松下啓一 自治・政策・まちづくり

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○固定資産税の軽減措置と空き家(三浦半島)

2016-04-03 | 空き家問題

 固定資産税の負担軽減措置が、空き家のまま放置する原因の一つになっている。この問題を気楽に調べ始めたが、実に複雑で奥が深い。自分なりの整理が、どこまで正しいのか、あまり自信もない。そこで、このブログでは、メモ的な紹介になってしまう。

1.土地や建物といった不動産には、固定資産税がかかる(税額は課税標準の1.4%)。 しかし、建物が建っていれば200m2まで6分の1、200m2を超える部分に対しては3分の1に軽減される。

 150m2、課税標準額2,000万円の土地の例では、更地の場合は、2,000万円×1.4%=28万円であるが、建物があれば 2,000万円×6分の1×1.4%=約4万6,600円になるので、ともなく空き家であっても、建物さえあれば、固定資産税は毎年約23万円も安くなる。

2.この負担軽減措置のきっかけは、1964 年度の固定資産評価基準制度の創設である。当初は暫定的に設けられたが、1966 年度からは継続的に実施され、今日にまで続く恒久的な措置となっている。

 この負担軽減措置の推移に関する議論は、宅地の評価方法の変化などの背景があって、やや複雑であるが、一貫して言えるのは、事実上の増税(急激な)を避ける、あるいは税負担の激変を避けるという趣旨から導入されている。 

 (詳しく)
 
土地の適正な時価は、「正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格、すなわち客観的な交換価値」とされる。ただ、固定資産税の課税標準は、市場における取引価格がそのまま用いられるのではなく、固定資産評価基準に基づく資産評価の手続きによって評価額が算定さあれる。宅地の場合、1994 年度の導入された7 割評価の考え方を踏まえて、地価公示価格の7 割の水準を目途として評価額が決まる。

 当時は、土地の実勢価格(実際の取引価格)と課税標準額との格差は大きく、実勢価格に対する課税標準額の割合はおおむね3 割程度だった。それを7 割まで引き上げると固定資産税が急増・激変してしてしまう。そこで、負担増を調整する措置として、住宅用地に対する課税標準の特例率(小規模住宅用地は6 分の1、一般住宅用地は3 分の1)という考え方が出されてきた。

 この負担調整の問題は、固定資産税の性格論と関係する。固定資産税を財産税と考えるか収益税と考えるかである。これは、なぜ固定資産税を取ることができるのかという問題である。

 固定資産税が収益税であるならば、税負担の変化は必ず収益の変化に伴うものであるので、収益の急増によって税負担が急増したとしても、担税力は確保されているはずだから、税負担を調整する仕組みは必要ない。

 しかし、実務では、固定資産税は財産税として組み立てられている。税負担と担税力は連動していないから、急激な税金額の増加に国民が耐えられるように、負担調整措置を考えることになる。

3.これまで、この制度はそもそも、「まだ高度成長期で住宅数がまったく足りないころに、市街地の空き地に住宅を建ててもらうために創設されたもの」と思っていたが、それとは違うということである。

 こちらの方は、固定資産税の新築住宅に対する軽減措置(2分の1)で、もともとは、第 2 次世界大戦による極端な住宅不足の解消 のために発せられた1952年の「新築の専用住宅に対して課する固定資産税の軽減について」 という通達が出発点となって、1960 年代の高度成長に伴う都市部を中心とし た住宅需要の高まりに対応して法制化され,今日まで続いている。

4.結論としては、「もう住宅は、余っているのだから、軽減措置は解除すべき」という議論は、正しくないということだろう。逆に考えると、特定空き家になって、市役所から勧告されると、軽減措置が解除されるという理論的説明は、必ずしも容易ではないということだろう。家があると、なぜ6分の1になるのか、その説明にさかのぼる。

(考える)
 直接的には、ぼろぼろの空き家になって、家が建ってるといえないから、軽減措置は受けれないということになる。ではなぜ家が建っていると、なぜ軽減措置が受けれられるのか。その場合の「家」の定義である。人の住まいで生存権的な意味があるので、軽減することにしようということだろうか。そこまで行くと、きちんと管理されていても、住んでなかったら、軽減措置の対象の家とはいえないという解釈もある。他方、ぼろぼろの空き家でも、刑法の家屋にはあたるので、固定資産税の軽減措置の対象の家の意味とは何かである。自分が住まないアパートを建てても、6分の1の軽減措置があるのは、なぜなのかということだろう。固定資産税とは何かの根本問題である。

5.三大都市圏以外の市街化区域農地で、農地をつぶして、アパートを建てるケースが目立っている。もっぱら節税対策である。イメージは高崎線沿線)。たくさんのアパートができたが、多くが空き室になっている(もともと高いニーズがあったわけではないので)。

 空き家問題は、「その他」の空き家が問題とされ、賃貸用で借り手を待っている空き家は大した問題ではないとされるが、賃貸用住宅にも空き家問題の予備軍がいるということである。

 さて、なぜ、アパートができるのかというと、三大都市圏の特定市街化区域農地は、農地に準じた課税が適用される。これは一見すると、都会の農地が宅地並み課税をされるのと比較して、税金が安いように見えるが、実際は、結果的には、宅地並みの課税と同じように課税されていく。都会ならば、生産緑地の指定を受けて、固定資産税が安くなるが、こちらの方は、この制度がないので、むしろ高くなってしまうという。

 国全体では、農地を維持していこうという政策がとられているが、結果的には、農地をつぶして、必要もないアパートをつくっていくという政策を採用していることになる。

 この辺りは、とても難しいので、さらに勉強しよう。

 最初に、金沢区役所に配属されたとき、私は住民登録だった。同じ新人でも、当時は、優秀な職員は税務課に配属された。当時の税務課は、税務手当がついて、人気があったので、優秀な人が集まったと同時に、このケースのように、確かに税制のことは複雑で、私のような大雑把な思考をする者には、向いてなかったのだと思う。

 自分自身に振り返っても、相続税対策など税金のことを心配する財産もなく、また実際、確定申告の際に節税なども考えたこともないのに、いくら研究のためとはいえ、もっとも苦手な税金のことについて、考えるのは、かなりしんどい。固定資産税の担当者からみると、私の議論は、基本的ことがすっぽり抜け落ちて、まだら模様なのだろうか。

   

 

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