の存在を感じながら、『アオイソラ ヒロイウミ』の空と海の色で繋いでみたいと、考えたのだ。
 反響は上々、全国から集まった若い世代を中心とした作品は多くのボランティアの手により “ポレ壁”を埋め尽くした。また締め切り後も応募は途切れることなく続き、6月23日のトークイベントの日、会場に展示された。
 映画に寄せられる感想や、ボランティアスタッフの中にも、時々「わたしにできること」を考えて陥ってしまったりする無力感や罪悪感がある。でも肩肘張らずに、映画を観た人が各々の想いを表現し共有する場を作りたいと柴田さんは思っている。『ひめゆり』に込められた祈りは、きっと一人ひとりの毎日に贈られているものでもあるのだ。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