野叟解嘲(やそうかいとう)ー町医者の言い訳ー

老医師が、自ら患者となった体験から様々な症状を記録。その他、日頃、感じていることや考えていることを語ります。

リハビリ生活1

2023年05月21日 | 日記

腰部脊柱管狭窄症(すべり症による)との付き合いを紹介して来ましたが、闘病はまだ続きます。

リハビリを兼ねてよく犬と散歩するように心がけました。担当医師の指示に従い、コルセットを常用しました。使用した製品をお見せしますが、自分が身につけた姿は人様にお見せできるシロものではありませんので、若い女性のカタログ写真です。

ご覧の通り、ソフトな素材で全体的にメッシュになっていて、背中側に合成樹脂の芯が2本入っているため、腰は前屈出来ますが背屈には制限が加わります。しかし、実際に使用して歩いていると、どうにも効果が今ひとつなのです。腰の固定感が弱く、心許ないのです。さらに散歩すると、やはり間歇性跛行が出てきます。そこで次の図のように2つ同時に(一つは前後、上下を逆にして)身につけてみました。

合成写真で、美しくありませんが、どうなっているのかはご理解いただけるでしょう。この格好で歩くと、背中がしっかりと固定され、窮屈ではありますが、足のしびれが悪化することなく、30分程度は歩けます。

この事実から腰の固定には背筋も大事ですが、腹筋の方がより重要であるという考えに至りました。そこでそれからはリハビリに腹筋強化のメニューを導入しました。詳細はまたの機会といたします。


症状軽減の理由説明

2023年04月29日 | 日記

ある種の姿勢をとることで症状が軽くなる話から、理学療法や代替療法の有効性に言及するのは、話が飛躍して分かりにくかったかもしれません。屁理屈を付けて説明します。

末梢神経損傷の分類に、neuropraxis、axonotomesis、neurotmesisの3段階があることはご存じでしょう。この内、もっとも軽度なのが neuropraxis ですが、軸索が温存され、神経周囲の組織の損傷のみということになっています。神経伝達が遮断されるが、数日から数週間で回復するとされています。この状態までに至らない、さらに軽度の圧迫による障害は、まず血流障害から始まると想像します。神経外科医ならば手術で脳や脊髄の表面を日常的にみていることと思います。その風景を思い出して見るとわかりますが、神経組織表面に微細な血管が多数走行しています。手術操作で、ほんの少し触れるだけで細かな動脈から静脈まで、簡単に虚脱させられ、血流を阻害します。この状態が長く続くだけで神経症状が生じることは簡単に理解できると思います。

さて、脊柱管狭窄症を考えると、いきなりneuropraxisに陥るのではなく、始まりは循環障害だということも想像しやすいでしょう。日頃、見慣れた繊細、脆弱な神経組織表面の血管系への圧迫は、ほんの2,3㎜改善するだけで神経機能の回復につながるということも理解できるのではないでしょうか。つまり、脊柱管狭窄を2,3㎜改善するだけで自覚症状の軽減になるということも分かっていただけるでしょう。

思えば、リマプロスト、サルポグレラートなどの治療薬も血流改善を謳っている筈です。これらの薬剤の効果に疑問を持つ医師も少なくないようですが、ここで説明した通り、軽症のうちであれば、血流改善により症状の軽減は得られるわけです。しかし、病状が進行してしまえば、血流改善だけでは軸索機能の回復は図れないのは当然で、手術を盛んにしている外科医から見れば、薬物療法や理学療法などの効果は眉唾ものに映るのかもしれません。しかし、小生は自らの経験からそれらの治療法は理にかなっていると考えます。

