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カリフォルニア便り ーFROM OQ STUDIOー

~南カリフォルニアから~
陶芸家の器と料理、時々王様の日々

一枝を生ける

2011年05月18日 | Ceramics

庭で植木の剪定をしておりましたバーテンダーが、

「これ、お願いします」と一枝の花を持って参りました。

彼は庭仕事中、こうして捨てるのに忍びない草木を持って来ます。

かしこまりました。生けましょう。

今日は彼が大好きな『トウネズミモチ』です。

通常は丸く仕立ててしまいますので、花を咲かせない方も多いのですが、

この花が大好きな彼は、開花を待って剪定します。

木犀科に属するこの花の香りは、ちょっと他に無い味わいがあります。

可憐で香水やアロマキャンドルにしたくなるようなフェミニンな香りではなく、

甘やかな香りの後ろから木や土の香りが追いかけて来るとでも表現しましょうか。

バーカウンターにこの一枝を生ける為に焼いた小振りなカップです。

夕暮れ時に香り始める一枝は、バーカウンターに相応しいのだそう。

お酒が一層美味しくなるのだそうですよ。

こげ茶色の力強い枝の先に咲く、白い小花。

さりげなく一枝を添えるのなら、一輪挿しのような壺形よりも、

水を見せながら生けるものが似合うと思います。

このカップなら、素朴にして力強い花にしっとりと馴染んでくれます。

普段はひとくちビールや焼酎のお湯割り等に使っています。

夜のカウンターのほの暗い照明にもよく似合っていると思います。


今日は一日お疲れ様。

さ、あなたの好きな花と差し向かいで一杯召し上がれ

 


カフェオレボウル

2011年05月01日 | Ceramics

 

カフェオレボウル ” 目覚めの赤 ”


カフェオレボウルを、とのご依頼を頂き制作いたしました。

朝の優しい日差しに映える柔らかな色の物も考えましたが、

朝日の中で考えておりましたら、我が家のダイニングに差し込む初夏の日差しに負けない、

パキッとしたものが良い気がして参りまして、

カフェオレのまろやかな色に合う、こくのある赤を選びました。

カフェオレボウルは何故このような形なのか?

もともとはスープボウルをコーヒーを飲む為にも使っていたという説も有りますね。

ともあれ実際に、由緒正しく伝統を重んじるカフェでは、

<http://www.robin-coffee.com>

 

このような道具を使い、左右の手で同時に非常に高い位置から

ミルクとコーヒーを注ぐという見事な技で、

カフェオレをサーブして下さる小粋なカフェも有ります。

お使いの方が、この美しいサーバーをお持ちかどうかは別として、

あえて今、『カフェオレボウル』と仰られたこだわりに叶う物でなくてはね。

実際にこのような道具を使用したサーブの仕方を見ますと、

器の間口が狭いと的が外れ、テーブルの上は大惨事となってしまいかねません。

ですので、抹茶茶碗のように若干口を締めてある形は止めておきましょう。


観察の結果、このようなボウルでカフェオレを召し上がる方々は、

両手で包み込むようにボウルを持ち、必然的に中を覗き込む事になりますので、

外側には滑り難いのと同時に、熱さがダイレクトに伝わり難いように削りを入れ、

内側には使う方の為に、ちょっとした遊び心をと思いまして、

今や私のシグネチャーデザインになりつつ有るエンブレムを付けました。

釉薬の上を滑る性質のあるブルーを重ねて、動きを出してあります。


さて、このカフェオレボウルが本来の使われ方をするのは何時までなのでしょう?

いずれはシリアルボウルやスープボールとしてその役目を果たすような気もいたします。

作り手の私の気持ち?・・・・・

いかようにも、とにかく使って頂ければハッピーでございます。

 


Paper Cup

2011年04月27日 | Ceramics

 

 

ガラスはプラスチックより優れているのかな?

ガラスと比べてプラスチックは味気ないのかな?

 

 

土は紙よりも味わい深いのかな?

土の方が紙よりも美しいのかな?

 

 

プラスチックでなければ果たせない役割がある。

紙の創り出す表情の面白さや美しさがある。

 

オン・ザ・ロック


プラスチックみたいに軽くて、

ガラスみたいにクールな口当たりで、

紙みたいに自由自在に陰影を描き出す、

土で出来たカップ。


愛情と好奇心のフィルターを通せば、

全ての素材が美しく面白い。


しばらく紙を追いかけてみようかな。

 

 


せせらぎ

2011年04月17日 | Ceramics

水の器 ”せせらぎ”

 

ここのところ蓮作で作っております水の器シリーズから、

小振りな角皿”せせらぎ”です。


『梅花藻』と呼ばれる植物をご存知でしょうか?

澄んだわき水にしか咲かないと言われる、それは優しく美しい花です。

私の古里の程近くに川の源流が有りまして、そこで見ることが出来ます。

光に照らし出された清らかな砂地からプクプクと水が生まれ、

そこからサワサワと川が始まる様子は夢のような世界です。

そのせせらぎの中に梅花藻が静かに揺れているのです。

いつか、それを器にしてみたいと思っておりました。


銘々皿として和菓子等にどうかな?と思ったのですが、

今夜は2色の奇麗な色のトマトのマリネをワインのお伴にいたしました。


 

梅花藻の棲むせせらぎは、私達二人にとりまして、

とても美しい思い出の風景です。

いつかまた見に行きたいと、春が来る度に話しています。

今夜は美しい思い出話の花が咲きそうです。

 

 


お道具

2011年04月14日 | Ceramics

お道具とはなんでしょう?茶道で使われるお茶道具ではないですよ。

 

とある方が、色々な物の名称に『お』を付けるのです。

材料、糊、箱、色、見本、道具・・・・・

これはやはり女性らしさの象徴であり、上品である事の証なのでしょうか?

モノに『お』を付けて呼ぶとどんな気持ちがするのか、

私も「お道具」と言ってみました。

個人的には特に素敵な気持ちにも、上品な気持ちにもならなかったので、止めます。

単に私が使う陶芸の道具のお話です。

 

美しい画像では有りませんが、このように道具は色々使います。

その中で、とりわけ私には絶対必要だけれど、

他の作家の方はもしかしたら使わないかもしれない道具がこれです。

左から、チーズ削り、蜂蜜をすくう棒、アイスキャンディーのスティック、

そしてそして右の金属の2種類の細長い物は歯科技工士さんの使われる道具です。

この歯科技工士さんの道具2種は私にとって必需品。

まさに『』を付けたくなる有り難~い道具です。

先日、和食界で注目されている若手料理人の方が、

外科医の手術道具のカタログをニヤニヤしながらご覧になっているのをテレビで拝見し、

一瞬不気味な光景ですが「解るわ~、その気持ち」と思った次第です。

医療道具は精密さとか強度とか、他の分野の道具とは比較にならない使い心地なのです。

人様の命に関わる処置用の道具ですから、どんな細かい事でもこなせるのです。

例えばこれは、今製作中のマグなのですが、

本体には深い削りを入れ、ハンドル部分に繊細な草の模様を施しました。

こういう事は、この道具無しには少なくとも私には不可能です。

このような作業は、土の乾きを微妙に調整しながら黙々と削ったり彫ったりするのですが、

この際にもうひとつ、大変重宝しているのが、スタジオの天井に取り付けたこちら。

 

写真では高速で回転しているので羽が見えませんが、シーリングファンです。

ここから吹き付けて来る風の強さをコントロールしながら、

作業のし易い土の乾き具合をキープすることが出来ます。

私のスタジオを快適にする為には残念ながら使えません。

土のご機嫌次第ですから。

私の道具のお話でした。


では