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わしには,センス・オブ・ワンダーがないのか?

翻訳もののSF短編を主に,あらすじや感想など、気ままにぼちぼちと書き連ねています。

わたしは無~エリンク・フランク・ラッセル②

2025-02-24 23:26:06 | 海外SF短編
 エリンク・フランク・ラッセルといっても、ほぼほぼ忘れられた存在になっていると思います。  私もそうですが、2013年の創元の復刊フェアのラインアップの一つである、ラッセルの短編集「わたしは”無”」を買って積んでおいたのを、この正月にたまたま読んでみたところ、意外に面白く、紹介してみる気になりました。  最も有名な短編は、ヒューゴー賞受賞作の「ちんぷんかんぷん」(英語) . . . 本文を読む

「やせっぽちの真白き公爵の帰還」~ニール・ゲイマン②

2025-01-10 21:32:36 | 海外SF短編
 David Bowieがこの世を去ったのは、2016年の今日、1月10日でした。  私の住む京都には、ところどころに京都を愛したボウイの足跡が残っています。  1970年代後半、アメリカから欧州へと戻ったボウイは、「ロウ」(1977年)「英雄夢語り」(1977年)「ロジャー」(1978年)のベルリン3部作を仕上げる合間に、たびたび京都を訪れ、まるで地元人であるかのような時間を過ごしています。 . . . 本文を読む

SFマガジン 2025オールタイム・ベストSF「海外短編部門」発表!

2024-12-25 21:26:50 | 海外SF短編
  「SFマガジン」2025年2月号(第767号)は、創刊65周年記念として、オールタイム・ベストSFを発表しています。  2014年から10年ぶりとのことですが、オールドファンの私としては、その昔のオールタイムベストと比べながら、見ていきたいと思います。  1位、2位独占のテッド・チャンの実力、人気は抜きんでているという感じですね。  グレッグ・イーガンの、文系にも優しい3位「しあわせの理 . . . 本文を読む

スロウボート・マン~ディーン・ウェズリイ・スミス

2024-12-16 21:57:06 | 海外SF短編
「人生がどんなに長くても、あるいは短くても、ものごとには一度だけでじゅうぶんすばらしいこともあるわ。おやすみなさい、わたしのスロウボート・マン。おやすみなさい」 永い時を生きる吸血鬼の女性が、ただ一人愛した男性との出会いと別れを描き、小品ながら、ノスタルジックで愛おしく、心に残る作品です。 彼女は、幾たびの旅の途中、ミシシッピー川を運航する昔風の汽船の中で、水兵のジョニーと運命的に出会います。 こ . . . 本文を読む

バーナス鉱山全景図~ショーン・ウィリアムズ①

2024-11-27 21:03:34 | 海外SF短編
 鉱山の奥深く、わたしの足の下でゆっくりと自転しているのは、一つの惑星だった。「こんなこと、ありえない」途方もないエネルギーが大陸サイズの岩の塊を切り出す様子に、わたしは息を呑んだ。視点はかなりの高度で—少なくとも三万メートルはあり—その光景はまさに壮観だった。 失踪した兄マーティンの行方を追って、とある惑星の大鉱山へとやってきた主人公。 この「バーナス大鉱山」は、かつて異 . . . 本文を読む

第六ポンプ~パオロ・バチガルピ②

2024-10-30 21:24:45 | 海外SF短編
 「おまえはトログ並みのバカだな。ライターの火でガス漏れを調べるなんて、頭に脳みそはいってるか?ボケちまったのか?」   環境汚染が進み、人々は、有害物質にさらされ、添加物だらけの食品にさらされて、痴呆化と妊娠異常が深刻となっている、気の滅入るような世界で、かろうじて知力と良識を保ち、現場で社会を支えている人々の姿を描く作品です。 主人公のトラヴィスは、ニューヨークの下水処理施設に勤め、 . . . 本文を読む

タズー惑星の地下鉄~コリン・キャップ

2024-09-30 22:09:52 | 海外SF短編
 「埋もれた秀作をふたたび世に出したい」 宇宙探査SF傑作選「星、はるか遠く」(創元SF文庫)の巻末解説で、編者の中村融氏が語る、アンソロジーを手掛ける際のコンセプトです。 私も、SFマガジンなどに訳載されたきりで、忘却されるのは惜しいなあと思う作品を紹介するのは楽しいですね。 こういう作品は、マイナーな作家のものが多いのですが、この傑作選に拾われた、コリン・キャップの「タズー惑星の地下鉄」は、ま . . . 本文を読む

