goo blog サービス終了のお知らせ 

カリフォルニア便り ーFROM OQ STUDIOー

~南カリフォルニアから~
陶芸家の器と料理、時々王様の日々

個性的な花器

2011年03月08日 | Ceramics

日本で暮らす私の父は、家族の為に野菜を作る事をライフワークとしています。

自分の家の庭で栽培された野菜を食べることが出来るなんて幸せな事。

それは家族皆が判っていて、感謝しているのです。

だけど・・・・・

家庭菜園というのはレストランのサラダバーみたいに、

いつでも色とりどりのバラエティーに富んだ野菜が有る訳ではないのが難点。

キャベツのシーズンにはキャベツばかり、キュウリやナスも然り。

毎日毎日同じ野菜が収穫され、食卓を預かる女性陣はその処理に頭を悩ませてしまうのです。

そしていつの間にか自然の恵みに対しても、父に対してもも感謝の気持ちが薄れて行く。。。。

ああ可哀想なお父上!でも家族の気持ちも解ってしまう私。


我が家のお花も父の野菜と同じこと。

フリージアの季節はフリージアばかり。間もなく薔薇ばかりの季節もやって来ます。

どんなにその香りが素晴らしくても、その姿が可憐でも、

フリージアはフリージア。しかも全部黄色。

命の限りに一生懸命咲いているお花をそんな気持ちで飾ったらバチが当たるね。

だから少し主張のある花器を使って、同じお花を違う雰囲気て楽しんであげたくなります。

二つの壺がくっついた形の花器。

私が作った物では有るけれど、

デザインはネイティブアメリカンが古くから使っていた器がヒントになっています。

例えばオリーブオイルとビネガーを入れたりして使うのです。

その形を写真で見て面白いなと思い、私なりにデザインして花器に。

二つの壺を別々に作ってからくっつけて、ハンドルを付けるので、中は別々。

先週は溢れんばかりのフリージア一種で贅沢な花あしらいを楽しんだので、

今回は、この花器を使ってちょっと雰囲気を変えてみようと思います。

 

右側の壺には線を活かしたアレンジを。

開き始めたジャスミンとツルもの2種類を庭から切って来ました。

塊で生けていたときとは違い、フリージアの繊細さが透け感の中に出ています。

 

そして左側の壺には茎の動きよりもフリージアの鮮やかな黄色を活かすアレンジを。

根元はもう花も終わりかけのカランコエの赤で絞めてあります。

鮮やかな赤と黄色のバランスを取っているのは深い緑の葉。これも玄関先から失敬。

 

全体はこんな感じに仕上げました。

花材は少ないですが花器自体に個性があるので、

これくらいの分量がちょうど良いかと思います。

左右のアレンジが違いますが、全体を通してフリージアがまとめ役をしてくれています。

慣れないと使い難い花器ですが、どう使うかを考える事も楽しいものです。


今回は写真が無いのですが、

私はこれにローズマリーやバジル、パセリなどを入れてキッチンに置いたります。

ブーケガルニは主に煮込み料理などに使うハーブの花束ですが、そんな感じ。

何種類かのハーブを水に生けておくと、ちょっとちぎってサラダやスープに添えたり出来ますし、

ハーブは触れるとフワッと香りが立ちますから、キッチンに立つのが楽しくなりますね。

ハンドルが付いているのでお料理と一緒に食卓に持って行ったりもします。

ハーブ類が苦手なゲストも居ますから、お好みでちぎって使っていただけます。

 

花器には限りませんが、個展などで個性的な器と出会った時その使い方を尋ねてみて下さい。

作家の方は様々な思いで日常を楽しんでいただく為に思いを込めて作られています。

その思いを知ることで、一層愛着が湧く一品になることと思います。



 


うつわ冥利

2011年02月21日 | Ceramics

言わずと知れた芸術性の低さを別にしても、

私の作る器は眺めて楽しんでいただける種類の物ではないと思う。

なぜなら使い手によって使われて始めて完成される器だから。

どんな花も、どんな食材も受け入れる事が出来るように、

どんなインテリアにも、どんなお洋服をお召しになった方にも似合うように、

それが私の思い。


私の器を幾つかお使いいただいている日本画家の女性から、

とても嬉しい言葉を頂いた。

” 貴女の器が我が家にやって来てから、

私は毎日貴女の器の為の一品を作るようになりました。

貴女の器がテーブルに出ていない食卓は寂しいのです。”

こう言っていただくと、陶芸をしていて良かったと心から思う。

きっと器も、うつわ冥利につきているに違いない。

少々手荒でも構わない、とにかく使っていただきたい。

それが私の心からの願いなのです。

 

 

