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土屋龍一郎のブログ

土屋龍一郎のブログです。

これを読まず!「運命の息子」

2006-01-07 23:15:47 | これを読まず!
 ジェフリーアーチャーの小説が好きで、ほとんどを読んでいる。
 「ケインとアベル」シリーズ3部作が特に好きで、何度読んでも作者の仕掛けた深みにはまってしまって、泣かずにはいられなかったり、勇気をもらったりする。
 「運命の息子」(Sons of fortune)を、年末に読んだ。
 定期的に家族で行く深夜本屋で、上巻を買ったら本の虫である女房が一気に読み終えて、いつの間にか下巻も読み終えていたので慌てて追いかけて読んだ。いつものジェフリーアーチャー流のストーリー展開なので罠と知りつつはまりながら、一気に読んでしまった。何日かかけて読むつもりだったが、ほぼ徹夜してしまう。いつもそうだ。
 この本のAmazonのレビューを見ると、元からのファンは結構手厳しい。これらのレビューを見てから、もう一度思い出すと、やはり、いつも以上の唐突な展開やらスピードに無理があるかもしれない。どんどん登場人物が役目を終えて切り捨てられてゆく技はジェフリー流なのだが、確かにもっと性格を書き込んだ方が面白い人もいた。
 まあ、でもこのシリーズは、なんと言っても永井淳氏の翻訳の力がものを言っていると思う。レビューの中には翻訳の致命的な欠陥があると指摘している方もいて、今度は原書にも挑戦してみたいと思う。原書との比較はできないけれども、永井氏の日本語のリズムは淡々としているけれども大人を引きつけるテンポを持っている。徹夜させる勢いがある。
 生意気いうなと怒られることを承知で言うけれど、ハリーポッターシリーズの日本語は、原書との比較以前に、「おかしな日本語」で書かれていると思う。読みにくい。
 きっと、ジェフリーアーチャーに新刊が出たら買うと思う。
 ところで、「運命の息子」はAmazonのユーズド価格では、¥1である。

「富士日記」武田百合子はブログの元祖だ

2005-10-17 22:13:29 | これを読まず!
 武田泰淳の奥様である武田百合子氏の「富士日記」は、単なる日記文学(?)ではない。
 昭和39年7月4日から昭和51年9月21日までなんと13年間にわたる日記をおさめた、中公文庫全3巻はそれぞれが500ページ近い大作である。
 武田百合子文学にぞっこん惚れてから、朝に夕に晩に、すこしづつすこしづつ読み進めてきた。日記だからどこで切り上げても良いのが便利だった。
 最初の方の気負いがだんだん抜けて、リラックスしてくると武田氏の視点は読者に近付いて、まるで自分の生活が切り出されているように思えてくる。

 先日NHKラジオで日記を書くことについてあるリスナーが、「自分が死んだ後に読まれることを思って10年間分を読まれても良い文章に書き直した。そしたらそれ以降書く気が失われてしまった」と語っていた。いったい日記とは誰のためにかかれているものなのか分からなくなってしまったとのことだ。

 武田百合子氏の富士日記は読み終えて分かったが、壮大な恋愛私小説だった。夫である泰淳氏と娘である花さんを登場させて、食べたものと買ったものを書き連ね、日常の出来事を記す。その日記は時々日がとんでいる。ある年は2日間しか書かれていない。実はその年、泰淳氏が大病を患ったのだと、後から分かる。
 そして最後の一日はおそらくその後日体調を崩して泰淳氏が亡くなったと思わせるところで終わっているのだ。そういえば、家族で食べるものが13年間で大変に変化していることもあとから分かる。
これは、なんとすごい文学なのだろう。

 ブログの元祖である。

村上春樹著「東京奇譚集」

2005-09-23 20:28:16 | これを読まず!
 自称村上春樹フリークとしては新刊は初版モノで押さえたい。人より先に読みたい。例のAmazon.comで先行予約して「東京奇譚集」を購入。一気に読破した。
 だって、面白いんだもの。
 「僕は確かにフィクションの中では大胆な作り話をする」(P10)と書いている通り、羊男が出てきたり近所の井戸で不思議な体験をしたり、突然妻が失踪したりといったことを、普通の作家は書かないようだ。それなのに読者は(少なくとも僕は)あたかも実話のように小説の中に引き込まれ、置き去りにされて混乱しながらいつの間にか読み終える。ここら辺の手法については村上春樹の解説本でずいぶん種明かしされているが、それでもころりと転がされてしまう。
 この「東京奇譚集」も、村上短編ワールドをたっぷり味わうことが出来る。
 【偶然の旅人】のような体験は多くの人に覚えがあると思う。私はユーミンのコンサートで「青いエアメイル」という曲が演奏されたとき、必ずその前に「次は青いエアメイルが演奏される」と当てた経験がある。
 妻は読了後に【品川猿】に出てくるような人生相談の人に逢いたい。と言っている。何を相談するのだろうか・・・・ 
 とにかく、身体が弱っているオヤジたちにはスポーツの秋よりも読書の秋をお勧めしたい。