Flour of Life

煩悩のおもむくままな日々を、だらだらと綴っております。

スティーグ・ラーソン「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」

2012-06-01 23:20:55 | 読書感想文(海外ミステリー)





月刊誌「ミレニアム」の発行責任者ミカエルは、大物実業家ヴェンネルストレムの違法行為を暴く記事を
発表したが、名誉棄損で有罪になり、「ミレニアム」からも離れることになった。多額の賠償金を払うことに
なり、なおかつ刑務所にも入らなくては行けなくなったミカエルだったが、大企業グループの前会長
ヘンリック・ヴァンゲルからある依頼を持ちかけられた。それは約40年前、ヘンリックの兄の孫娘・ハリエットが、
ヴァンゲル一族が住む孤島からこつぜんと姿を消した事件について調べてほしいというものだった。
ヘンリックは、ミカエルがその事件を解決したら、その見返りとしてヴェンネルストレムを破滅させられる証拠を
提供するという。ミカエルはこの依頼を受けることにするが、40年も前の事件の証拠を集めるのは困難を極める
ことだった。一方、ヘンリックはミカエルがどういった人物が知るために、ある調査会社に調査を依頼していた。
それを知ったミカエルは、調査を担当した調査員のリスベットに接近するが…




※ややネタバレあります。ご注意ください。


読み終わってすぐ、スウェーデン人はサンドイッチとコーヒーしか口にしないのか?という疑問がわきましたが
それはさておき。映画も面白かったけど、小説は小説でまた面白かったです。
映画よりも登場人物が多く、彼らが複雑に絡み合ってストーリーに深みを与えてました。
登場人物が多すぎて、誰が誰やらわからなくなることもしばしばありましたが。これも老化の一種なのか…。

「誰がハリエットを殺したのか?」既に映画を見ているので事件の真相は知ってましたが、ミカエルとリスベットが
それぞれのやり方で謎にじわじわと迫って行く過程が綿密に描かれていてわかりやすく、最後まで楽しんで読むことが
できました。

あと、スウェーデンの小説ということで、普段あまり目にすることのないスウェーデンの風俗がちらほらと
登場するのが興味深かったです。ミカエルが暇つぶしに読む雑誌の名前や小説の作者の名前が頻繁に出てくるのを
見ては、「スウェーデンの人にしかわからない意味があるのかな~」などと、ちょっぴりスウェーデンの読者に
嫉妬したりもしました。北欧の厳しい自然が、時折出てくる気温(マイナス20度台が当たり前…)でびしばし
伝わってくるのに驚いたりもして。

ベテランのジャーナリストとして、オーソドックスな手法で調査をするミカエルと、法もモラルもすっとんだ
“自分流”の価値観・やり方で突き進んでいくリスベットの対比は、それぞれが一本の小説として成り立つくらいに
中身が濃く、また2人がお互いに興味を持ち、互いの距離を縮めていく過程はまるで新手の恋愛小説を読んでいる
ようでした。いやね、リスベットがじわじわとミカエルに心を開いていく過程がたまらんのよ!リスベットの
雇い主で警備会社社長のアルマンスキーが嫉妬するのもわかるわ!美しいけれど誰にもなつかない孤高の存在だった
猫が、最近知り合ったばかりの男に腹出してごろにゃーんしてたらそりゃ殺意もわくわな!!(※リスベットは
ごろにゃーんしません)

それなのに、ああ、それなのに。

リスベットはミカエルのために危険を冒してヴェンネルストレムを破滅に追いやったのに、そんな苦労も知らずに
愛人のエリカといちゃこきやがってよー!ミカエルのバカチンは!!
…いや、確かにエリカとミカエルには特殊な強い絆で結ばれてるみたいなんだけどね。リスベットが割って入れない
くらい強い絆が。それでもさあ、やっぱリスベットたんの切ない乙女心を知っている読者としては、ミカエルを
もうちょっとなんとかならんのかお前と説教したくなるわけなのさ。男と女とはそういうものさ、と言われれば
それまでなんだけどさ。切ないねぇ。

さて、「ミレニアム1」を読んでもドラゴンタトゥーの女・リスベットの過去は謎に包まれたままでした。
リスベットの後見人・ビュルマンは映画同様くされ外道(ビジュアルはかなり違ったけど)で、こんなやつが
スウェーデンの福祉制度にかかわっているのかと思うと、憤りを感じて仕方がなかったです。リスベットの言動は
過激かつ予測不可能で、なにもそこまでとドン引きするようなところもありましたが、

