松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆罰則のない努力義務だけの条例は意味があるか

2022-07-25 | はじめての条例づくり
 罰則のない努力義務だけの条例は意味があるか

 1、こうした条例が増える理由
 近年、こうした条例が増えてきた。これは自治体の仕事が変化したためである。
 これまでならば,政府が担当する公共課題は、権利・義務の権力関係で規律できるものが中心であった。この場合は、罰則等の規制的手段が有効である。しかし、豊かな社会になり、社会問題も複雑化・高度化してくると、いままで私的自治に委ねられていた課題が、公共課題として、自治体の守備範囲に入ってきた。たとえば、空き家問題である。空き家問題は、個人の所有権の問題であり、本来は私的自治によって解決されるべきであるが、これも公共課題として、自治体に解決の手助けを求めるようになってきたのである。
 
 この私的世界に属する公共課題を、自治体が権力的に抑え込もうとしても解決することはできない。空き家問題で言えば、自治体が、罰則等の規制的手段によって解決しようとしてもできないからである。その解決には、空き家家の所有者のほか、自治会・町内会の地域団体、NPO、企業等の連携・協力がなければ、解決に近づくことはできない。つまり、課題解決に向かって、関係者が努力しないと、問題が解決しない。近年は、こうした関係者の努力によらなければ解決できない政策課題が多くなってくるなかで、条例も、これら関係者の努力義務を課したものが増えてきた。
 
 2、条例の実効性は、条文の表記からでてくるものではない
 条例の効力(実効性)は、条文の表記から生まれてくるものではない。条文は、氷山で言えば、海の上にわずかに出ている部分で、海の下には、数倍の氷の塊がある。その塊が大きければ大きいほど、タイタニック号を沈めることができる。つまり、条例も政策の一形式なので、条例のバックには、各種施策や事務事業という裏付けが必要で、こうした裏付けの有無が、条例の実効性の決め手である。

 たとえ、条文に厳しい言葉を書いても、それによって、条例の効果が発揮されるわけではなく、その厳しい言葉を実行する裏付けがなければ、結局は絵に描いた餅になってしまう。逆にいえば、理念条例のようなものも、その理念の後ろに、実効の仕組みや活動があれば、実効性のある条例になるし、罰則規定を定めても、それを実効できる裏付けがなければ、実効性のない単なる文字になってしまう。努力規定の条例も基本は同じで、その努力を裏付ける実行の仕組みが活動があれば、効果を発揮する。大事なのは、こうした裏付けをつくる作業である。


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