また、外科的治療を検討するなら、薬の効果がある内の方が術後の回復も期待できると考えます。患者側からは納得が得られないかもしれませんが、手術の効果を上げるには、軽症のうちに行う方がベターと考えます。一般的に、どんな病気も軽いうちは薬で治療し、薬で間に合わなくなったら、手術を考えるという傾向があると思いますが、狭窄症のような、ある意味物理的なものは、薬で根本解決するはずがないのであり、早めに手術を考えてもいいと思っています。実際、患者さんにもそのように勧めて、感謝されることもあります。脊椎外科は、術後の患者満足が得られ難い領域ですが、軽いうちに手術した方が結果はいいのではないかと考えます。


症状軽減の秘密

2023年04月09日 | 日記

背中の緊張を解放することで、膝の痛みが軽減することを発見した後も、オリジナルの症状である、左足のシビレは続きました。担当医師からリハビリとしての散歩やプールでの歩行を勧められましたが、正直、効果は実感できませんでした。むしろ、散歩はやり過ぎると以前と同様にしびれの増強が見られました。

そんなこんなして過ごす内に手術から半年が過ぎ、かねて懸案だった智歯を抜くこととなりました。これも両側の埋没している智歯を掘り出して取り除くために、全身麻酔下に行われました。手術後、麻酔から覚めてというか、まだ少し麻酔薬の影響が残っている時、病院のベッドの上で、通常ではとらない姿勢で眠ってしまいました。具体的に表現するのは難しいのですが、軽くギャッジアップして頭側が少し高い状態で側臥位で寝てしまいました。眠りから覚めた時、足のしびれが完全に消失していたのです。しかし、少し歩くとシビレは再燃しました。もしかして姿勢に秘密があるのではないかと、眠らずに前記した姿勢をとって見ました。すると、5分もしないでシビレが消えていくのが分かりました。

退院後、自分の寝床で様々な姿勢を試したところ、普通の平らなベッド上では、ヨガでいう「ワニのポーズ」をとるとシビレが軽くなることが分かりました。。残念ながら、歩行すると、元に戻ってしまいますが、毎朝、起床時にはシビレのない状態をわずかな間だけ味わうことが出来るようになりました。

これはこの姿勢ですべっている腰椎の位置が改善するに違いないと考え、何とか実証したいと思い、通常の撮影姿勢ではなく、腹臥位で腰椎MRIを撮ってみました。それが次の二つの画像です。

通常の取り方(仰臥位)

伏臥位で撮影

伏臥位では、「すべり」が僅かながら軽減しているのが分かるでしょうか?

実際に起きたのは、単純な伏臥位ではなく、僅かながらひねりが加わっていますが、この所見から、色々な物理療法や代替療法(整体術、マッサージ、鍼・灸など)について、いわゆるエビデンスはないと言われていますが、「治す」ことはできなくても「癒す」ことはできると確信しました。ただし、施術者の腕、疾病のタイプの影響はあると思います。私のようにすべり症による脊柱管狭窄症状であれば、上手なやり方によって、症状を軽減させることはできると考えるのですが、皆さんはどう思いますか?

今後、さらに経過をご報告します。

 

 


閑話休題その2

2023年03月19日 | 日記

前回、硝子体手術を受けたことをお知らせし、術後に「24時間のうつ伏せ」が指導されたことも記しました。

予想はしていましたが、、前回話した通り、きわめて辛い経験でした。術後はその姿勢を保つ以外にすることがないので、何故、こんな姿勢をとり続けなければいけなのか、ネットで調べてみました。

硝子体手術について、様々な眼科医療機関のホームページなど見てみると、確かにどこでも術後には俯せを続けることが説明されていました。その理由について、多くは「手術で眼科内に特殊なガスを注入し、その浮力で傷ついた網膜を圧迫して元の位置にくっつける」というようなことを言っています。一瞬、なるほどと思いましたが、少し考えてみるとおかしなことに気づきました。「浮力」とは液体中にものが沈んでいる際、深部と浅い部分の圧力の差を浮力と呼んでいる筈です。とすれば、気体層に病巣があるよりも液層にあった方が加わる圧力は高く、よりくっつける力が強いのではないでしょうか?また、眼球の内側にかかる圧力はどの場所も同じでなければ、眼球が歪むのではないか(そんなにやわではないでしょうが)。同じ力が加わっているならば、無理な姿勢を保つ意味がないのではないかと考えます。

