Flour of Life

煩悩のおもむくままな日々を、だらだらと綴っております。

優しいあの子

2019-09-28 17:18:13 | テレビ・ドラマ


みなさんこんにちは。もうすぐ10月ですね。
10月にもなれば本格的に秋らしくなってくれると期待しているのですが、今日(9/28)も気温が30度を超えています。一体どうなってるんでしょう。
これだけ秋が押してると、冬が来るのは4月以降になるんじゃないでしょうか。んなアホな。

はい、前置きはそれくらいにして、10月が来るということは、今年の4月から始まったNHKの朝ドラ「なつぞら」が最終回を迎えるということです。6か月間の長丁場、出演者とスタッフの人たちはもっと長かったでしょうが、見ているこちらも長かったです。
私はいつも、朝ドラは最初の1週目か2週目まで見て、「自分には合わないな」と思ったらすぐ視聴を止めるのですが、「なつぞら」は最初から最後まで見ました。完走です。最初はリアルタイム視聴だったけど、途中からは朝に録画したのを夜仕事から帰ってきてから見たり、通勤のフェリーの中にあるテレビで見たりして、なんとか完走しました。ふう。よく頑張った、私!

んで、それだけ熱心に見ていたということは、アレです。
バレーボールでセッターが上げる…それはトス。草野マサムネが「揺れ方で人生の意味が分かった日曜日」と歌っていた…それはバス。
じゃなくて、ロスです。ここまでお付き合いありがとうございました。

というわけで、最終回を見終わった直後はロスが激しくて、私は来週から何を見て美しいと思えばいいのと嘆く有様でした。美しい北海道の自然、やたらめったら美味しそうな食べ物たち、そして暴力的なまでにイケちらかした俳優たち…。毎回見るたびに目の保養になるわ、ご飯食べたばかりでもお腹が減るわ、とても楽しかったです。完璧とか最高傑作とか、そういう迂闊な言葉で褒めるつもりはありませんが、半年間、日曜日を除く毎日15分間、素敵な時間を過ごさせてもらいました。

ネットやSNSで批判があったのは、東京制作朝ドラあるあるではありますが、私が目にした批判は的外れなものが多く、「ホントにドラマを見てるのかな?」と疑いたくなるものばかりでした。朝ドラは朝の慌ただしい時間に放送することもあって、ながら見で内容を誤解してしまうこともあるでしょうが、そういう人ほど堂々とトンチンカンな意見を振りかざしがちで…どうしてそうなるの、と疑問に思うこともしばしば。わけがわかりません。「なつぞら」の主人公の奥原なつには、モデルとなる女性アニメーターの方がいるんですが、アニメーターという職業に関する部分以外はほぼオリジナルだったようで、そこが批判もされていたようです。大河ドラマじゃあるまいし、それを言ってたらモデルのいる朝ドラ(特に大阪制作の)はすべてNGになってしまうんですけどね。同じことをしてもあちらは褒めそやし、こちらは猛バッシング。ダブルスタンダードですね。どっちも褒めるか、どっちも批判するかならともかく。

さて、私がこのドラマを見て一番心に響いたのは、子どもに対する優しいまなざし、大切にする思いでした。戦争で家も両親も失ったなつを、引き取って育てた柴田家の大人たちや、家族を失ったなつたち戦災孤児が、大人になっても寄り添って支え合う姿を優しく丁寧に描いてくれたのはとても良かったです。キレイゴトだと揶揄する声もありましたが、戦争という冷たい現実を見た上で、そういった理想を描いて「かくあるべし」と伝えるのは、フィクションの役割の1つではないでしょうか。それに、キレイゴトと言ったって、泰樹おんじはなつを手放したくないがゆえに孫の照男と結婚させようとしたりもしてるので、そんなに断罪できるほどキレイゴトばかりではなかったと思います。

十勝編と東京編は、それぞれ農業とアニメという、まったく違う畑の話だったので、随分ドラマの雰囲気が違ってましたが、話が進むにつれて両者の距離が縮まっていくのが面白かったです。ちょうど、交通の便が良くなって、十勝と東京が行き来しやすくなるように。最初は夜行列車に乗って1日以上かかっていたのに、最終回は飛行機でさくっと帰ってましたからね。細かいところでは、十勝の柴田家の台所が少しずつ近代化していくのをチェックするのが楽しかったです。東京の、坂場家のインテリアも、60~70年代のモダンな感じと、祖父母の家の居間のようなレトロな感じが混ざり合っていて興味深かったです。食器や鍋の柄とか、ガラス棚の上に飾ってある人形とか。人形と言えば、東洋動画やマコプロに、アニメのキャラクターの人形が飾ってあるのも、毎回「おお!」と思いながら見てました。実際の製作現場にもああいう人形飾ってあるのかな~見てみたいな~、なんて。

