とんでもなく不謹慎な作品として,知る人ぞ知る怪作であります。
とりわけ,日本人にとっては,極めて不愉快なものですな。
2044年8月6日に向けて,ゼイダー・スミス・ワールド社は,両アメリカ合衆国大統領の依頼により,世界最大のショウを請け負うこととなった。
ゼイダー社長は,部下の6人のエグゼクティヴを呼び出し,ショウの企画を競わせる。
出てきた案は次のとおり
・ 全世界の国家主席が参加する乱交パーティ
・ 電離層へのオーロラ文字
・ ストーンヘンジの再建とそのプラスチックモデルを月面に設置
・ 超CM爆弾による木星のミニ太陽化
・ 軌道上大エレクトロニクス万国博覧会
だがどれもトーラの案の敵ではなかった。
彼女のアイデアとは,…エノラ・ゲイの複製を持ってきて,それからどこか小さな国に原爆がまだ保存されていたら見つけてきて,世界中の人々が見守るなかでヒロシマにまた落とすんです,午前8時16分きっかりに!
どうです,何ともひどい話でしょう?
「原爆が戦争を食い止めた」だの,核兵器の禁止運動を「見当違い」だの,好き放題のセリフが飛び出す。
トーラのアイデアは,世界評議会の熱狂をもって受け入れられ,準備が整う。
原子爆弾は入手できなくて,水素爆弾になってしまったのだが。
そして,8月6日,全世界が見守る中,ヒロシマに再び閃光がひらめく…史上最大のショウに,日本人以外の世界市民の意見は一致した。
「これほどの偉大なできごとを人々は忘れてはならない。」
そして,アンコール!が要求されたのだ。
やがて,ナガサキ上空では…
筋を書くだけで,腹の立ってくる内容であるが,冷静に考えても,この作品が逆説的に,“核”を皮肉ったものであるとは思えない。
まあ,感情を抜きにすれば,種々の抑圧から解放?された未来の能天気な連中の,タブーなどどこかへ飛んでいっちまった様をピカレスク風に描いた傍若無人な作品とでもいいますか。
「SFマガジン」 1970年2月号掲載。
それにしても,こんなタブー・ブレーキングな作品をよく掲載できましたなあ。
今でも危ないのに,まして,36年前とは。
以前,キム・スタンリー・ロビンスンの「ラッキー・ストライク」という作品を取り上げましたが,対極の作品といえましょう。
とりわけ,日本人にとっては,極めて不愉快なものですな。
2044年8月6日に向けて,ゼイダー・スミス・ワールド社は,両アメリカ合衆国大統領の依頼により,世界最大のショウを請け負うこととなった。
ゼイダー社長は,部下の6人のエグゼクティヴを呼び出し,ショウの企画を競わせる。
出てきた案は次のとおり
・ 全世界の国家主席が参加する乱交パーティ
・ 電離層へのオーロラ文字
・ ストーンヘンジの再建とそのプラスチックモデルを月面に設置
・ 超CM爆弾による木星のミニ太陽化
・ 軌道上大エレクトロニクス万国博覧会
だがどれもトーラの案の敵ではなかった。
彼女のアイデアとは,…エノラ・ゲイの複製を持ってきて,それからどこか小さな国に原爆がまだ保存されていたら見つけてきて,世界中の人々が見守るなかでヒロシマにまた落とすんです,午前8時16分きっかりに!
どうです,何ともひどい話でしょう?
「原爆が戦争を食い止めた」だの,核兵器の禁止運動を「見当違い」だの,好き放題のセリフが飛び出す。
トーラのアイデアは,世界評議会の熱狂をもって受け入れられ,準備が整う。
原子爆弾は入手できなくて,水素爆弾になってしまったのだが。
そして,8月6日,全世界が見守る中,ヒロシマに再び閃光がひらめく…史上最大のショウに,日本人以外の世界市民の意見は一致した。
「これほどの偉大なできごとを人々は忘れてはならない。」
そして,アンコール!が要求されたのだ。
やがて,ナガサキ上空では…
筋を書くだけで,腹の立ってくる内容であるが,冷静に考えても,この作品が逆説的に,“核”を皮肉ったものであるとは思えない。
まあ,感情を抜きにすれば,種々の抑圧から解放?された未来の能天気な連中の,タブーなどどこかへ飛んでいっちまった様をピカレスク風に描いた傍若無人な作品とでもいいますか。
「SFマガジン」 1970年2月号掲載。
それにしても,こんなタブー・ブレーキングな作品をよく掲載できましたなあ。
今でも危ないのに,まして,36年前とは。
以前,キム・スタンリー・ロビンスンの「ラッキー・ストライク」という作品を取り上げましたが,対極の作品といえましょう。
「モンゴルの残光」の中でもイギリスに原爆が落ちたことになっていて、そこまで腹が立っていたのか豊田有恒と思ったりもしたのですが、さすがに書かれた年代が違っていたのでこれは私の勝手な思い込みにすぎませんでした。
オールディスとしては皮肉ったつもりだったんだろうけれども、そう思えないのはやはり当事者と被当事者という温度差なんじゃないでしょうか。
当事の言葉でいうならば「疑似イベント」物としてとらえられていた面もあるのかもしれません。なので案外当事だからこそ掲載できたのかも。
ほんとかどうか知りませんが,後年,オールディスがこの作品について質問をされた際に,かたわらのプール?に飛び込んで,遺憾の意を表明したとかなんとかいう話を読んだような記憶が…
戦争の記憶がどんどん薄れていくうちに,この作品のタブー度も薄れていくのかもしれません。
すでに,今の若い人の何割かは,たいして衝撃を受けないのかも。