「幼少期から親に性的虐待を受けていたからと言って、女性を暴行して死に至らしめていいわけがない」

という彼女の主張には、100%同意します。ミカエルが「彼も気の毒なんだよ…」と同情的になるのは、やっぱ
男だからなんだろうかな。

「ミレニアム」シリーズは三部作で、この後「ミレニアム2」「ミレニアム3」と続くわけですが、続きが気になる
一方で、残りの2つを読むのが恐かったりもします。なぜなら、作者のラーソンは既にこの世にいないわけだから、
3作目を読んでしまったらもうどんなに読みたくても続きが読めないわけです。3作目まで読んで、続きが読みたくても
読めない飢餓感を味わうべきか、それとも…いや、やっぱり読もうっと。リスベットの過去も気になるし、これから先に
起こる事件を通して、ミカエルとリスベットの関係がどう変わるのか気になるもんね。うん。



4 コメント

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きゃー!! (kayoh)
2012-06-02 00:42:29
読んじゃいましたか!

私も読みたくなるじゃないですか!



スウェーデン版のドラタトゥ(勝手に略している)を結局最後まで見てしまった私ですが、原作をどうしようか迷っていました。
たけど、この日記を読んで読むことを決意しました!
ありがとう、もちきちさん!


ところで、ご存知かもしれませんが、
スウェーデン版のミカエルは、MIゴーストプロトコルの、核兵器万歳!世界をリセットしよう!のあの人なんですよ…
まあ、雰囲気はだいぶ違ってましたが。

そしてエリカは、なんでいつもそんなに大きく目を見開いているの?って感じの年のいった人で、美人とはちょっと言えな…

リスベットは見慣れました。
最後には感情移入しまくりました。
うん、そこまで言われちゃ殴り掛かりたくなるよね、とか。詳しくは言えませんが。。


これからリスベットとミカエルの事件簿、が続くはずだったのに、
原作者が亡くなってしまったのが非常に残念です…
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ほんとに残念ですね (もちきち)
2012-06-02 16:35:36
>kayohさん
こんにちは~。

「ドラタトゥ」って書くとドラえもんのタトゥーみたいですね。アニメ好きな外人がしてそう。

>スウェーデン版のミカエルは、MIゴーストプロトコルの、核兵器万歳!世界をリセットしよう!のあの人なんですよ…
ゴーストプロトコルは見に行きましたが、あの人がミカエルなんですか。。。
うーむ、聞かなかったことにしよう(嘘)
でも、トム・クルーズと共演すると出世するというジンクスがあるので、これからの彼に注目ですね!

>原作者が亡くなってしまったのが非常に残念です…
ほんとにそうですね。残り2作、大事に読みたいと思います。
返信する
読んだほうがいいと思うよ (サンダルウッド)
2012-06-08 07:36:53
3まで面白かった。ちょっと残酷なシーンもあったけど。主人公の女性の活躍が小気味良くて、スカッとする。それにしても作者が亡くなったのは、怪しいよね。ミレニアム1では旧約聖書の話だったよね・・・こういう話は作者にとっては危険なのかもね。

角田光代の「八日目の蝉」についてのレビューを探していて、こちらへたどり着きました。「八日目の蝉」について以前書かれているレビューの方が、私の今の読後感と通じます。単なる小説なので文句は言えないけど、あまりに育ての親(誘拐犯)を母性の権化と美化しすぎで現実ばなれしていると思う。

これからもこちらへ時折立ち寄らせていただきます。ブクログは、やってないの?
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コメントありがとうございます (もちきち)
2012-06-08 18:19:12
>サンダルウッドさん
はじめましてこんにちは。

やっぱり読んだほうがいいですよね。
残酷なシーンがどんなものなのかちょっと心配ですが、
精神的にきつい描写よりはいいかなぁ。

>ミレニアム1では旧約聖書の話だったよね・・・こういう話は作者にとっては危険なのかもね。
むむ。その発想はなかったですが、そう考えると背筋が凍ります。

>単なる小説なので文句は言えないけど、あまりに育ての親(誘拐犯)を母性の権化と美化しすぎで現実ばなれしていると思う。
そうですね。
希和子の狂気やエゴを強調してくれたほうが、もっとリアリティがあってよかったのではと思います。

ブクログ、最近よく見かけますが、めんどくさがりなので始めても続ける自信がないのでまだ導入してません。
ぱっと見ただけで最近何を読んだかわかるので便利かなとは思うのですが(汗)

また遊びに来てくださいね。
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