酪農もアニメの制作現場も、ここが違うあそこが違う間違いだらけだと批判する声がありましたが、正直これも毎度のことなのでスルーしました。あきらかに実際と乖離してる場合は、NHKを訴えるくらいしてもいいとは思いますが、今のところそういう話は耳にしてません。ただ、主人公のなつが、モデルになった奥寺さんといろいろ異なる点があることについては、奥寺さんのだんなさんの小田部さんが納得してるとインタビューでおっしゃってたので、別に構わないんじゃないかと思います。小田部さんは広瀬すずの大ファンだそうで、奥寺さんの役を彼女が演じるなら、細かいことはいいやと思ったそうです。広瀬すず、おそるべしというかさすがというか…。ところで、広瀬すず演じる奥原なつの価値観が現代的過ぎるという批判もありましたが、モデルの奥寺さん自身が先進的な考えの方だったそうなので、あれはあのままでよかったのでしょう。でも、奥寺さんも関わっていた労働争議が、ドラマでは扱いが緩くなってしまったのは少し残念だったかな。いろいろと制約がある中、制作側は頑張っていたとは思います。

戦争の話に戻ります。私自身は戦後生まれなので戦争の体験はありませんが、子供の頃から祖父の弟が戦地で亡くなった話を聞かされてきたので、戦争で家族を失うことが、遺された人にどれだけ深い傷を負わせるのかは知っていました。なので、ドラマの中でなつの幼馴染で戦災孤児仲間の信さんが、なつと咲太郎が生き別れの妹の千遥と再会したことで「戦争が終わった」と言ったのが印象的でした。戦争が終わって、何十年もたって、やっと「終わった」と言えるのか。信さんの言葉を聞いて、祖父にとって、祖父の「戦争が終わった」のはいつだったのか聞いてみたくなりました。今となっては無理な話ですが。

私は子供がいないので、子育ての大変さというのは間接的にしかわかりませんが、なつは育児についても批判されていたようで。私の場合、なつの兄の咲太郎夫婦のように、自分たちに子供がいないかわりに姪の世話をするという役割だったので、ドラマの中で兄夫婦が姪の世話をするのが肯定されているのはホッとしました。なつの子育ては門外漢の私から見ても「大丈夫なの?」と思うところがありましたが、制作側もあまりうまくいき過ぎないようにさじ加減してたのかもしれませんね。なつの養母の富士子が、なつの娘の優が小学校にあがる前後に上京して家事と育児を手伝う家政婦になる展開には「松嶋菜々子が家政婦か…」と突っ込みたくなりましたが、初登場の頃から富士子ちゃんは結婚して子供がいるにも関わらずどこか娘っぽくて若々しい感じがするなと思っていたので、子育てどころか孫育てまで落ち着いてきた頃、まだまだ体の自由も聞くうちに東京に来るというのはちょっとリアルで面白いなと思いました。それと多分、数か月とはいえ富士子ちゃんが家を留守にしてる間、照男の奥さんの砂良さんは羽を伸ばしてただろうなと。普段から仲が良くても。これで孫がもう1人増えたりしてとか(おい)。

ところで、朝ドラは序盤に出ていた高齢の登場人物が、終盤にきて亡くなることがよくあるので、草刈正雄演じる泰樹おんじがどうなるのかひやひやしながら見ていたのですが、それはありませんでした。まあ、最後のなつとの会話の感じだと、死期は確実に近づいてるんでしょうけど、本人も周りの人たちも、大往生を迎える覚悟はもう出来てるんだろうなと感じられたので、それで十分ですね。最近流行りのナレ死じゃなくてよかったです。

主人公を広瀬すずが演じると聞いた時は、「彼女の容姿は朝ドラのヒロイン向きじゃないのでは」と心配しましたが、吉沢亮と工藤阿須賀が幼馴染で、岡田将生が兄で、結婚するのは中川大志と男性陣が映画版キングダムばりに無敵の布陣だったので(しかも祖父が草刈正雄)、「その手があったか」と逆転の発想(?)に目からウロコでした。こんなことはもうできないかもしれませんが、なかなかすごいものを見せてもらいました。

朝ドラ101作目「スカーレット」は滋賀が舞台で実在の陶芸家がモデルだそうですが。どこまでモデルの方を参考にするのか…。
大阪制作の朝ドラは富裕層の主人公を中途半端に矮小化する傾向があるけど、今回はそういう心配はないのかな。朝ドラになることでモデルの方についての本も入手しやすくなるだろうから、この機会に読んでみようかしら。

とりあえず、今は「なつぞら」の余韻に浸りつつ、週明けに地元のデパートで行われる北海道物産展に向けて英気を養っておきます。きっと、今までにない激戦になると思うから…。頑張るぞー!