シナリオ作家 平良隆久さん(58)=那覇市出身
人気漫画「ゴルゴ13」をはじめ、「名探偵コナンの推理ファイル」など人気作品のシナリオ作家として活動している。ゴルゴ13では主に世界情勢と軍事に着目したストーリーを手掛ける。
◆米軍統治下の沖縄で育った少年時代
平良さんは米軍統治下の那覇市安里で生まれた。沖縄が日本復帰した時は小学5年生。日本の情報に飢えていた。それを満たしてくれたのが「週刊少年チャンピオン」に連載されていた漫画たち。「ブラックジャック」「エコエコアザラク」「ドカベン」など。毎週のように読みあさり、中学を卒業したら漫画家になりたいと両親に宣言するくらいだった。
中学高校では米国の音楽や映画にはまった。無名の俳優だったシルヴェスター・スタローンが脚本、主演した「ロッキー」を見て、高校卒業後は映画監督になりたいと上京した。
何とか映画監督になる道はないかと考える日々の中、バイト雑誌をめくっていると「映画のシナリオ作家になるために大変役立つ」と書かれたページを見つけた。週刊少年ジャンプで連載していた人気漫画「北斗の拳」の作画家、原哲夫さんが書生を募集していた。採用試験の課題は「漫画のシナリオを書くならどんな内容にするか?」。アイデアを5、6本提案し、見事合格。シナリオ作家のスタートだった。
◆「沖縄シンドローム」に込めた思い
着実に経験を積み、独立後間もなくしてゴルゴ13に関わったのは1995年。この年、約8万5千人が集まった「米軍人による暴行事件に抗議し、地位協定の見直しを求める県民総決起大会」があった。日本復帰しても変わらない沖縄の現状に怒りが湧きあがった。その思いをぶつけたシナリオが「沖縄シンドローム」(第350話)だ。
琉球王家の血を引く自衛隊の天才パイロットが、長く抑圧されてきた沖縄を解放するべく沖縄出身の自衛官たちを率いて「沖縄独立作戦」を決行する。作戦の存在を知った日本政府などがゴルゴにクーデター阻止を依頼するストーリー。沖縄の歴史や悲しみ、未来への願いを込めた。
あれから25年。米軍絡みの事件事故の度に日米地位協定が問題になる。発効から今年で60年を迎えたが一度も改定されていない現状について、「国会議員や官僚が軍事を知らない。沖縄の現状も知らない。そんな状況で議論しても何も変わらない」と語気を強める。
8月には、日米地位協定から日本の主権を問う「まんがでわかる日米地位協定」(小学館)を出版した。「日本の法体系を無視し、国民の権利や人権を奪っている。本には改定に向けた秘策がある。若い人たちに読んでもらいたい」。
沖縄の苦しみを変えられない「政治の堕落」について語ると話は止まらない。「作品にするテーマはまだまだある」と鋭い眼光を放った。(東京報道部・吉川毅)
たいら・たかひさ 那覇市出身、1962年生まれ。首里高校卒業後に上京。22歳の時、漫画「北斗の拳」の作画家、原哲夫さんの書生となった。その後独立し、外務省を扱った「平成鎖国論」(芸文社)や「今、そこにある戦争」「名探偵コナンの推理ファイル」(いずれも小学館)などを出版。
「ゴルゴ13」のシナリオ作家の一人として現在も執筆中。 / 沖縄タイムス☆
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます