Flour of Life

煩悩のおもむくままな日々を、だらだらと綴っております。

スティーグ・ラーソン「ミレニアム2 火と戯れる女」

2012-07-13 23:54:58 | 読書感想文(海外ミステリー)




先日読んだ「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」の続編、「火と戯れる女」を読みました。
「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」を読んですぐに、「うぉぉぉ!!はやく続きが読みたいぜ!!」と
悶絶していたのですが、そこまで読みたくて仕方なかったこの「ミレニアム2」を読んだ感想は、

「うぉぉぉ!!はやく続きが読みたいぜ!!」

でした。でも、次の「ミレニアム3」でこのシリーズは終わっちゃうのよね…。寂しい。

それはさておき、詳しい感想の前にあらすじです。



リスベットに屈辱的な刺青を施され、完膚なきまでにうちのめされた後見人のビュルマンは、
彼女に復讐を果たすことを誓う。ビュルマンはリスベットの過去を知る人物を探り、自分と同じくリスベットを
激しく憎んでいる人物と接触を図った。一方その頃、雑誌「ミレニアム」の発行責任者であるミカエルは、
ジャーナリストのダグと恋人のミアが調査した人身売買と強制売春についてのルポタージュをもとに、ミレニアムの
特集号と書籍の刊行を決定した。ダグの調査によれば、人身売買と強制売春には「ザラ」という人物が関与していた。
そして、その人物はリスベットとも深いかかわりを持っていた…


※ここから先はややネタバレあります。要注意!





読んだ直後の感想は、上で既に書いてある通り「はやく続きが読みたーい!」でしたが、それよりも先に
「え、ここで終わり!?」と、続きがあるにせよあまりにも唐突な終わり方にぽかーんとしました。
もちろん、その後すぐに我に返って「早く続きを読まねば!」と、「ミレニアム3」を手に取りそうに
なったんですけどね。一応、「ミレニアム2」の感想を書いてから読もうと踏みとどまったのですが。

「ミレニアム2」は、「1」に比べるとミカエルのパートよりもリスベットのパートのほうが多く、
「1」ではわからなかった彼女の過去、秘密、そしてミカエルと出会ってからの彼女に起きた変化などが
細やかに描かれていました。特に、前半リスベットが南の海で長い長いバカンスを過ごすくだりは
やってることは過激なのに、初めての恋に破れた少女の傷心旅行のようにも読み取れて、こちらも
切ない気持ちになりました。きゅー。

その後も、リスベットの視界にミカエルが入るたびに、ふっきれたかに見えた彼女の心にさざ波が立つのを
読んでは「わかるわー」とうなずいてました。これだけテーマが重くて暴力的な描写の多い小説なのに、
その合間に描かれたリスベットとミカエルの、そして彼女たちを助けようとする人たちの強く温かい思いには
何度も胸を打たれました。誰よりも孤独で、他人と深くかかわることを拒み続けてきたリスベットの、
そのまじりけのない純粋な(ゆえに凶暴な)生き方が、彼女をめぐる登場人物たち、そして読者をひきつけて
やまないのでしょう。

一方、リスベットに命を助けられ、名誉も挽回してジャーナリストとして第一線に復帰できたミカエルはというと、
女たらしとして「1」のときよりバージョンアップした以外は、いまいち活躍がありませんでした。ていうか、
ミカエルのストライクゾーンが上すぎてなんだかね…。まあ、作者にとってはアラフィフ女性の性、というのも
この小説のテーマの一つだったのだと思いますが。同い年のエリカはともかく、ミカエルが一回り以上年上の
ハリエットとも関係を持っている、てのがね…。そんな男日本にいないよ、いたとしたら異常者扱いだよ。けっ。

ミカエルのマダムキラーぶりは置いとくとして、上巻の中盤あたり、物語が大きく動き出してからは怒涛の展開でした。
凄惨な殺人事件が起きたというのに、容疑者は行方不明。一方的な男尊女卑的発想で空回りする捜査本部に、
興味本位にあることないこと書きたてるマスコミ。そして、事件が解決するよりも先に熱が冷めてしまう大衆。
なんだか、こういうところはどこの国でも一緒なんだなーと苦笑いしました。いや、自省せねば。

「ミレニアム1」のときは、基本的にミカエルパートとリスベットパートの2つだけでしたが、今回は他の
登場人物視点のパートも多くあって、物語に厚みが出ていました。その分、誰が何を知っていて、
誰が何を知らないのかを判別するのがややこしかったですけどね。リスベットはミミが襲われたことに
なかなか気づかないし。