くるんと巻いた耳の付いた浅鉢を作った。

外側は光沢のある天目で、フチと耳は赤。内側はベージュ。


同じお料理(お手製ミートソースね)を違う器で比べてみると・・・・

これは、来客用に沢山そろえてある市販の陶器の洋皿。

で、こちらが私の新作。

どちらの器がしっくり来るかのお好みは、もちろんそれぞれなのだけれど、

器の違いで同じお料理が違う表情を見せてくれると思うのです。


色とりどりのカラートマトを盛ったり、

お庭で採れたグレープフルーツを使ったツナサラダを盛ってみたり。

スープボウルやカレー皿にもちょうど良い大きさです。

どうかどうか、この器達も誰かに愛されながら使っていただけますように

 

この器を作ってしばらくして、美術館に行ったら、

こんな物を発見しちゃった。

当然私の器より、かなりアーティスティックだけれど、

なんとなく『あれ、気が合うね』と嬉しくなった

 

 


ファッションとデザイン

2011年02月13日 | Ceramics

ファッション雑誌はマメにチェック。ほとんどの場合は陶芸家目線でね。

なんでも自分の作品に結びつけてしまうのは、物作りをしている人のサガみたいなもの。

お洋服も大好きだけれど、その話は機会があったらまたいつか。  

 

このお洋服を見て、ステキ~とか、欲しい!絶対買う!とは思わないとしても、

何かが私にサインを送ってる

そう思ったらとりあえず切り抜く。で、ノートに貼る。

そしてこのファッションに似合いそうな、

もしくはインスパイアされたデザインをスケッチ。

 

技術的に可能か?とか使い勝手がいいか?とか考えずに描いてみる。

大きなリボンが持ち手になったコーヒーカップと、

パラソルをひっくり返したみたいなヒラヒラのソーサー。

How Lovely !

こんな風にして、私のデザインブックが出来上がって行くのです。

何時の日か、このスケッチが作品になるのかならないのか・・・・・

形を作る事は出来ても、使いづらいものは作りたくないから、

結局お蔵入りになってしまうデザインも沢山有るけれど、

カップ&ソーサーは無理でも、花器ならイケるかな?とかずっと考え続けてる。


そんな私は今日もウキウキとスケッツブックを開くのです。

結構楽しいんです

 


茶香炉 ~空がピンクに染まる時~

2011年02月12日 | Ceramics

夕焼けって奇麗だな。

真っ青だった空がドラマチックに変化して行く様子をじっと眺めるのが好き。

夕暮れの始まりはピンク


以前から依頼を受けて一日延ばしにしていた茶香炉を作った。

写真等を見ると様々な和の茶香炉があって、どれも素敵。

焼き締めの気品のある茶香炉は凛とした趣がある。


さて、和とも言えない私が作るなら。。。。。

こんなのがいいな。

辺りの空気全体がピンクに染まって行く一瞬を表現してみたい。

 

基本的に茶香炉は日本の煎茶をお使いになる方が多いのかな?

実は中国茶もまた違った香りが楽しめますよ

そんな使い方も出来るように、

中華点心の桃のおまんじゅうみたいな形にしてみたよ。

昼間の日差しで見るとピンク色。

葉っぱのお皿を外してキャンドルホルダーにも。

 

でもねえ、作ってみて判った事が有る。

作るのすご~く大変なのね、茶香炉って

もうイヤだな またのお越しを!


雪のコーヒーカップ

2011年02月07日 | Ceramics

最後に雪に触れたのは何時だろう?

子供の頃は一緒に暮らしていたのにね。


粉雪をかぶったような、白いコーヒーカップを作った。


 

 

コーヒーカップって器類の中でも、使う人の目に一番近づくもの。

だから至近距離で見たときに、ちょっと楽しい物を作りたい。

この ” 雪のコーヒーカップ ” にはハンドルの上下にエンブレムを付けたよ。

そこだけ雪が溶けていて、

『この下にはちゃんと土が有りますよ』って伝えられるようにね。


私には他の作家さんがお作りになった作品を見る時、

その作品が仕上がるまでの行程を数えるクセが有る。

例えばコーヒーカップは、シンプルな物だと本体とハンドル、その組み立て作業で3工程。

その後、シンプルに釉薬を掛けて焼く。

そういうスピード感の有るものも素敵

それに比べると、私の作る物は信じられないほど行程が多い。

大量生産には到底向いていない。

特にコーヒーカップ。本体のロクロはたった5分。

なのにその後マグの形になるまで、行程は数えたくない程多い。

12個程仕上げるのにほとんど一日かかって、疲労困憊。

一日百個もの器を仕上げておられる職人さんが見たら、呆れられてしまうだろうな。


でも、私はコレからもこうやって作って行こうと思う。

忙しい日々の中での、せっかくのコーヒータイムだもの、

少し余分な仕事をして、使う方にちょっと楽しんでもらえたら嬉しいし、

なにより作っている私自身が楽しい。

 


 

美味しいコーヒー、飲んでますか?