国立沖縄工業高等専門学校(名護市)などの研究チームが13日までに、再生医療の実現に向けた産業技術開発の一環として、不織布で培養した細胞に損傷を与えず回収する世界初の技術を確立した。高専発のバイオベンチャー企業・フルステム(那覇市、千葉俊明社長)が特許を出願し、新技術を応用して治療用に大量の細胞を培養できる装置と培養キットなどを開発する。培養した細胞は脳梗塞、肝硬変などの治療に活用でき、装置などの開発が成功すれば、再生医療の普及や産業化につながる。
フルステムは国内市場にとどまらず、再生医療の需要が高い東アジアにも売り込む考えだ。
高専の特命教授で医師でもある千葉社長によると、幹細胞を培養する場合、ほとんどの細胞は培養に使う容器の表面に接着しないと増殖できない。大量の細胞を得るには、広大な接着面積が必要となる。
フルステムはこの問題を克服するため、1センチ×0・5センチの不織布に細胞を接着させ、高密度の大量培養を図った。多数の布を使うことにより、これまで1億個の細胞を培養するのに最低6人の作業員、250枚以上の培養皿が必要とされたが、新技術では500ミリリットルボトル1本で実現できた。
1億個の細胞が培養されているボトル(フルステム提供)
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布に培養した幹細胞はこれまでの技術では取り出すことができず、治療に使えなかった。沖縄高専などが開発した新技術は、細胞を布から剥がす酵素の配合比率を数百パターン以上の中から最適なものを選択し、さらに必須の操作を加えることによって不織布から大量の細胞を取り出すことに成功した。
沖縄高専は学内に設置されている研究拠点を、7月からうるま市の「沖縄バイオ産業振興センター」に移転する。移転をきっかけに、2016年8月に設立されたフルステムは事業化に向け、本格的に高専との共同研究、県の再生医療一括交付金事業に参入する。
千葉社長は「内田太郎研究員(沖縄高専)らと共同で開発した細胞回収技術は再生医療で注目を集めており、国内大手の再生医療関連企業や複数の大学からも研究連携と技術提供の依頼を多数受けている」と発展性に期待した。(呉俐君)
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