PCを通したリスベットとミカエルのやりとりが、それぞれの視点で繰り返し描かれるのは面白かったですが。
2人のやりとりのちぐはぐな様子を読んで、自分自身のコミュニケーション能力のいたらなさを思い返して
身につまされました。うーん、相手の立場に立って考えるのって大事なんだなぁ。

ザラがリスベットの〇〇だというのはなんとなく予想がついてましたが、2人が対峙してからの展開は
予想をはるかに超えていました。冷静に考えるとありえない展開の気もしますが、そこにいたるまでに
リスベットの超人ぶりが徹底的に描かれているので、まあそれもありかな…と納得することにしました。
(それでも無理がある気はするけど)

今回も胸くそが悪くなるほどの自己中な男尊女卑野郎が何人も出てきましたが、この「火と戯れる女」では
彼らに鉄槌が下されることはありませんでした。このもやもやした気持ちは、おそらく「ミレニアム3」で
スッキリさっぱりさせてくれるのでしょうか。でも、スッキリさっぱりしないのが現実とも思うので、
納得がいかないまま終わってしまうのかも名…と諦めてもいます。本音はスッキリしたいけどね!

個人的に、この「火と戯れる女」で一番好きな場面は、実在するスウェーデンのボクシングチャンピオン
パオロ・ロベルトが、リスベットの恋人のミミ(女性)を拉致した金髪の巨人と対決する場面でした。
実在する人物だから死ぬことはないだろうと思っていたものの、どんなに攻撃してもまったくダメージを
受けない巨人に、リスベットのようなハッタリのきいた超人ではないロベルトが立ち向かっていくのが
とても面白かったです。殴られてる描写はものすごく痛そうだったけど。そしてパオロ・ロベルトもやっぱり
サンドイッチ食べてたけど。

サンドイッチと言えば、登場人物がサンドイッチとコーヒーしか口にしなかった「ドラゴン・タトゥーの女」と
比べ、「火と戯れる女」ではスウェーデン名物のシナモンロールや、リスベット御用達のセブン・イレブンの
冷凍ピザなど、食べ物のバリエーションが少しだけ増えました。しかしリスベット、冷凍ピザとかチーズの
サンドイッチとか、炭水化物ばっかり食べてるのになぜ太らないんだ…うらやましい(その分ぺちゃぱいだけど)。



…さて、感想書いたしそろそろ「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士」を読もうかな~♪



おまけ:「ミレニアム1」を読んだ時の感想。




2 コメント

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ミレニアム (ぱたぱたまま)
2012-07-17 22:26:36
もちきちさん、こんばんは。ほんっとに、本の趣味が一緒でうれしい限りです(^^)今ミレニアムの3に入ったとこです。リスベットがスーパーウーマン化していたところなので、2では本当に死んで3はミカエルだけの話か、とあせりましたが違いましたね。それにしても埋められて助かったのはちょっと・・。私は全然ザラとの関係に思いいたらなかったので、見抜いたもちきちさんはすごい。パオロ・ロベルト実在の人物だったのですか?知りませんでした。勉強になります。それにしても訳者の人の文章うまいですね。訳する人によってつまんなくなったり、難解になったりすることがあるので翻訳物はあまりよまなかったのですが、これはすんなり頭に入ります。かえすがえすも作者が急死したのが残念。だれか続編書いてくれないかな。ミカエルの女性の守備範囲の広さもびっくり。フリー○○○のお国がらかしら。また3の感想アップお待ちしてます。あつーいのでくれぐれもご自愛ください
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毎日暑いですね~ (もちきち)
2012-07-18 00:09:58
>ぱたぱたままさん
こんばんは~
梅雨も明けていよいよ夏本番ですね。
毎朝、出勤途中でファンデーションが流れ落ちて困ってます。

>それにしても埋められて助かったのはちょっと・・。
あの助かり方はジャンプ並みに無理がありますよね。
助かるにしてももうちょっと納得できる理由が欲しかったです。

>それにしても訳者の人の文章うまいですね。
うまいですよね~。
翻訳物は文章が固くて読みづらいことも多いのに、違和感なく読めます。

>かえすがえすも作者が急死したのが残念。
ほんとに…
私もいま3を読み始めたところですが、これが最後なのかと思うとさびしいです。
続編は難しそうですが、これから公開されるであろうハリウッド版の2と3に期待してます。

>あつーいのでくれぐれもご自愛ください
ありがとうございます。
ぱたぱたままさんもお体に気をつけて。
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