別の理由があるに違いないと考察してみました。硝子体が取り除かれた後、何かしらの液体で満たすと考えますが、完全には液体で満たせなかった場合、つまり一部に気体部分が残ったとします(この場合、液体も気体も何でもいいです。想像に任せます。)。すると眼球内で液体は、頭の位置や体位により動くことになります。この場合、液体部分に病巣があると、言わば「波に揺られる海草のような」状態になり、安静が保てないことが予想されます。そこで、病変部を気体部分においておくことが出来れば、干潮時の磯の海草のように動くことはありません。乾燥してしまわないかと心配するかもしれませんが、気温(体温)36度以上、湿度100%の環境はかなりジメジメしていると思われ、細胞の乾燥は避けられるのではないでしょうか。ペットボトルに水を半分ほど入れて、水に触れない上の方に何か短冊を貼り付けたと想像してください。短冊を下になるようにボトルを回し、水に漬けてボトルを揺らすと、水の動きによって、短冊も揺れることでしょう。一方、短冊を水が触れない部分に保っていれば、ボトルを揺らしても短冊は動かないはずです。「これだ!」と勝手に結論づけました。

眼球内が完全に液体で待たすことが出来たとしても多少は眼球の動き(体位や頭の動き)によって、液体に波が生じれば、やはり病変の安静は保たれません。従って、故意に気体部分を残すことで病変の安静を保てるわけでてる訳です。

多くのホームページで「浮力により傷ついた網膜をくっつける」という説明は、この手術の(ガスを注入するという)方法を「ガスタンポナーデ」と名付けた(原著論文は存じませんが、硝子体手術の歴史について述べた文章にありました)ことが間違いの元だと考えます。

門外漢が勝手に理屈をつけたのですが、皆さんはどうお考えになりますか?


閑話休題その1

2023年03月18日 | 日記

投稿が間延びしてしまいました。実は、1月末から目の異常を自覚し、切迫黄斑円孔の診断で、急ぎ手術をすることとなり、人生5度目(?)の入院となりました。

さて、前回の腰で入院したときは、先にも書いたとおり、激しい痛みのため、手術前はピクリとも動くことができませんでした。今回の目の手術では、手術後に眼球の安静を保つため、24時間(!)俯せをを指示されました。硝子体手術についての記事をネットで調べれば、どんな姿勢で寝るようになるか、図や写真入りで解説がありますので見てください。

この動けない、或いは動いてはいけない状況では、ベッドマットが如何に硬く感じられるか、文字通り骨身に浸みました。一般に、硬めのマットの方が腰にいいと信じられているようですが、寝返りが打てる人にとってという条件付きだと思います。前回の腰の手術前は、わずかな動きでも激痛が生じるため、自らの意志でじっとしていたのですが、マットが石畳のように硬く感じられて、「これは間違いなく、褥瘡ができる」と思ったものでした。実際にはできませんでしたが。

今回は、ベッドの上で使う低反発素材の特殊なマットも支給され、ベッドの上でお尻を高くして顔を完全に下向きにするように指示されました。かなり柔らかなマットでしたが、同じ姿勢で1時間もいると、胸全体に打ち身が出来たような痛みが出現しました。実際、触れてみると、胸骨から肋骨にかけての関節部分や剣状突起が痛みました。この痛みは手術後5日くらい続きました。こんな状態ですから、数十分ごとに目覚めることを繰り返し、一種、拷問のように感じました。

今回主張したいのは、病人のベッドには適度な柔らかさが必要だということです。動ける患者なら柔らかくても自ら寝返りを打つなどして、腰痛の発生は防げるものと想像します。しかし、動けない状況では、話が違うのです。

全国の病院関係者の皆様に、入院ベッドの寝心地について、もっと研究していただきたい。

複数回の入院を経験した一人の患者からの提案、切なる願いです。