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わしには,センス・オブ・ワンダーがないのか?

翻訳もののSF短編を主に,あらすじや感想など、気ままにぼちぼちと書き連ねています。

告解室にて~アメリア・B・エドワーズ

2007-03-06 22:40:45 | 怪奇・幻想系
 スイスはバーゼルの14マイルほど上手の,ライン河の左岸に位置するラインフェルテンという名のちいさな城郭都市。

 傷心を癒すため,旅を続けていた主人公が,ふとこの町に立ち寄り,はずれにある教会へと足を向けます。

 漆喰の壁と赤煉瓦の床,何の飾りもない簡素なたたずまいの教会。

 主人公は,人の気配の感じられない教会に足を踏み入れ,何の気なしに告解室の扉を開け,中に入るや,牧師が持ち場に座っているのを見て驚きます。

 失礼を詫び,ほうほうの態で教会を後にした主人公ですが,振り返った牧師の炯々とした漆黒の闇のような目が彼の心に焼き付きます。

 宿屋の主人から,昔,その教会での告解に絡む惨劇を聞いた主人公は,殺害された牧師の後を継いだ弟だという,あの牧師は,その悪夢のために少しく精神的に異常を来たしているのではないかと思うのでありますが…。


 「告解」…そのイメージには,人の心の奥底にしまわれている邪悪なものが渦巻いている,そんなおどろおどろしさがありますなあ。

 そのような「念」が長年にわたり積み重なり,独特の異様な場の雰囲気が濃厚に沈潜しているという感のある「告解室」。

 幽霊譚の舞台としては,もってこいの場所だといえるでしょう。

 作者のアメリア・B・エドワーズは,「幽霊駅馬車」という作品(「恐怖の愉しみ・下巻(創元推理文庫)に収録)が代表作といわれていますが,個人的には,「告解室にて」の方が,戦慄の度合いが高い作品だと思います。

 「告解室」の牧師が,最初は背中を向けていて,おもむろにこちらに振り返るところなど,見せ方を心得ておられるという気がしますなあ。

 情景描写が細やかで,物語の背景を陰鬱な空気で盛り上げる?のがうまい。翻訳も上手だと思います。

 「幽霊駅馬車」もそうでしたが,作者は,「目」に対する感覚が鋭敏です。

 「淑やかな悪夢」創元推理文庫に収録。
 1871年の作品だそうです。

 


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