「監視者」~リチャード・カウパー

2024-09-19 21:07:54 | 海外SF短編
"監視者を監視するは誰ぞ?" リチャード・カウパー(1926~2002)を知る人はそんなに多くないでしょう。ジョン・ミドルトン・マリー・ジュニアという作家が、60年代中頃から、SFやファンタジーに主力を移した際に、別ネームとして使用した名前です。 彼の作品のうち邦訳されているのは、サンリオSF文庫から長編が2冊、短編が数編のみで、日本ではあまり話題に上がることもなかったマイナーな存在です。 「サン . . . 本文を読む

思考と離れた感覚~マーク・クリフトン

2024-07-17 21:25:43 | 海外SF短編
 コンピーター・リサーチ社なるところで人事部長をしているケネディ。 会社の研究者オーエルバッハ博士は、脳が記憶を蓄えるように、未知の超自然的な力を、現実の力に変換し、貯めることができる機器を発見しています。 この研究を発展させて「反重力」を手に入れようと、ペンタゴンは、幾人かの「超能力者」を送り込んで協力する手はずとなっています。 そして、ペンタゴンから、最初に、スワミなる人物が連れてこられます。 . . . 本文を読む

オープン・ロードの聖母様~サラ・ピンスカー①

2024-06-26 20:56:11 | 海外SF短編
 感染症の蔓延と、「生」ではなくても、ステージを手軽に楽しめるホログラムが音楽産業の主要なコンテンツとして「蔓延」したおかげで、ライブがすっかり廃れてしまった時代に逆らって、わずかに残るファンを相手のギグにこだわって、町から町へと、どさ回りの日々を送るバンドの物語です。 主人公は、バンドのリーダーである、中年過ぎの女性ロッカー、ルース。ベースのシルヴァ、ドラマーのジャッキーと、「カシス・ファイア」 . . . 本文を読む

「花の名前」~ケイト・ウィルヘルム②

2024-06-20 21:05:07 | 海外SF短編
 サッシー・フランシー:ユキノシタ科:ときにマザー・オブ・サウザンドとよばれる 仕事も一段落し、久々の休暇をニューイングランドで楽しんでいたウィンストン。愛車のサンダーバードを駆って、気ままな旅を続ける途中、アトランティック・シティを訪れたウィンは、海岸縁で、見知らぬ少女からアイスクリームをせがまれます。そして、翌日も、防潮堤で、同じ少女が現れ、会話を交わすことになります。 モーテルに戻ったウィン . . . 本文を読む

ロボットとカラスがイーストセントルイスを救った話~アナリー・ニューイッツ①

2024-05-26 15:27:34 | 海外SF短編
If human is angry, then Robot is sad.If human is rude, then Robot is embarrassed.If human is happy, then Robot is happy. 主人公は、感染症の蔓延を予防するため、エリア内を巡回し、住人の健康チェックにいそしむドローン型のロボットです。役目がら、人とのコミュニケーションをとることが大 . . . 本文を読む

エシア~クリスティン・キャスリン・ラッシュ②

2024-05-04 22:34:12 | 海外SF短編
 「まぶたをとじると、はじめて出会ったときの彼女の姿が目に浮かんでくる。小さくて、きゃしゃで、異様なまでに血の気のない肌と、目じりのつりあがったチョコレート色の目をしていて。髪は、雲のない晩に見る月のように白かった。」  月に建造されたコロニー同士の激しい抗争により、コロニーは破壊され、地球からの支援物資を奪い合う荒廃したありさまとなってしまっています。  取り残され悲惨な生活を送る居留者たち . . . 本文を読む

シュレディンガーの子猫~ジョージ・アレック・エフィンジャー②

2024-01-29 22:41:56 | 海外SF短編
 19世紀末のイスラム世界にあるまち、ブーダインのラマダン明けの祭礼の夜、貧民街の暗がりの薄汚れた路地に、12歳の少女ジハーンが誰かを待っています。  この夜からのジハーンの運命は、どのように展開していくのか、彼女にもわかりません。  一つの物語は、ジハーンがレイプされてしまい、婚資を当てにしていた父親や男兄弟から家を追い出され、街の女となり、次第に色香も失せて、ついには、この路地で野垂れ死ん . . . 本文を読む

ファン・ゴッホによる<苦痛の王>の未完の肖像~イアン・マクドナルド②

2023-10-16 20:57:29 | 海外SF短編
「<苦痛の王>は、喜びと悲しみの両方を、涙と笑いの両方を、成功と失敗の両方を、正気と狂気の両方を知っている者でなくてはならない。人間であるということがどういうものなのかを正確に知っている人物でなければならない。どんなに恐ろしくてどんなにすばらしいものであるかを知っている人物でなければならない。きみのような人物だよ、フィンセント」  未来の人類は、知恵と技術の発展による恵みを享受していましたが、一 . . . 本文を読む