松下啓一 自治・政策・まちづくり

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○協働で空き家問題に・島根県江津市の取り組みを例に (1)概要

2016-05-03 | 空き家問題

 協働で空き家問題に取り組む・島根県江津市の取り組みを例に考えてみよう。とても1回では収まらないので、断続的に、何回かに分けて紹介しよう。頭が十分に整理されていないので、話は前後すると思う。

 島根県江津市政策企画課の中川哉(かなえ)さんとは、二度ほど、大津の研修所でご一緒した。江津市のまちおこしをリードしている方である。まちおこしでは、どこも女性が元気なのが特徴である。

 なぜ、元気なのかについて、同じように活躍しているA市のBさんに聞いてみると、「女だからといって、ライバル視されないから、職場でつぶされないのでは」と言っていた。面白い。それもあるかもしれないが、これらの人に共通なのは、子どもや家族を通じて、地域に密着していることである。足が地についているから、人事異動等があっても、活動を継続できる。そして、結局、頼らなければいけなくなり、また、その担当になる。

1.江津市でも、空き家問題に取り組んでいるが、空き家はまちおこしのツールに過ぎない。竹田市と同じように、移住・定住促進のための空き家対策であることである。

 江津市の空き家対策の特徴は、協働型であることである。
①空き家利活用のニーズはある。
 ・
定住希望者や田舎暮らしをしたいというニーズはかなりある(空き家を借りたい)。
 ・他方、空き家は、ふえており、地域のお荷物にもなっている。
 この2つをマッチングさせれば、うまくいくはずである。

②ところが、だれも貸して(売って)くれないため、ミスマッチが生まれている。
 ・行政は不動産の素人で、知識、ノウハウがない。なんとか覚えても、数年後、人事異動で変わってしまう。何よりも、法的リスクが高いため、できることに限界がある。
 ・NPOが一生懸命やっても、なかなか相手にされない。「NPOの者です」って言っても、寄付を強要されるのかと思われてしまう。宅建の資格がないので、法律違反となる場合もある。
 ・不動産業者の場合は、何か商売に利用されるのではないかと身構えられてしまう。

③三者が強みを出す
 ・行政の信頼性
 ・宅建業者の専門性
 ・NPOの柔軟性

 このそれぞれの強みを出すことだろう。その意味で、空き家対策は、そもそも協働がなじむ政策課題である。

2.空き家活用のプロセスの中で、関係者のかかわりを見てみよう。江津市の実践例である(以下は、中川さんの報告から)。

(ステップ1) 空き家の調査・登録 
 
空き家の調査・登録のステップでは、空き家所有者の賃貸・売却などの意向確認や条件整理が重要な作業になる。
★このステップでは、市(行政)が中心的な役割を担う。
 
私財を託すことに対し、行政の社会的信頼性が有効
 
空き家の情報化(物件化)が容易*固定資産台帳など公用申請で入手
 ③地域コミュニティの協力が得られる

(ステップ2) 定住相談と情報提供
 
定住相談と情報提供のステップでは、市と宅地建物取引業者(協力企業3社)が連携して、定住相談や空き家紹介に応じることができるよう窓口を開設する(NPOなど中間支援組織も有効)
 
・情報提供・・空き家バンク(インターネット)
 
・空き家見学・紹介・・市職員と宅建主任者
 
・無料職業紹介・・ワーク・ステーション江津 *市とハローワークの嘱託職員が常駐
 この人員配置を見ると、江津市は、働く場所と住むところをセットで考えていることが分かる。

(ステップ3) 空き家の賃貸・売買契約
 
契約のステップは、宅地建物取引業者が中心となって進められる。市職員も移住者の定住支援のため、契約の場に立ち会う。契約が終了し、空き家への入居が決まったら、空き家が所在する自治会の自治会長などへ移住者を紹介する。
 
*このステップは、宅地建物取引業者が中心的な役割を担い、契約は、宅地建物取引業者が通常の業務として行う。

3.まとめ
(1)
空き家活用事業の考え方
 空き家活用事業は手段であって、目的ではない(不動産業者との違い)。

 
過疎化・高齢化の進展により、空き家が増え続けている。これを逆手にとり、定住促進や地域の活性化へつなげる。 空き家は「地域資源」と考える。
 
農山漁村への移住希望者がいる。空き家(庭・農地つき一戸建て住宅)を利用したいというニーズが多い。
 ③「守り」の定住(農山漁村の人口を維持するための施策)と「攻め」の定住(「人材」に的を絞ったU・Iターンの促進)のいずれにも、地域に豊富にある空き家を活用する
 ④空き家対策事業にはリスクがある。その覚悟は自治体ごとの判断(行政が紹介した空き家について、入居者のトラブル、紹介する空き家の多くは、旧耐震基準である)。リスクにも適格に配慮したうえで、メリットを取っていく。
 ⑤空き家問題は、行政の権力的手法ではとても対応できない。協働型のまちづくり行政が不可欠である。


(2)
空き家活用事業と協働
 
農山漁村部の空き家など不動産の取引(賃貸・売買)は、不動産「業」としては成立しにくい。不動産業者のほか、行政や地域コミュニティが参画しなければ農山村の空き家は流動化しない。
 
宅建業者(不動産取引の専門家)、地域コミュニティ・NPO(地域密着性)、行政(社会的信頼)が、それぞれの機能を活かし役割分担することで、空き家の活用が円滑に行える。

4.成果
 平成18~23年度 空き家活用実績
 空き家を活用した移住者数  62件(家族)160人


 

 

 

 

 

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