筑豊本線遠賀川橋梁

十二人十二色
福岡県中間市　【遠賀川】



筑豊本線遠賀川橋梁　直弦プラットトラス橋　1923年
橋長：389m

12の連なるプラットトラス。
各々は実に個性的だ。

一番端のスパンは電車を迎える体制を整える。
真ん中のスパンは川面との関係も考えなければならない。
両隣と息を合わせるのは当然。
でも，みんな全く異なる顔を持つ。

荒くれ者の石炭運搬蒸気機関車は容赦なく通過する。
それと渡り合うためには，強烈な個性が必要だった。
それは今でも変わらない。

祝橋

めでたき嫁入り
広島県三次市　【江の川】



祝橋　曲弦プラットトラス橋　1960年
橋長：210m

広島市の街中でバリバリ活躍していた娘が，
山に囲まれた三次にやってきた。
垂直材の細かい飾り，
構門のカーブとリベットの打ち方，
全てが洗練されている。
どうやって迎えたらいいのだろう。

力強い橋脚を用意し，
きれいな白いお化粧を施した。
この地を気に入ってくれるか‥。

その答えは，この地で50年以上過ごしていることが示している。

最上橋

気品高く高潔
山形県寒河江市　大江町　【最上川】



最上橋　コンクリートアーチ橋　1940年
橋長：97.6m

この気品はどこから来るのだろう。
潔く美しい風格。
見る者全てを魅了し，安らぎを与えている。

風雪に耐え，急流に耐え，交通に耐え。
耐え忍ぶことで生まれる高潔さ。
3連のアーチ，白いアーチリブ，高欄の意匠，
全てが我々の心に響いてくる。

厳しさに耐えること，それは美しさを磨くこと。

千歳橋

大阪港龍神伝説
大阪府大阪市　【大正内港】



千歳橋　アーチ+連続箱桁橋　2003年
橋長：365m

大阪市大正区，埋め立てられた海岸線には，
工場や倉庫が立ち並ぶ工業地域。
その拠点となる大正内港の入り口には守り神の龍の姿がある。

湾曲したアーチは龍の背中，
非対称のリブは龍の頭，
波打つ曲線の箱桁は龍の尾。

働く人々の安全を，住む人々の安心を，
願う気持ちが龍を作り出している。

豊島大橋

定住した渡り鳥
広島県呉市　【斎灘】



豊島大橋　吊り橋　2008年
橋長：903.2m

「アビ大橋」
この地に越冬にやってくる渡り鳥の名が愛称となっている橋。

岩盤を利用したアンカレイジ，
溶接で繋がれた滑らかな外面，
大空に羽を広げる桁下の高さ。
その姿はスマートな渡り鳥そのもの。

定住したこの橋はもう渡り鳥となることはない。
昔は鳥のごとく海を渡った人々ももう渡り鳥ではない。