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ある日、超能力に目覚めた件 第二章 第二話part2

2024-07-16 23:53:37 | 日記
 ストライクツー、あと一回でもストライクがキャッチャーミットに入ったら三振だ。流石にもう無理じゃね? と思ってる野々野足軽だが、父親の方は「まだ……まだだ」とか呟いて血走るような目で画面を見てる。そんな父親を見て「こわっ」とちょっと引き気味の野々野足軽である。
 けど自然と野々野足軽も画面に目が行ってしまう。なにせあれだけ言われてたんだ。この絶体絶命の状況でももしかしたらホームランを叩き込むかもしれない。そんな事を思いながら見てると、実況の人がピッチャーが動き出したのに合わせて――
 
「ピッチャー平井、投げた!」
 
 ――といった。そしてその直後だ。バッターとピッチャーを同時に映す関係上、そこそこ遠かったカメラが気持ちのいい音を拾った。
 
 カキーン!!
 
「園田、打ったああああああああああ! その打球は伸びる伸びる伸びる! はいったあああああああああああああああああああああああ!! ホームラン!! ホームランです!! 園田再びボールを場外に運びました!!」
 
 興奮冷めやらぬ……と言うのか、実況の人の熱狂か暑苦しい。けど甲子園はこのくらいの熱量が普通なのかもしれない。それをウザイとおもう野々野足軽はこういうスポーツ観戦に向いてないんだろう。
 
「うおしっ! どうだ!! 観たか足軽!」
 
 隣の父親がご機嫌に酒をあおってバシバシとしてくる。それを迷惑そうにしつつ、野々野足軽は「見てたからわかってるよ!」と抗議する。
 
「いやーやっぱり凄いな! これで何本目だ? 絶対にプロでも活躍するぞ!」
 
 まるで自分が関係者みたいに言ってる父親の態度がよくわからない野々野足軽だ。一体お前は何目線なんだといいたい。別にさっきのバッターの関係者でもないだろうに。ただの野球ファンが何をいってるんだ……とね。それからも彼は自分の打順が来るたびにホームランを叩き込んでた。この試合だけで合計八本くらいホームランを叩きだしてた。
 
「凄すぎね? これなんか対戦相手が可哀想なんだけど?」
 
 野々野足軽は別にどっちも知らない学校だ。甲子園だって今年の夏、初めて観たに等しい。やってる事は知ってたが、わざわざ観るかと言われたらそんな事はない。だからこそ、圧倒的に勝ってる側ではなくて、ボロ負けしてるほうに感情的に寄ってしまう。勝ってる側のファンなら素直に勝つことを喜べるんだろうが、そうじゃなかったらついつい負けてる方を応援してしまうのは人の性だろう。
 けどそんな野々野足軽の思いなんて空しく、負けてた側はそのまま負けた。これで彼らの夏は終ったのだ。それだけじゃない。三年生はこんな理不尽な試合で頑張ってきた三年間が終わりを告げた。実際彼らの三年間なんて全く持って野々野足軽はしらない。
 でもきっと部活に打ち込んできたんだろうってことはわかる。なにせ部活をやってる奴らは大変そうだだからだ。けど充実してそうでもある。仲間たちと一つの目標へと進む。それはきっと尊い事だし、負けたからといってその輝きが褪せることはないだろう。でも……これはあんまりでは? と野々野足軽は他人事ながら思った。


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